元少年3人死刑 「厳罰」支持した最高裁判決

毎日新聞 2011年03月11日

元少年3人死刑 厳罰化が強まるものの

最高裁が、3人の元少年に対して死刑を言い渡した。大阪、愛知、岐阜の3府県で94年、通りすがりの若者ら4人にリンチを加えて殺害したとして強盗殺人罪などに問われた当時18~19歳の被告らだ。

少年法は、社会復帰を前提とした更生教育や保護処分を中心におく。また、どのような犯罪でも18歳未満には死刑を科さないと定める。裏返せば、18歳以上には、死刑で対処することがあり得るということだ。

今回、最高裁は「結果は重大で、被害者らの恐怖、無念は言うに及ばず、遺族の被害感情も厳しい。少年だったことを考慮しても死刑はやむを得ない」と述べた。

最高裁が83年、4人を射殺したとして永山則夫元死刑囚(犯行時19歳)に死刑を言い渡した際、死刑選択の基準を示している。

事件の罪質や殺害手段の残虐性、被害者の数、被告の年齢など9項目を挙げたうえで、総合的に考慮しても、やむを得ない場合に死刑の選択が許されるとした。

一方、山口県光市で99年に起きた母子殺害事件の上告審で、最高裁は06年、広島高裁の無期懲役判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。

犯行の悪質性を重視して「死刑を回避する十分な理由が見いだせない」と結論づけ、死刑を求刑した検察側の上告を認めた。少年だったことは「考慮すべき一事情にとどまる」と判示したのである。

00年代になって厳罰化の動きが強まり、死刑判決が急増した。光母子殺害事件での最高裁の判断は、少年事件も例外ではないことを示したものといえる。

この事件は、広島高裁が08年、差し戻し審で死刑を言い渡した。

今回の最高裁の判断も、18、19歳の少年による重大事件を裁く地・高裁に今後、影響を与えるだろう。

少年事件の場合、育った環境などを踏まえ、どう更生可能性を判断するのか、成人以上に突き詰めて考慮するのが法の精神である。

昨年11月、宮城県石巻市の3人殺傷事件で、当時18歳だった少年に対し、仙台地裁の裁判員裁判で死刑が言い渡された。会見した裁判員が「一生、悩み続ける」と、判断に際しての重圧を語ったのは記憶に新しい。

死刑の確定を機に今回、元少年らを実名表記に切り替えた報道機関がある。だが、毎日新聞は、真摯(しんし)な反省など元少年らの更生が今後も続くべきだとの観点も考慮し、匿名を維持した。報道の立場で、今後も個々の事件について判断したい。

厳罰化の一方で、死刑制度への国際社会の批判が強まっているのも事実だ。刑罰のあり方について国会で本格的な議論を始めてほしい。

読売新聞 2011年03月11日

元少年3人死刑 「厳罰」支持した最高裁判決

凶悪事件を引き起こした少年には厳罰で臨む。その流れを決定付ける司法判断といえよう。

1994年に大阪、愛知、岐阜で起きた連続リンチ殺人事件で、最高裁は、犯行時18~19歳だった3人の男を、いずれも死刑とする判決を言い渡した。

同一事件で複数の少年の死刑が確定するのは、記録が残る66年以降、初めてのことだ。判決は今後、少年事件の量刑を判断する際の一つの指標となるだろう。

3人は11日間に4人の命を奪い、殺人罪などに問われた。

路上で男性に言いがかりをつけ、部屋に連れ込んで絞殺した。仲間の男性に暴行し、河川敷に放置して死亡させた。娯楽施設にいた男性3人を車に監禁し、現金を奪った上、うち2人を金属パイプで殴るなどして殺害した。

極めて残虐な事件である。

名古屋地裁は、犯行の中心的立場にいたとして1人に死刑を言い渡した。残る2人については、犯行での役割や矯正の可能性に差があるとして無期懲役とした。

名古屋高裁は3人全員を死刑とした。3人の行為について、「刑を異にするほどの差はない」と判断したためだった。

最高裁はこの高裁判決を支持した。犯行を「なぶり殺しというべき凄惨(せいさん)なもの」と指弾し、地裁が無期懲役とした2被告についても「追随的・従属的だったとはいえない」などと判断した。

犯行時に少年だったことを「酌むべき事情」の一つに挙げてはいるが、それを「最大限考慮しても、死刑はやむを得ない」と結論付けた。4人殺害という重大性を重視した結果である。

少年法は少年の健全育成・保護を基本理念とし、18歳未満の少年に死刑を適用することを禁じている。だが、「年長少年」と言われる18~19歳はその対象外だ。

年長少年の行動には、大人と同様の責任が伴う。重大な罪を犯せば厳しく罰せられる。判決からは、最高裁が発したメッセージが()み取れよう。

昨年11月、少年事件の裁判員裁判で初めて死刑が言い渡された。2人を殺害し、1人に重傷を負わせた被告は犯行時、18歳だったが、仙台地裁は被告の年齢について、「死刑を回避する決定的な事情とはいえない」と指摘した。

少年による凶悪事件が相次ぎ、市民の目が厳しくなっていることの表れだろう。

少年への厳罰を少年犯罪の抑止につなげていかねばならない。

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