東証・大証統合 日本市場再生の一歩に

朝日新聞 2011年03月11日

東証・大証統合 国際競争が変革求める

世界規模での競争が激しさを増すなか、証券取引所も生き残り策として統合を進める時代になった。

東京証券取引所と大阪証券取引所が統合に向けて動き出した。2012年にも実現を目指すという。

金融・投資技術の急速な発達や、グローバル化の進展を背景に、世界の取引所は再編の波にもまれている。日本が取り残されれば、企業の設備投資などの資金調達が海外より不利になり、雇用にも響きかねない。国内の証券取引を結集し、競争力を高める努力が不可欠だといえる。

先にニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するNYSEユーロネクストとドイツ取引所が合併協議入りを発表した。ロンドン証券取引所はカナダ・トロントの証券取引所運営会社との統合に乗り出している。

欧米を軸に盛り上がる再編の背景にあるのは、規制緩和とコンピューター技術の進化を受けた私設取引システム(PTS)の台頭だ。低い手数料で高速な売買にも耐えられるPTSは大口投資家など取引所の「お得意先」を奪って急成長している。

NYSEなどは通常の現物株取引ではもうからなくなり、先物やオプションなど金融派生商品(デリバティブ)の取引、あるいは金融商品の売買に絡む代金決済などが生き残りへの切り札となっている。

日本では既存の取引所のシェアがなお大きく、収益的に追い込まれるほどではない。だが、拡大が見込まれるデリバティブや、温室効果ガスの排出量取引などの新分野に、国内でいくつもの取引所が分立するまま対応するのでは国際競争に取り残される。

証券取引所は、コンピューターシステムが威力を発揮する巨大な情報装置産業になりつつある。規模が小さければ戦略的な拡大投資もままならない、という問題も抱えている。

東証は現物の株式や債券の国内取引で圧倒的な存在感がある。一方、大証は生き残りをかけてデリバティブ取引を拡大してきた。両者の統合は日本の資本市場の強化に必要だ。

東証は株式の売買代金で上海証券取引所に逆転された。成長著しいアジアなど海外の取引所と連携を進めるにしても、まずは国内がまとまることが先決であることは論をまたない。

東証、大証のほか、名古屋、福岡、札幌に証券取引所がある。地域経済を活性化するために取引所を維持したいという声も地元には根強く、従業員の雇用問題など解決しなくてはならない問題は残っている。このため、再編は進んでこなかった。

しかし、世界的な統合の流れのなかで、変革が求められている。力強い取引所を築くため大胆に行動しなければ、衰退は避けられない。

毎日新聞 2011年03月11日

東証・大証統合 日本市場再生の一歩に

地盤沈下が進む日本市場の再起につなげることができるだろうか。

東京証券取引所が大阪証券取引所と経営統合に向けた協議を始める。ニューヨーク証券取引所の親会社とドイツ取引所、ロンドン証券取引所とトロント取引所の親会社など、海外で大型合併が相次ぐ中、注目されていた東証の動きである。ようやく、大競争を生き抜くための第一歩を踏み出すようだ。

株式売買代金でアジア首位の座を上海証券取引所に奪われるなど、地位の低下が続く東証にとって、最新の取引システムの導入や、海外の取引所との連携強化は急務だ。だが、システム投資を単独で行うとなると負担が大きい。海外の取引所との資本提携を有利に進めるには、自社の市場価値を高めておく必要がある。そこで、まず国内の大証と一体化し、投資家の利便性向上につながるシステム投資に力を入れることは理にかなっている。

東証は特に、今後、成長が見込まれながらも競争激化が必至とされるデリバティブ(金融派生商品)分野で対応を迫られている。現物株取引では国内シェアの9割以上を占める東証だが、デリバティブでは7%程度に過ぎない。5割を超える大証とデリバティブ取引を一元化すれば、システム投資を有効に進めることができるだろう。

さらに、東京工業品取引所や関西商品取引所が統合に加われば、商品先物や穀物先物も扱う総合的な取引所とすることが可能だ。

だがその前に、東証は自社株式の上場を成功させるという課題をクリアしなければならない。一段のコスト削減といった自らの努力に加え、新規上場がどこまで活発化するかといった市場自体の魅力も収益を左右する重要な要素となりそうだ。

収益力を上げられず、上場後の時価総額が低迷するようでは、仮に大証と統合できたとしても、その先の海外取引所との再編で主導権を握ることは難しくなる。

大証の米田道生社長は「やるなら、3カ月程度で合意する覚悟が必要」と述べたが、両取引所の経営陣が、日本市場の現状についてどこまで危機感を共有できるかが統合実現のカギを握ることになろう。

今後、東証や大証を脅かすのは海外の有力取引所に限らない。あのニューヨーク証取がドイツ取引所による事実上の買収に合意せざるを得なかった背景には、最先端の電子取引システムで攻勢をかける取引所外取引の台頭があった。国内でもそうした勢力が脅威となる可能性がある。

経営統合は手段に過ぎない。収益力を上げられなければ、大きくなっても生き残れないだろう。

読売新聞 2011年03月11日

東証・大証統合 日本市場の復活へ実現を急げ

日本の2大証券取引所が、重い腰を上げた。

東京、大阪の両証券取引所が、経営統合に向けて近く協議に入ることになった。

世界の証券市場は、中国などの新興マーケットが急成長する一方、欧米では国境を越えた取引所の再編が加速している。このままでは、日本の存在感は低下するばかりだ。

統合は巻き返しへの第一歩となる。東証と大証は早期に合意し、アジアの主要マーケットとして生き残る戦略を進めるべきだ。

東証は現物株の取引で国内の9割を占め、上場株の時価総額は世界3位の規模である。片や大証は株価指数先物などデリバティブ(金融派生商品)の国内取引で5割の占有率を持っている。

統合が実現すれば、それぞれ得意の部門を生かしたバランスのよい市場が誕生する。投資家の利便性が向上し、市場の国際競争力が高まると期待されよう。

統合後は、両取引所を現物取引とデリバティブといった、機能別に再編する案が有力という。

経営の効率化も重要だ。取引の電子化で、大量の注文を高速処理する売買システムの性能が市場の魅力を左右する時代になった。

双方のシステムを一本化することで、設備投資の負担が軽減されて、積極的な増強や高度化が可能となるだろう。

これまでも東証と大証の統合は必要性が指摘されてきたが、なかなか具体的な動きにつながらなかった。どちらも独立性の維持にこだわったためだ。

だが、手をこまぬいているうちに、東証の売買規模は中国の上海証券取引所に抜かれて2年連続で世界4位に甘んじ、深セン証券取引所にも肉薄されている。

東京市場の平均株価は、前日の米国の株価に連動しがちだが、最近は当日の上海株の値動きに引きずられることも多くなった。

アジアでの影響力が先細りになりかねないという危機感が、統合推進のバネになったのだろう。

2月中旬に発表されたニューヨークとドイツの証券取引所の合併にも背中を押されたようだ。

東証と大証のトップは月内にも会談するという。東証と大証のどちらのシステムを使うかなど、主導権をめぐる調整は難しいかもしれないが、互いが利害を主張しあう内向きの論議に終始したのでは意味がない。

日本の証券市場をいかにして再生させるか。大局的な見地で、話をまとめてほしい。

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