規制仕分け 全面公開テコに大胆に

朝日新聞 2011年03月06日

規制仕分け 全面公開テコに大胆に

初めての「規制仕分け」が、きょうから始まる。国の規制や制度のあり方を、国会議員や民間の有識者が公の場で議論する作業である。

規制改革は一般にはなじみの薄いテーマだ。なるべく多くの国民の関心と支持を改革推進のテコにするために、外部の視点と全面公開という「事業仕分け」の手法を活用することは、意味のある試みといっていい。

規制にはそれなりの理由があり、関係者の利害も複雑に絡み合う。事業仕分けのように、その場で「廃止」「見直し」と結論を出すのは乱暴かもしれないが、改革の方向性はできるだけ明示してほしい。

仕分けの対象は、新成長戦略の柱となる環境、医療、農業分野を中心にした12項目。政府内で検討されている膨大な項目からすれば、ごく一部に過ぎない。議論は出尽くしており、あとは実行するかどうかの政治的決断だけだという「仕分け不要論」もある。

しかし、議論の過程をガラス張りにし、規制の現状と改革した場合のメリット、デメリットを国民の前にすべて明らかにすることは、政治の決断に対する世論の支持と理解を高めることにつながるに違いない。

小泉構造改革を批判して、政権を奪取した民主党は当初、規制改革に熱心とはいえなかった。

確かに、負の側面は否定できない。たとえば、労働分野の規制緩和が大量の非正規労働者を生み、格差社会の一因となった。しかし、それは規制改革そのものが間違っていたというより、セーフティーネットの整備など、社会的影響に対する備えが不十分だったことに主な原因があると見た方がいい。

新しいビジネスの芽を育て、日本経済を活性化させるうえで、やはり大胆な規制改革は欠かせない。

規制改革はまた、菅政権が掲げる「平成の開国」を実現する鍵も握っている。欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の締結には、EUが強く求める非関税障壁の見直しが必要だ。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を目指すなら、規制改革を通じた農業の強化だけでなく、投資やサービスなど幅広い分野で、規制の見直しは避けて通れない。

新規参入を阻止し、既得権益を守りたい業界団体。規制を通じて権限と仕事を維持したい霞が関。業界団体の意向を代弁することで政治的な見返りを得たい族議員。自民党政権時代、この「鉄のトライアングル」が規制改革を阻む岩盤と言われた。

民主党政権が、政権交代により古いしがらみを断ち切ったと胸をはるなら、それにふさわしい改革の実をあげねばなるまい。政府が今月末に閣議決定する規制改革の全体像を注視したい。仕分けはその第一歩に過ぎない。

読売新聞 2011年03月09日

規制仕分け 政治主導で思い切った改革を

国の規制の在り方を見直す行政刷新会議の「規制仕分け」が、2日間にわたって行われた。

厚生労働省などが所管する12項目の規制を取り上げ、9項目について、緩和の方向を打ち出した。

時代遅れになったり、経済成長を阻害しかねなかったりする規制を改革するのは当然であろう。

しかし、今回は、介護保険施設の新設拡大や、空港行政といった“大物”を外したため、対象が小粒だったとの印象が否めない。

そもそも、利害が複雑に絡む規制の是非を短時間で判断する手法に限界があったとも言えよう。

今後、規制仕分けを単なるパフォーマンスに終わらせないために行政刷新会議はどうすべきか。

雇用拡大や、新規事業の開拓で経済活性化につながりやすい規制を取り上げ、政治主導で、骨太な見直しを行う必要がある。

行政刷新会議は、これまで「事業仕分け」の手法を使って、税金の無駄遣いの洗い出しに力を入れてきたが、今回、初めて規制に焦点をあてた。

対象となった12項目のうち、市販されている風邪薬などのインターネット販売を原則禁止している規制について、「見直し」と結論づけ、ネット販売を緩和する方針を示した。これは妥当だ。

電気自動車(EV)の本格的な普及を目指し、コンビニエンスストアなどでもEVの急速充電器を設置しやすくできるよう、規制緩和を決めたことも評価できる。

一方、マンション投資への悪質な勧誘では、逆に規制強化を打ち出した。被害が増えている点を考慮すれば、当然の措置である。

こうした見直し策は、迅速に実施することが肝要だ。

ただ、今回の規制仕分けで残念なのは、初めから腰が引けたようなムードが強かったことだ。

行政刷新会議の分科会は、1月の中間とりまとめで、規制・制度改革の課題として250項目を列記していた。ふたを開けてみれば、各府省の抵抗が少なそうな項目ばかりが選ばれている。

例えば農業関連の規制である。政府が環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を検討している以上、農業の国際競争力の向上につながる緩和策が必要なはずだ。

実際には農協改革や、農地集約化などの農業再生の論議は見送られ、踏み込み不足だった。

政府は今月末、幅広い分野をカバーした規制改革の基本方針を決定する。政治主導で実効性のある改革を進めなければならない。

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