主婦の年金 政争の具とは愚の骨頂

朝日新聞 2011年03月07日

主婦の年金 政争の具とは愚の骨頂

専業主婦の年金をめぐり、国会が揺れている。この問題を速やかに解決する必要を与野党が見失い、政争の具にし続けるのなら、国民は「決められない政治」の被害者となる。

サラリーマンの妻で専業主婦は「第3号」被保険者として、自ら保険料を払わなくても年金を受け取れる。ただし、夫が会社をやめるなどした場合、妻は届けを出して「1号」になり、保険料(現在は月約1万5千円)を納めなくてはいけない。

ところが、本人が届け出をせず、3号のままの人が数十万から100万人いることが、わかった。

放置すれば低年金や無年金の人がたくさん出るため、厚生労働省は今年1月に「運用3号」という特別扱いを始めた。直近2年間の保険料を払うことは求めるが、それ以前については3号として認めるという内容だ。

だが、まじめに届けを出して保険料を払ってきた人がいる。以前に届け出漏れが分かった人は、年金を減額されている。こうした人たちとの不公平を2月2日付の社説で指摘した。

その後、「運用3号」は、国会で繰り返し批判された。総務省の年金業務監視委員会も、総務相を通じた是正勧告を検討中だ。

安易な救済でなく、公平性や公正さを重んじるのは当然のことである。

厚労省は「運用3号」の取り扱いを停止し、法改正を検討中だ。

是正は超党派で速やかに行うべきである。直近の2年に限らず、保険料を払えるだけ払ってもらう。払えない分は加入期間として認めるが、受取額には反映させない。そうした内容なら、公平性と救済を両立できる。

心配なのは、この問題が与野党の対立の焦点のひとつとされ、解決が遠のいてしまうことだ。

野党は、民主党がかつて年金記録問題を政権交代に結びつけたことへの意趣返しを試みている感がある。政権側は追及を恐れ、誤りを素直に認めようとしない。このままでは、より公正な政策への転換がなされず、該当者の年金支給が遅れてしまう。

冷静に考えれば、与野党合意の土台はある。年金保険料の未払い分を過去10年間さかのぼって後払いできるようにする法案のことだ。昨年、民主と自民が修正合意して衆院を通過したが、参議院で継続審議になっている。

この法案に修正を施せば、新たな法案を出さず早く問題を解決できる。

「運用3号」による救済を決めた責任者は長妻昭・前厚労相だ。長妻氏は国会で経緯を説明すべきだ。

自民党も、長年にわたる与党時代に、年金記録問題を放置してきた責任は重い。与党を追及するだけではなく、よりよい解決法を主導するくらいの見識を示してもらいたい。

毎日新聞 2011年03月09日

主婦の年金救済策 批判合戦より救済急げ

誰に責任があるのだろう。救済策を決めた長妻昭前厚生労働相か、「知らなかった」と発言した細川律夫現厚労相か。政権批判を強める自民党や公明党は長年放置してきた自らの責任についてどう説明するのか。

厚生年金に入っている会社員の夫をもつ主婦(第3号被保険者)は年金保険料を払わなくても国民年金に加入しているとみなされる。夫が会社を退職した場合、妻も国民年金に切り替えなければならないが、そのまま保険料を払っていない人が最大で約100万人に上る。

この問題に着目したのは長妻氏だ。保険料を納めていない人に年金を満額支給するのは不公平が生じるが、保険料未払い分を厳正に当てはめると無年金や低年金の人が出てくる。このため、すでに年金を受給している人は保険料を払ったとみなし、現役世代は直近2年分の納付を義務づけ、それ以前の分は帳消しにすることにした。この「運用3号」という救済制度を主導したのが当時大臣だった長妻氏で、細川氏は労働担当の副大臣だった。

昨年12月、「運用3号」は課長通知で正式決定したが、この時点で細川氏は大臣に就任していた。1月末までに2331人が適用を受けている。ところが、総務省の年金業務監視委員会で「運用3号」が問題になり、国会で質問された細川氏は課長通知を出した当時は救済策のことを「知らなかった」と発言。その後も細川氏の答弁をめぐって国会は紛糾し、政府は「運用3号」を廃止し法改正によって新たな救済策を実施することを決めた。

切り替え漏れによる保険料未払いの期間を年金加入期間に算入することで受給資格が得られたとみなす一方、給付は未払い分を減額する案などが検討されている。しかし、どこまでの期間をさかのぼって保険料納付を認めるのか、すでに受給している人はどうするのか、一般の無年金・低年金者の救済との公平性は保てるのかなど課題は多い。

かつて野党だった民主党は「消えた年金」などの追及で政権交代への道を開いた。年金は国民の関心が高く政府批判には効果が大きい。責められる側になって改めて実感していることだろう。しかし、野党になった自民党や公明党が同じ手で政権再交代を図ろうとしているのであれば、国民の目にどう映るのだろうか。ずさんな年金管理や切り替え漏れを放置してきた責任も改めて問われねばなるまい。

長年の怠慢と無責任によって年金制度には矛盾がいっぱいある。攻守所を変えて批判し合っているばかりでどうするのか。与野党が協力して早く救済策を決めるしかない。

読売新聞 2011年03月08日

主婦年金問題 与野党が協力し立法で救済を

このままでは年金制度への信頼はますます失われる。早急に新たな救済策をまとめるべきだ。

会社員や公務員の妻だった専業主婦が、夫の退職時などに年金資格の切り替えを怠り、無年金になってしまう事例への救済問題である。

細川厚生労働相は、1月から厚労省の課長通達によって実施していた救済策を撤回する、と表明した。国民年金法の改正を視野に、新しい措置を検討するという。

年金資格の切り替えを忘れた主婦は、その時点で保険料未納の扱いとなる。年金の受給資格を得るのに必要な加入期間の25年を満たせず、無年金になる主婦が100万人以上に及ぶ可能性がある。

本人の不注意とはいえ、旧社会保険庁の周知努力が不十分だったことを思えば、何らかの救済は必要だろう。問題は、行き過ぎると新たな不公平が生じることだ。

現行法では、未納期間があることが分かっても、遡って追納できるのは直近2年間だけと定められている。撤回された救済策は、この2年分は追納を求めるものの、それ以前は保険料を払っていたものとみなす、という内容だ。

これでは、きちんと切り替え手続きをして保険料を納めていた人と同等の年金がもらえることになる。著しく公平性を欠いており、撤回は当然である。

これに代わる救済策は、保険料の追納を2年間だけでなく、さらに長期間認める案や、未納期間を保険加入期間に算入しても年金額は減らすといった案が有力だ。

いずれも法律で定める必要があるが、成立させるには野党の協力が欠かせない。

しかし、野党側は、撤回した救済策の内容と共に、厚労省が立法措置を避けて課長通達だけで済ませた点を強く批判している。

この救済策を決めたのは長妻昭前厚労相で、細川厚労相は当時、厚労副大臣だった。

救済対象の規模によっては、数兆円が必要とされる。大規模な財源を伴う措置を、なぜ国会に諮らず決めたのか。長妻前厚労相は経緯を説明すべきである。

細川厚労相は、知らないうちに課長通達が出ていた、と国会で答弁している。これでは、あまりに無責任ではないか。

ただし、野党側も、この問題を菅政権を追い込む材料に使うべきではなかろう。

これまで政権を担当してきた自民、公明両党にも、年金制度の(ゆが)みを放置してきた責任がある。救済を後回しにしてはならない。

気儘 - 2011/08/26 12:06
制度上は、本人請求本人受け取りと成っている脱退手当金裁定請求書は、事業所により
委任状の添付が無くても提出受け付け“ずさんな管理”により起きた記録問題を知りな
がら放置してきた与野党の議員の方の責任がある。しかし最後の一人まで救済し1円迄
お返しすると元総理が言われていたにも関わらず、本人の提出出来ない資料であったと
認めながら第三者委員会で判断できないと却下され、年金は受けとれずに困っている。
阿修羅 - 2013/02/01 14:48
厚生省(国側)は、脱退裁定請求書としている!しかし提出した事業所には、退職金受給にかかわる請求書と記載し提出、老後の保障として納めた保険料は
20歳から基礎年金に任意加入し納め40年加入しなければ満額と成らない!そこで15歳から6年加入した保険料を清算した内21歳からの厚生年金加入期間
を日本年金機構は未加入期間とし消した年金を誤魔化したが、私は厚生年金基金に加入し(受給中)厚生省は、第三者委員会に“訂正出来ない”と却下の
判断させ、第三者委員会は脱退手当金の申し立て者の抑制を図り年金事務所に留め置かれた!国民の老後の保障ではなく、旧社会保険事務所で消えた年金
の被害者の救済を急ぐべき!!!
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