地方分権 権限移譲の具体的道筋を示せ

朝日新聞 2009年10月09日

分権改革 政権4年の工程表を早く

保育所には、子ども1人あたり3.3平方メートル以上の屋外遊戯場が必ず要るのか。庭は狭くとも、駅前に保育所があった方が便利ではないのか。

駅前の地価が高い大都市と、土地に困らない地方とではおのずと判断は違うはず。ならば、国が「3.3平方メートル以上」と義務づけるのではなく、自治体それぞれの判断で基準を決められるようにしよう――。

地方分権改革推進委員会(丹羽宇一郎委員長)が鳩山由紀夫首相に提出した第3次勧告は、そんな内容だ。

国による義務づけを見直し、自治体の自由度を高めるよう求めた項目は892に及ぶ。あわせて、地方の意見を反映させるための国と地方の協議の場の法制化も求めた。

この方向性は評価できるものだ。

分権委の勧告をこのまま受け取るべきなのかどうか、政府内には異論もあった。法律に基づく中立的な委員会であるとはいえ、自公政権の下でつくられた組織だ。政権交代したのだから、仕切り直すべきではないのか、という主張は分からないではない。

ただ、野党時代から分権推進の旗を掲げてきた民主党の路線と、分権委の考え方に大きな違いはない。民主党も政策集で義務づけの見直しをいい、総選挙マニフェストには、分権委が1次、2次の勧告で求めた権限移譲や国の出先機関の廃止を明記している。

分権委が積み重ねた論議をゼロからやり直すより、納得できるものは採り入れ、政策の早期実現を優先させる。このほうが建設的なのは間違いない。原口一博総務相が勧告に沿って、義務づけの見直しや協議の場の法制化に向けて直ちに作業に入るよう指示したことを支持したい。

同時に、分権に対する鳩山政権の取り組みをスピードアップするよう求めたい。かねて「地域主権」という言葉を使い、新政権が目指す政策の「一丁目一番地」だと繰り返してきた。その割に迫力が伝わってこない。

子ども手当などは政権公約に実現の時期を明示し、財源確保に躍起になっているのに、分権についてはほとんど具体論に踏み込んでいない。

国の権限や、廃止した出先機関の職員を自治体に移すには、事業費や人件費の財源も渡さなければならない。意欲的なお題目を語るだけで済んだ時代は過ぎた。具体的なプログラムづくりを急がねばならない。

民主党が主張してきた補助金の一括交付金への組み替えはいつ実現されるのか。どの権限、財源をいつ移譲するのか。疲弊する地方財政にどうテコ入れするのか。消費税をどう位置づけるのか。市町村合併を再開するのか。道州制に進むのか。将来像とともに、4年間の具体的な工程表を早く出してもらいたい。

毎日新聞 2009年10月08日

地方分権改革 「1番地」なら実行急げ

まず、このハードルを越えてほしい。国が自治体の仕事を法令で細かく規制する「義務付け」に対し政府の地方分権改革推進委員会が施設の設置、管理の基準など892項目について、廃止などの見直しを求める勧告をまとめた。

鳩山由紀夫首相は「地域主権」の実現を政権の「1丁目1番地」と強調している。分権改革の実行は後回しの許されない課題だ。さきの衆院選マニフェストで民主党が約束した国と地方の協議機関の法制化も含め、次の臨時国会で「第1弾」の成果を国民に示すべきである。

市町村などの保育所が「屋外遊戯場は1人あたり3・3平方メートル以上」とされるなど、国はさまざまな基準を設けたり、国との協議や計画の策定を義務づけることで自治体を統制している。勧告はこうした「縛り」を廃止したり、施設の設置・管理基準を自治体の条例へ委ねるよう求めた。国が道路のこう配や歩道の幅など基準を画一的に決めることは必ずしも地域の実情に合わず、行政のコスト高も生んできた。大胆な見直しが、極めて重要である。

民主党は、国から地方へのヒモつき補助金を、使い道が自由な「一括交付金」とすることを分権政策の看板としている。関係省庁の抵抗は必至だが、補助金改革と「義務付け」見直しを並行すれば、同党が重視する基礎自治体(市町村)への権限移譲に相乗効果が期待できる。

一方で、鳩山内閣の課題となるのは、自公政権で議論を進めてきた分権委のこれまでの勧告をどこまで引き継ぎ、尊重するかだ。国から地方への権限移譲の中身や、国の出先機関の見直しなど練り直しは避けられまいが、改革の大きな方向性は一致している。取り入れるべき点は柔軟に活用するのが現実的だろう。

勧告ではさらに、国と地方による協議機関の法制化に向けた検討を急ぐよう促し、分権委として試案を示した。自治体の悲願ともいえるテーマだが、協議されるテーマの範囲や、合意事項の拘束力をどこまで認めるかなど、詰めるべき点は多い。

国と地方の役割分担は、行政刷新会議も効率化の観点から作業にあたる。こうした仕分けに国・地方協議機関の議論が反映されるべきことは言うまでもない。内閣全体で分権改革をどう進めるかを整理したうえでの制度設計が必要だ。

自公政権では総論で誰もが分権改革に賛成しながら、実際はあまり進展しない状況が延々と続いてきた。保育所など象徴的な「義務付け」廃止を先行するだけでも、国民は分権効果を実感できる。多くの分野で議論はすでに出尽くしている。スピードが肝心である。

読売新聞 2009年10月08日

地方分権勧告 政治主導で迅速に実施せよ

地方のことは地方が自ら決める――。この地方分権の基本を実現するには、国が法令で自治体の仕事を細かく縛る「義務付け・枠付け」を大幅に見直すことが欠かせない。

政府の地方分権改革推進委員会が、保育所や特別養護老人ホームの設置基準など、892条項の義務付け・枠付けの廃止・縮小を柱とする第3次勧告を決定した。

鳩山内閣は勧告内容を尊重し、迅速に実施すべきだ。

法令による義務付け・枠付けは計1万条項を超える。

勧告は、このうち施設の設置基準、自治体の事務に対する国の許認可など3分野が「特に問題」と位置づけた。そのうえで、廃止するか、単に参考となる「参酌基準」に改めたり、国の関与を縮小したりするよう提言している。

例えば、保育所の場合、児童福祉法や政省令で、子ども1人当たりの屋外遊戯場の面積や、保育士の数などの最低基準が詳細に規定されている。これが参酌基準になれば、地方議会が条例で独自の基準を設定できるようになる。

保育所の設置基準が全国一律であるべき必然性はない。都市部は地価が高く、設置場所を見つけるのが困難だ。過疎部は人口が少なく、保育士の確保が難しい。自治体が地域の実情に応じた基準を設けることは、至って合理的だ。

全国の保育所の待機児童は2万5000人を上回る。特に都市部の保育所不足は深刻だ。不況の中、働きたくても、子どもを預けられずに断念する母親は多い。

原口総務相は、保育所の設置基準など象徴的な見直しを年内にも実現するよう関係者に指示した。積極的に取り組んでほしい。

自治体による都市計画決定などに関する国との協議や同意の廃止・縮小は、国から地方への権限移譲となる。地方の自由度を高め、行政の効率化にもつながる。

だが、関係府省は、大半の義務付けの見直しに同意していない。今後、官僚が様々な理由を持ち出し、抵抗するのは確実だ。

まさに政治主導が求められる。自民党政権では、地方分権に抵抗する各府省の閣僚を総務相が説得した。鳩山内閣では、各閣僚が分権を推進する側に回り、官僚への指導力を発揮してもらいたい。

義務付けが見直されれば、地方の権限は拡大する。自治体と地方議会は、新たな責任の重さを自覚し、適切な行政に努める必要がある。業界と癒着し、利益誘導に走ることのないよう、行政の透明化を図ることも大切だろう。

産経新聞 2009年10月08日

地方分権委勧告 「改革設計図」早急に示せ

政府の地方分権改革推進委員会がまとめた第3次勧告は、国が法令で地方自治体の仕事を縛る「義務付け」や「枠付け」のうち、「特に問題がある」と判断した892の規制について、廃止か自治体の条例に委ねるよう求めた。

具体的な規制としては例えば、保育所の屋外の遊び場の面積を「1人当たり3・3平方メートル以上」としたり、公営住宅の入居者の収入を「月15万8000円以下」などと縛ったりしている。土地の利用状況や所得などは地域差があり、全国一律の基準をはめ込むには無理がある。地域の実情を熟知した地方自治体が、適した行政サービスの基準を決められるようにすべきである。

現代は変化の激しい時代であり、住民が必要とする行政サービスも刻々と変わる。がんじがらめに規制されると柔軟な対応は言うに及ばす、こなしきれない課題も生じるだろう。義務付け見直しは全国知事会も強く要望しており、分権委の勧告内容はおおむね妥当といえるだろう。

これまで義務付け改革は所管官庁の抵抗が強く、進まなかった。「官僚主導政治からの脱却」を掲げる鳩山由紀夫首相は積極姿勢を示しており、できるものから早急に実行に移すべきだ。首相には省庁の巻き返しを許さないよう、目を光らせてもらいたい。

とはいえ、課題もある。鳩山政権が分権委のこれまでの勧告をどう扱うのか、不透明な点だ。分権委が自公政権時代の組織であるとの理由から、新たな枠組みへ衣替えさせたい考えともみられ、年内にまとめる予定だった「地方分権改革推進計画」自体を白紙に戻すことも検討しているという。

分権委の勧告内容を改めて一から議論し直すのでは、時間の無駄というしかない。地方には改革スケジュールの遅れへの懸念も広がっている。これまでの議論を活(い)かすべきだ。不十分な点のみ再検討するのも方策だろう。

自民党に比べて省庁とのつながりの薄い民主党政権の誕生は、真の地方分権を進める好機ともいえる。一方で、有力支持団体である労働組合に配慮し、改革が停滞するのではないか、との指摘も出ている。

こうした懸念を払拭(ふっしょく)するためにも、鳩山政権には、分権委の勧告よりも踏み込んだ改革を実現すべく、全体の改革設計図を早急に国民に示すことが求められる。

読売新聞 2009年10月05日

地方分権 権限移譲の具体的道筋を示せ

鳩山内閣は「地域主権国家」の確立を標榜(ひょうぼう)している。国から地方への権限移譲をどう進めるか。その具体的な道筋を早期に示してもらいたい。

地域主権推進担当の原口総務相は記者会見で、国の出先機関を「原則廃止する」と明言した。民主党の衆院選の政権公約に盛り込まれていた方針とはいえ、担当閣僚の発言は重い。

国家公務員の6割超の21万人は東京の霞が関ではなく、地方の出先機関に勤務している。その総事業費は13兆円超にも上る。

政府の地方分権改革推進委員会は昨年12月、国土交通省の地方整備局、農林水産省の地方農政局など、8府省の15系統の出先機関を統廃合し、職員3万5000人を削減するよう勧告した。

出先機関は、国会や地方議会の監視の目が行き届きにくいうえ、自治体との事務が重複する「二重行政」が目立つ。事務や組織の見直しは時代の要請でもある。

だが、関係府省と自民党の族議員の抵抗により、実際の作業は進まなかった。地方分権を内閣の最重要課題と位置づけながら、最後まで指導力を発揮しなかった麻生前首相の責任は免れない。

鳩山内閣は、分権委の勧告を土台に、いま一歩踏み込んだ改革案を策定し、「政治主導」で官僚の抵抗を排除しつつ、実行することが求められる。

民主党は、自民党と比べて、各府省や業界団体とのつながりが薄い。それが地方分権では強みとなるはずだ。一方で、支持団体の労働組合などに配慮し、分権が停滞することは許されない。

補正予算の組み替えでは、各府省が率先して不要な予算を洗い出している。同様に、各府省の閣僚、副大臣、政務官の政務三役が権限の地方移譲も主導すべきだ。

そのポイントは、出先機関の廃止ではない。その事務や事業を一つ一つ吟味し、地方に移せるものは移して、国の仕事を実質的に減らすことだ。出先機関の仕事を本省に戻し、引き続き国が行うのでは、改革とは言えない。

国の仕事と職員が減らされることに官僚は不安を感じるだろう。自治体に籍を移したり、職場が変わったりする職員が多数出ることは避けられない。分権の円滑な実施には、そうした職員を安心させる仕組みが不可欠だ。

職員や事業が地方に移る場合、当然、それに見合う財源も移譲する必要がある。自治体に移った職員の給与や待遇にも、適切に目配りすることが重要だ。

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