国防費2ケタ増 中国は軍の透明性を高めよ

朝日新聞 2011年03月05日

中国国防費 不透明さが懸念を呼ぶ

中国の2011年の国防予算は、6011億元(約7兆5千億円)に上ることが明らかになった。10年の実績と比べて12.7%も増えるが、中身は相変わらず不透明なままで、近隣諸国の懸念はつのるばかりだ。

きょう開幕する全国人民代表大会(全人代)の報道官をつとめる李肇星前外相が記者会見で説明した。

李氏は予算増の理由として、装備増強や軍事訓練増加、軍人の待遇改善などをあげた。

インドの記者からは国防費増加は隣国への圧力になるのではないかとの質問が出たが、「国内総生産(GDP)比で2%以下で、多くの国より低い」と述べた。そのうえで「防御的な国防政策を実行しており、どの国にも脅威とならない」と話した。

中国は空母建造など海軍を増強するだけでなく、ステルス戦闘機や高性能ミサイルの開発によって空での存在感も強めている。そういう現実を踏まえれば「脅威とはならない」という簡単な説明では、対外的に説得力はない。

李氏は「国防予算は法に基づき全人代の承認を受け、執行にあたっては国家と軍隊の監督を受けている」とも述べる。だが実のところ、中国国民のほとんども実態を知らない。

政府の収入と支出について、予算案や審議の過程、執行状況が公開される民主国家とは違い、中国では国防予算だけでなくすべての予算が不透明さに包まれている。国防費に研究開発費や海外からの装備購入費などは含まれておらず、米国からは実際の国防費は2倍以上との見方が出ている。

中国では、89年の天安門事件で傷ついた軍の威信は、海外や災害などでの活発な活動により、国内でかなり回復している。軍服姿でホテルのレストランで飲食したり、百貨店で買い物をしたりしても問題にならない。軍と民の関係は日本では考えられないほど強いのだ。

軍が主導する膨大な費用のかかる宇宙への進出も、誇りに思う人が多い。だから、国外からのような厳しい視線は見られず、国民から国防予算への批判はほとんど聞かれない。

そんな国民感情を背景に、右肩上がりの経済成長をバネとして、中国の国防費は当面伸び続けるだろう。

その結果、アジアの隣国では中国脅威論が高まるだろうし、対抗して軍事強化を図っている国も少なくない。

尖閣諸島沖の事件や南シナ海での摩擦などの後に再び強調されるようになった「中国平和発展論」も、まともに受けとめられなくなるだろう。

中国の目覚ましい発展は、平和な周辺環境があってのことだ。軍事力強化はそんな環境を台無しにし、結局は不利益を招きかねない。地域の大国としてその大局を見通してほしい。

読売新聞 2011年03月05日

国防費2ケタ増 中国は軍の透明性を高めよ

中国の2011年の国防予算は前年実績比12・7%増で、2年ぶりに2ケタの伸びとなった。

5日開幕の第11期全国人民代表大会(全人代=国会)第4回会議を前に大会報道官が公表した。

中国の国防予算は1989年から09年までの21年間、2ケタ増が続いたが、世界同時不況などの影響で10年は1ケタ増に減じた。

それが景気回復とともに、再び2ケタ台に転じた。中国は今後5年間の国内総生産(GDP)成長率の目標を7%に設定している。国防予算は高い増加率が続くものと見なければなるまい。

今年の国防予算の伸び率は、世界2位の経済大国となった昨年のGDP成長率10%を上回った。

中国は経済成長率を超える国防予算増をなぜ続ける必要があるのか、合理的な説明をすべきだ。

軍の透明性を高めなければ、周辺諸国が抱く懸念は消えない。地域の安定に寄与するよう大国としての責任を果たすべきである。

中国の国防予算は、11年度の日本の防衛予算の1・58倍である。軍事費では、すでに米国に次ぐ世界第2の軍事大国だ。

しかも、その予算には、装備の研究開発費が含まれないなど不明な点が多い。実際の軍事費は公表値の2倍以上と見られている。

最近の中国軍増強は著しい。

上海や大連などでは航空母艦の建造が着々と進んでいる。20年には潜水艦や水上艦を従えた空母戦闘群が就役する見通しだ。

次世代の新鋭ステルス戦闘機「殲(J)20」の試験飛行は年明けに行われた。ゲーツ米国防長官の中国訪問中に実施するという挑発的な示威だった。

台湾海峡有事の際、米空母の接近を阻止するのが狙いと見られる対艦弾道ミサイル「東風(DF)21D」の配備も始まっている。

今週、中国軍機2機が、沖縄県尖閣諸島の領空付近約50キロまで接近した。中国軍機が日中中間線を大きく越えて尖閣諸島に接近したのは初めてのことだ。

中国は東シナ海、南シナ海、西太平洋で、制空権や制海権を握ろうとしているのだろう。日本も警戒を怠ってはなるまい。

枝野官房長官は、中国の国防予算増加について「金額はもとより内容も不透明な部分がある。透明性を一層高めて行くことが望まれる」と述べた。当然の指摘だ。政府は閣僚会談や防衛交流などを通じ、長期に及ぶ国防予算増の理由や狙いを、中国側にただして行かなければならない。

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