毎日新聞 2011年03月03日
プロと大学野球 雪解けを歓迎したい
プロ野球と学生野球の間を閉ざしていた重い扉が初めて開いた。昨年の日本学生野球憲章の改正に伴い、プロと大学チームの交流試合が解禁となった1日、宮崎市で巨人の2軍と中央大学の対戦が実現、プロと学生野球の新たな関係正常化への第一歩をしるした。
プロ野球と学生野球の交流禁止の歴史は戦前の1932(昭和7)年の「野球統制令」にさかのぼる。戦後の46年に作られた学生野球基準要項と、それをもとに50年に制定された日本学生野球憲章もプロとの交流を原則禁じてきた。
プロ側による社会人選手の強引な引き抜き事件などもあり、アマ球界とプロの冷え切った関係が続いた。親子であってもプロ野球選手は高校、大学の野球部員を指導できないというおかしな関係も生まれた。
不幸な関係は80年代以降、徐々に緩和の方向に向かってきたが、大きな転換点となったのは4年前、社会問題に発展した高校野球部員の特待生問題だった。一律禁止となっていた野球部員に対する学費や寮費などの免除が想定を超える範囲で各校に広まっていた。しかも、他のスポーツ部員に認められる特待制度を野球部員だけが許されないという不公平を指摘する声も出た。
こうした事態を受け、学生野球協会はすでに時代に合わない内容も含んだ憲章の見直し作業を開始。昨年4月、制定から60年ぶりに憲章を全面改正した。旧憲章が原則禁止としていたプロとの交流は「商業的に利用されない」「実費以外の金品を提供しない」などの条件を付け、「交流できる」と180度転換した。
その後、学生側とプロ側が協議を重ね、2月に交流試合に関する運用規則をまとめた。高校は体力差を考慮して除外。大学チームとプロのオープン戦は大学が長期休暇となる3月と8月に限定し、商業目的の試合を排除する意味から入場料の徴収を認めないことなどの条件をつけ、今回の交流試合の道を開いた。
五輪から除外された野球の五輪への復活という共通目標がある中、プロと学生の双方が手を携えていくことは望ましい姿だ。
ただし、今回の関係改善を悪用するようなことがあってはならない。とりわけプロ側が留意すべき点は多い。学生との交流試合をドラフト前のテストに悪用したり、個別の選手獲得の材料にするようなことは厳に慎まなければならない。
やがてはサッカーのように、プロ・アマチームが力を競う野球版「天皇杯」のような大会が生まれてもいい。プロと学生、社会人がそれぞれの立場を尊重し、ともに野球発展に協力し合うことを望みたい。
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読売新聞 2011年03月03日
プロアマ交流 野球界の底上げにつなげたい
プロ野球チームと大学野球チームの交流試合が今月、解禁となった。
これを機に、プロとアマチュアの交流を一層促進し、球界全体のレベルアップにつなげてほしい。
1日には最初の試合として、巨人の二軍と中央大が対戦し、3―3で引き分けた。中大の選手は本塁打も放った。プロ投手の球を見事にはじき返したことは、大きな自信になったはずだ。
「プロはよく振れていた。集中力が違うのかな」と語る選手もいた。プロのレベルを肌で感じた貴重な体験を、これからのプレーに生かしてもらいたい。
プロ側には、プライドにかけて負けられない、という重圧もあっただろう。学生との対戦は、自らの原点を思い返す良い機会となったのではないか。
日本の野球界では、プロとアマチュアの断絶状態が続いた。背景の一つとして、裏金問題など、プロ側の行き過ぎた勧誘があったのも事実だ。過去を教訓に、プロ・アマ双方がルールに則って交流を進めていくことが肝要だ。
大学、高校野球では、戦後間もなく制定された日本学生野球憲章が、プロとの試合、練習を原則として禁じていた。学生野球が商業的に利用されるのを防ぐことなどが目的だった。
大学、高校野球を統括する日本学生野球協会は昨年、その憲章を全面改正し、プロとの対戦や練習などを認めた。プロの高度な技術を学生野球の発展に生かそうという声が、プロとアマ双方から高まったためだ。
ただ、プロと高校の試合については、解禁が見送られた。プレーのレベルや体力の差などを考えれば、やむを得ないことだろう。
プロと大学の試合は、大学が休暇中の3月と8月に限られる。観戦は無料とすることが条件だ。阪神―明治大など、今月中に複数の試合が予定されている。
大学の有望選手がプロに挑む。ファンにとっては、野球を見る楽しみが一つ増えたといえる。
プロ選手がシーズンオフに母校で練習する条件も緩和されている。そうした機会に、高校球児もプロの技に接してほしい。
プロ出身者が大学チームなどの監督になる指導者交流が、より活発化することも期待したい。
日本は、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で連覇を果たしている。今後も世界のトップレベルを維持していくためには、球界一体となった強化への取り組みが欠かせない。
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