政府の新年度予算案が、きのう未明に衆院を通過した。これにより、野党が多数を占める参院で否決されたとしても、憲法の規定で予算は成立する。
しかし、赤字国債の発行を認める法律などは参院で可決するめどが立たないため、採決を先送りした。財源を手当てできるかどうかわからないまま、予算案だけ参院に送ったことになる。
この不正常な事態を解消するのは与野党双方の責任である。予算案の修正を協議し、ぜひ合意してもらいたい。
衆院通過に先立ち、野党側は予算案の組み替えを求める動議を提出した。
自民党の動議は、子ども手当などの目玉政策の撤回や、公務員人件費の削減を財源とし、公共事業に1.4兆円を充てる。予算の総額は92.4兆円から89.3兆円に圧縮するとしている。
政府案との隔たりは大きいが、接点を探ることは可能だろう。優先課題は何かを問い直し、理念は大切にしつつ具体策は柔軟に手直しする。政府・与党は、そんな姿勢で臨んでほしい。
日本が立ち向かわなければならない最大の課題は、少子高齢化である。働く世代が減り、支えられる世代が増えていく。社会保障のほころびはもちろん、経済の停滞も、財政の悪化も、そこに起因するところが小さくない。
であれば、子どもを産みやすい社会をつくり、育ちを支援することが最優先ではないか。民主党は「チルドレンファースト」(子ども第一)という理念まで降ろす必要はない。
自民党案では、子ども手当の代わりに児童手当を復活・拡充するが、子どもへの支援の総額は大きく減る。それを公共事業に振り向けることが、日本の立て直しに役立つとは思えない。
一方で、子ども手当が、子どもを支援する最善の策だとも限るまい。
児童手当のように、豊かな世帯には支給しない仕組みにしてはどうか。手当よりも保育所などのサービス拡充に力を入れるべきだ――。そうした主張には耳を傾けても良いのではないか。
他にも、野党の主張に理のあるものがある。たとえば高速道路無料化は優先課題には当たるまい。それらを撤回し、予算の総額を圧縮してはどうか。
予算案の修正に、政権交代時代の新たな政治の作法として積極的な意義を見いだしたい。与野党が知恵を出し、よりよい案を練り上げる。それは国会が本来の機能を果たすことである。
民主党政権の思うがままにはさせない――。有権者は昨年の参院選でそんな判断を示した。マニフェストの固守より、与野党の話し合いと歩み寄りを求めたと解するべきだろう。
やむなく妥協するのではない。修正こそが民意に応える道なのだと考えるべきではないか。野党の協力を得られないなら、与党が自ら修正するくらいの腹づもりがあっていい。
この記事へのコメントはありません。