区割り見直し 衆院も選挙制度論議に着手を

毎日新聞 2011年03月01日

衆院区割り見直し その場しのぎは限界だ

2010年国勢調査の速報値が公表された。総務省の試算によると、衆院小選挙区の議員1人あたりの人口差を示す「1票の格差」は最大2・524倍で300小選挙区のうち97の選挙区で格差2倍を超えた。

この結果を受け、衆院議員選挙区画定審議会は10年に1度の区割り見直し作業に入る。現行基準による対症療法には限界があり、踏み込んだ格差是正には法改正による基準改定が必要だ。与野党は逃げずに議論を進めるべきである。

00年国勢調査を受けた区割り見直し後の格差は最大2・064倍で、この10年間で広がったことになる。画定審の作業は1票の格差を2倍未満に保つことが基本で、1年以内に首相に見直し案を勧告する。

現行の区割り基準は、47都道府県にまず1議席ずつ配分したうえで残る253の議席を人口に応じ各都道府県に配分する「1人別枠方式」という方法だ。これに従うと7都府県で「4増4減」の定数見直しが必要となる。具体的には東京都で2議席、神奈川、愛知両県で各1議席を増やし、大阪府、徳島、高知、鹿児島各県で1議席を減らす。

ただ「1人別枠方式」を厳守する限り、踏みこんだ格差是正を実現するには限界がある。なかなか抜本策を打ち出せない国会をよそに、司法は1票の格差への警告を強めている。格差が最大2・30倍だったさきの09年衆院選をめぐる高裁判決では「違憲」「違憲状態」との判断が相次いでいる。

一連の訴訟では最高裁の審理も結審しており、これまで3倍以内を合憲ラインとする判断を続けていた最高裁がどんな結論を出すかが焦点となっている。国会はその場しのぎの是正を繰り返すだけでなく、画定審の作業にあたり、1人別枠方式の見直しも含めた措置を講ずべき局面ではないか。

同時に、菅直人首相は衆院の定数削減問題で結論を急ぐ考えを示している。民主党は比例代表定数の80削減をさきの参院選公約で掲げている。仮に議論が本格化し、与野党協議の過程で選挙区定数の削減も検討する場合、選挙区の格差是正と連動させて議論する必要がある。

一方、速報値によると参院選挙区の1票の格差も最大5・126倍に達し、東京高裁が昨年11月「到底看過できない」と違憲判断を下した水準(5・00倍)を上回った。

西岡武夫参院議長は比例9ブロックへの再編案を公表したが、改革案は早くも乱立気味だ。衆参両院の選挙制度や機能分担をどう考えるかという長期展望に立ちながら、格差是正に向けた与野党の合意を急がねばならない。

読売新聞 2011年02月26日

区割り見直し 衆院も選挙制度論議に着手を

「1票の格差」の是正だけでなく、衆参両院の選挙制度自体の改革に踏み込む時だろう。

昨年10月の国勢調査の速報値が発表された。この結果に基づき、衆院選挙区画定審議会(区割り審)が、衆院選の小選挙区を10年ぶりに見直す作業を開始する。

今回の速報値で試算すると、衆院小選挙区ごとの議員1人あたりの人口の最大格差は2・5倍を超えた。格差が2倍を超える選挙区は実に97にのぼる。

最近の定数訴訟では、2倍を超える格差は法の下の平等に反するとして、各高裁が「違憲」「違憲状態」の判決を相次いで出している。立法府に対する司法からの強い警告と受け止めるべきだ。

特に問題なのが、以前から格差是正を困難にさせている要因といわれる「1人別枠方式」をいまだに続けていることだ。

まず47都道府県に1議席ずつ割り振り、残りの議席を人口比に応じて各県に配分する。人口の少ない県でも最低2議席を確保できるようにする仕組みだ。別枠方式をなくせば、格差は1・6倍に収まるという試算もある。

別枠方式を撤廃するには、区割り審の設置法を改正する必要がある。今のままでは、区割り審は別枠方式に従って見直し作業を進めざるを得ない。各党は、別枠方式を撤廃して単純人口比例に改める法改正を急ぐべきだ。

区割り論議の以前に、選挙制度の問題もある。

参院では、格差を大幅に縮小させるには選挙制度の見直しが不可欠と判断して、具体的な論議が始まっている。昨年末には西岡参院議長が、現行の選挙区選と比例選を、全国9ブロックの比例選に一本化する私案を発表した。

だが、選挙制度は、衆参両院の役割や権能と密接な関係を持っている。二院制のあり方など根本から考えるべきで、参院だけが議論を進めるのは望ましくない。

衆院選は、現行の小選挙区比例代表並立制の下で、すでに5回実施されている。

これまでの15年の間に、並立制の長所短所が浮き彫りになってきており、制度の見直し論も出ている。安定した政治を実現するために、中選挙区制への回帰を唱える政治学者もいる。

ねじれ国会の常態化で政治を機能不全に陥らせないためには、衆参両院の選挙制度をどう改めればよいか。各党とも、これを喫緊の課題と認識して、本格的な議論に着手してもらいたい。

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