鳩山政権が緊急雇用対策づくりに乗り出した。雇用を守ることは、民主党が掲げてきた「生活第一」を貫く上でも重要である。
完全失業率は8月の実績がわずかに改善して5.5%になったが、年末にかけて悪化が懸念されている。回復の兆しをみせてきた景気が「二番底」に落ち込まないよう、中小企業の資金繰り支援などとも並行して新政権にふさわしい危機対策をつくり、国民に示してほしい。
世界同時不況を受けて自公政権が実施してきた対策の効果を見極め、次の手をどう繰り出すか。投資家も含めて、国内外が新政権の手腕に期待を込めて注視している。
8月の失業率がやや改善した背景には、エコポイントやエコカー減税など政策効果による製品販売の回復があると見られる。だが、有効求人倍率は過去最悪のままで、先行指標である新規求人倍率はなかなか改善しない。
労働者の所得環境は厳しく、夏の賞与は大幅に下落した。個人消費は低迷し、人員削減が小売業にも広まる時代となっている。
民間経済の回復を待つだけでは雇用は守れないし、年末から来年にかけて政策効果が落ちれば、景気が「二番底」に向かう懸念もぬぐえない。
9月の日銀短観(企業短期経済観測調査)は、2期連続で改善したが、景況判断はかなりの業種で6月時点の予想を下回った。設備投資計画も下方修正の基調が変わらない。
個人も企業もいま苦しいばかりか、先行きへの不安がぬぐえず、消費や投資に臆病(おくびょう)になっているといえる。円高や金融株を中心とした急激な株価の下落など市場環境も悪化している。
こうした状況では、雇用を整理していきたいという企業心理にはなかなか歯止めがかかりそうにない。失業率が今後再び悪化し6%を超える可能性も十分にある。
当面の雇用を支えると同時に、中長期的に社会的安全網の立て直しと新たな成長戦略の見取り図を示しつつ、それらを補正予算の見直しや来年度予算編成に生かす工夫が鳩山政権に求められているのだ。
まずは企業に休業補償を出して解雇を避ける雇用調整助成金の対象を広げ、失業の増加を抑えるべきだ。失業者への職業訓練や再就職、生活支援も強化しなくてはならない。
職業訓練は実際に就職に結びつくよう、経済界の声も聞きながら具体策を練る必要がある。
雇用の安定なしに消費も景気も回復しない。昨年暮れに「派遣村」を生んだような事態に陥らせず、新卒の若者たちが長い就職氷河期にはまりこむのを避けることも重要だ。雇用悪化を阻止する決意を政策で示してほしい。
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