元代表処分決定 国会に専念すべき時だ

朝日新聞 2011年02月23日

小沢氏処分 真の区切りとするために

党として一定のけじめをつけたということだろうが、これで一件落着となるだろうか。

政治資金規正法違反の罪で強制起訴された小沢一郎元代表の処分を民主党が決めた。判決が確定するまで党員資格を停止する。

小沢氏の元秘書ら3人が逮捕されてから1年余、小沢氏自身の強制起訴の議決が公表されてからでも約4カ月半がたつ。除籍(除名)や離党勧告より軽い、穏便な処分を決めるのにも、これほど長い期間を要した。

民主党の自己統治能力の欠如を、改めて厳しく指摘せざるをえない。

政権交代に「古い政治」からの決別を期待し、裏切られた有権者の信頼を取り戻すのは容易ではあるまい。

小沢氏は処分決定に先立つ党倫理委員会での弁明で、検察審査会による強制起訴は検察による起訴とは性格が異なるなどとして、処分は不当だと訴えたが、認められなかった。

所定の手続きを踏んだうえでの党の機関の決定である。小沢氏は処分を厳粛に受け止めるべきである。

しかし、小沢氏を支持する議員は処分に反発しており、党内の亀裂はさらに広がる気配だ。

小沢氏支持の議員が会派離脱を表明したり、河村たかし名古屋市長ら地域政党との連携を探ったり、菅政権への揺さぶりを強めている。

党員資格を停止される人物が、「闇将軍」のように党内で影響力をふるう。異様な光景というほかない。

小沢氏が何事もなかったかのように、こうした動きを続けるなら、今回の処分はおよそけじめの名に値しない。その場合、菅直人首相と党執行部は、再度小沢氏への厳しい対処を迫られるだろう。首相らには、その責任を強く自覚してもらいたい。

忘れてはならないのが、小沢氏がいまだにこの問題について国会で説明していないことである。

小沢氏が事実上、政治倫理審査会への出席を拒んでいる以上、野党が求める証人喚問に、民主党は応じるべきだ。国会での説明抜きに、区切りをつけることはできない。

首相は年頭の記者会見で、今年を「政治とカネの問題にけじめをつける年」にすると宣言した。

自民党長期政権時代から繰り返されてきた日本政治の宿痾(しゅくあ)とでもいうべき問題にけりをつけるには、企業・団体献金の禁止や政治資金収支報告書に対する政治家の監督責任の強化などの制度改革が欠かせない。与野党が協力して、ぜひ今国会で必要な法整備を実現してほしい。

政策より権力闘争に傾斜する小沢氏流の政治を乗り越え、与野党が徹底した話し合いを通じて政治を前に進める出発点にしなければいけない。

毎日新聞 2011年02月23日

元代表処分決定 国会に専念すべき時だ

ひとつの節目には違いない。政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表に対し同党は裁判確定までの間、党員資格停止処分とすることを正式に決めた。

党内の混乱に区切りをつける時だが、国会では予算関連法案の成立が厳しい状況となり、民主党内の一部で首相の退陣論が取りざたされるなど政治は混迷している。与野党は政争にかまけず、予算関連法案の修正に神経を集中すべきである。

ずいぶんと処分問題に時間を費やしたものだ。それでも決定にあたり元代表は処分方針に「合理的理由はない」と異を唱えた。

確かに「やましい点はない」と主張する元代表の刑事責任の有無は法廷で決せられる。だからといって、党の処分も不当とする理屈に首をかしげてしまう。

元代表は強制起訴である点を「通常の起訴と同視できない」と主張する。だが、法的に扱いは変わりなく、執行部が「法にもとづき国会議員本人が起訴された事実は重い」と指摘していた通りである。

衆院政治倫理審査会に出席していないことも元代表は「出席は拒否していない」と主張した。これまで国会で説明する機会は何度もあったはずだ。証人喚問に応じる意向を示せば、野党も異議はあるまい。

元代表に近い衆院議員による先の会派離脱騒動は、倒閣運動に等しい。元代表が引き続き党にとどまるつもりなら、当然ながら処分に従うべきだ。内紛まがいの動きをすれば政治全体の足を引っ張ることを自覚しなければならない。

処分をめぐるゴタゴタの間に菅内閣を取り巻く状況は厳しさを増している。予算関連法案のうち特例公債法案などに社民党が反対する方針を決め、衆院再可決で乗り切る道は事実上、閉ざされた。民主党内では首相の退陣と引き換えに予算関連法案の成立を探る動きすら公然化している。政党として安直かつ無責任な姿と言わざるを得ない。

自民、公明も含め与野党が本予算案や関連法案の修正を早急に協議し、接点を探るしかない。自民党も衆院解散要求一辺倒ではいけない。予算の組み替え案をまとめるだけでなく、修正協議を軌道に乗せないようでは「責任野党」に値しまい。

日本経団連の米倉弘昌会長は予算審議そっちのけの政治状況に「与野党の協力が必要なのに、国民のため何も仕事をしておらず、給料泥棒のようなもの」と苦言を呈した。気持ちは理解できる。

中東など国際、経済情勢の変化にも細心の注意を払うべき時だ。「ねじれ国会」下での責任の共有を与野党は今こそ、かみしめてほしい。

読売新聞 2011年02月23日

民主党処分 小沢氏の国会招致も決着急げ

「軽すぎる」との批判はあっても、小沢一郎民主党元代表が言うような「著しく不穏当」な処分では決してない。

民主党が、政治資金規正法違反で強制起訴された小沢氏の処分を、「判決確定までの党員資格停止」と正式決定した。

小沢氏は党倫理委員会での弁明で、この処分に、「前例がなく、合理的な理由がない」「民主主義の国の政党のあり方として著しく不穏当」などと異議を唱えた。

検察審査会の議決に基づく強制起訴と検察による起訴は「同視できない」として、従来の検察審査会批判も繰り返した。

小沢氏が、法廷で無罪を主張して争うのは自由だ。だが、元秘書3人の逮捕・起訴に加え、本人が刑事被告人となった以上、本来は自発的に政治的なけじめをつけるのが国会議員として筋である。

本人がけじめを回避し続ける中で、代わって政党が処分することに何ら問題はない。むしろ処分をせず、放置しておく方が国民の政治不信を増幅しよう。

小沢氏が、衆院政治倫理審査会への出席を「拒否していない」とした上、政倫審は「国会運営上の都合で開催されていない」と語ったのは、明らかに事実と違う。

議員が申し出れば、政倫審はすぐに開かれる。開催できないのは、小沢氏が一方的に条件を付け、先送りしているのが原因だ。

菅首相ら民主党執行部は、処分とは別に、小沢氏の国会招致問題を早く決着させる必要がある。

小沢氏は、「何らやましいことはない」と言うなら、率先して国会で説明すべきだ。それを拒む以上、民主党は、野党が求める証人喚問に同意するしかあるまい。

今回の処分に対し、小沢氏に近い議員は強く反発している。来年度予算案や予算関連法案の採決での造反を示唆する議員もいる。

小沢氏の立場を守るため、予算を人質にとって権力闘争に走るのは、「身内の論理」にほかならず、政権党議員の自覚を欠いている。国民の理解は到底得られない。

菅首相は、分裂含みの党内抗争や、与野党協議の行き詰まり、支持率の低下などで、一段と苦しい政権運営を強いられている。

今、正面から取り組むべきは、消費税率引き上げを含む、政権公約の全面的な見直しだ。

党内の路線闘争の激化を恐れ、公約見直しを先送りする中途半端な対応では、将来展望は開けない。むしろ公約見直しを前倒しし、その具体策を示すことでしか、態勢立て直しは図れまい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/664/