八百長問題で屋台骨が大きく揺らぐ日本相撲協会が、組織改革へ向けた提言を受けた。
外部有識者による「ガバナンス(組織統治)の整備に関する独立委員会」が協会に出した。その答申は、これまで角界が「常識」としてきたことを覆すものばかりだ。
現在12人いる理事は力士出身が10人を占めるが、約半数を学識経験者など外部から登用する。部屋数は50から30程度に削減した上で、協会組織の一部とし、運営を師匠に委託する契約を結ぶ。時に億単位で売買される年寄名跡は金銭授受を伴う譲渡を禁じる――。
独立委は昨夏、野球賭博問題を受けて発足した。委員会は、協会が目指す新公益法人への移行に向けて、これだけは満たしておかねば公益認定は難しい、という点に切り込んだ。
求めたのは、不祥事の連鎖を生んできた角界の閉鎖的な構造の変革と、協会の機能強化だ。
協会が伝統芸能とスポーツの要素を兼ね備える「国技」として大相撲を存続させたいなら、7カ月に及ぶ議論の末にまとめられた改革案は、どれも急いで検討すべき課題ばかりだ。
だが、放駒理事長の腰は重い。
「いま起こっていることを片づけてから」と、八百長問題の解明を優先する考えを示した。公益法人への移行を検討する内部委員会の作業は、問題発覚後に凍結したままだ。
土俵の根幹を揺るがす八百長禍に不退転の決意で臨む思いは理解できる。だが、ほかのことは後でいいとは思えない。
答申は現在の協会が「任務を行うのにふさわしい組織かどうか疑問」と断じた。そこまで言われて、聞かぬふりのような先送りでいいのか。
独立委の奥島孝康座長は「八百長問題は協会の体質が生み出したもの。改革を進めれば問題は起きない」と言い、組織強化こそが根本的対策だと位置づけて、早急な対応を求めている。
力士らに直接関わる部屋制度などの問題は、協会員が率先して話し合っていけるはずだ。
年寄名跡の扱いなど「既得権益」を守りたい思いで改革に後ろ向きな親方がまだいるようだが、いつまで内向きの論理にしがみつくのだろうか。
力士暴行死事件などの不祥事が起きるたび、協会は「部屋と師匠の問題」として組織的な対応を怠ってきた。
答申は、厳しく疑問を投げかけている。八百長問題の事後処理に忙殺されるあまり、最も重要な組織改革を後回しにしている。過去の不祥事からいったい何を学んできたのか――と。
このまま先送りが続けば、今でも相撲を楽しみにしてくれているファンが今度こそ離れて行くかも知れない。
改革に水入りはない。
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