G7 G4論前に重責認識せよ

読売新聞 2009年10月06日

G4構想浮上 新たな枠組みは機能するか

先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が、大きな曲がり角に立たされているということではないか。

先週末にトルコで開かれたG7で、これまでのG7を米国、ユーロ圏、日本に中国を加えた新たな「G4」に作り替える構想を米国が打診した。

世界経済の不均衡是正や為替の討議で、中国はもはや無視できず、米国は中国を取り込んだ枠組み作りが急務だと判断したようだ。

約1週間前に米ピッツバーグで開かれた先進国と新興国によるG20金融サミットは、G20を定例化し、国際経済を話し合う「最上位」の枠組みに位置付けた。

それに呼応し、「先進国クラブ」のG7を世界経済の主要プレーヤーからなるG4に衣替えさせる議論が提起されたのだろう。

だが、G7メンバーの英、仏、独、伊の4か国は、ユーロ圏としてひとくくりにされることを恐れ、新構想に抵抗している。

中国も為替相場を事実上管理しており、国際協調に関与させたり、応分の責任を負わせたりすることは容易ではない。

このため、今回のG7では結論が先送りされた。構想の具体化には時間がかかるのではないか。

トルコで浮き彫りになったのは、G7の地盤沈下だ。

直前に、円高・ドル安が加速し、ドルはユーロ、アジア通貨などに対しても下落した。

しかし、為替に関するG7共同声明の記述は、4月の声明とほぼ同じだ。ドル安是正へ、明確なメッセージを打ち出せなかった。中国・人民元の上昇に期待を表明しただけにとどまった。

背景には、日米欧の思惑の違いがある。企業の競争力回復を目指す米国は「強いドル政策」を掲げながらも、緩やかなドル安を容認したいというのが本音だ。

一方、内需が弱い日本と欧州は、急激な円高、ユーロ高は輸出企業の収益悪化を招くため、ドル安是正を望んでいる。新味のない声明は、妥協の産物だろう。

焦点は、為替相場がさらに乱高下した場合の対応策だ。ドルが急落すれば、米国経済に依存する国々の景気回復に打撃となる。その際、有効な国際協調策が実施されるかどうかが注目される。

G7声明は、世界経済に関しては「回復の兆しがある」としながら、「なお脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘した。この認識も、金融サミットの声明を追認したに過ぎない。

G7の機能強化と改革が必要なことは明らかだ。

産経新聞 2009年10月05日

G7 G4論前に重責認識せよ

イスタンブールで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、世界的なドル安傾向への警戒を表明し、「為替相場の過度な変動は経済や金融の安定に悪影響を与える」との声明を採択して閉幕した。

ここにきての急速なドル安は、持ち直しの兆しもうかがえる世界経済の腰折れが懸念される。1ドル=90円を突破した円高は、藤井裕久財務相の慎重さを欠いた発言にも原因がある。これは、日本にとっても企業の輸出採算を悪化させ、景気に冷水を浴びせかねない。為替安定は喫緊の課題であり、為替市場の安定で協調を確認したことを評価したい。

今回のG7はまた、世界経済の議論の枠組みとしての存在意義が問われた会合でもあった。象徴的なのは、G7に代わる枠組みとして、米国、欧州連合(EU)、日本、中国の「G4」とする案が米国から提案されたことだ。

米国発の金融危機を背景に、新興国を加えた主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)がスタートし、いまや世界経済問題を定期的に協議する「第一の枠組み」に引き上げられたことが背景にある。実勢より低い水準に維持されている人民元相場の是正なども、中国を取り込んだG4の方が議論しやすくなるとの思惑が米国にはありそうだ。

今回会合は、実質3時間しか議論の時間がなかった。国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事は「G7は中身がない」と皮肉ったが、形骸(けいがい)化が指摘されているのは事実だ。

結果的にG4論は、欧州勢を中心に強い慎重論が出され、会議筋は「G4の議論はしなかった」と語った。G4論は外される国の政治的な思惑が絡む。

G7の世界経済における役割についても、使命を終えたと考えるのは早計ではないか。G7にはマクロ経済政策についての豊富な経験がある。日銀の白川方明総裁が指摘するように「主要な金融市場を持つ国が多い」G7の方が実効性のある議論ができるメリットもある。市場の混乱や金融システム不安の緊急時には一致して素早く対応できるのはG7だ。

また、G7は自由主義経済の価値観を共有しているからこそ率直で忌憚(きたん)のない話し合いもできる場だ。そうした役割を深化させ、世界経済に対して背負っている責任をもっと自覚すべきだ。

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