予想よりマイナス成長の幅は小さかったとはいえ、景気の先行きに対する不安はぬぐえない。
昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)が発表され、前期比年率で1・1%減となった。昨年後半に景気回復が足踏みしたことを、数字が裏付けた。
今年に入って、消費や生産は持ち直しつつあるようだ。このため、民間調査機関の多くは、1~3月期は緩やかなプラス成長を回復すると見ている。
だが、懸念材料は少なくない。政府・日銀は、金融緩和を維持するなど成長優先の政策運営を続け、景気をしっかりと回復軌道に乗せることが肝要だ。
10~12月期は、内需が5四半期ぶりにマイナスを記録した。エコカー補助金の打ち切りで自動車販売が急減するなど、消費が一時的に落ち込んだためだ。
ただ、12月の家電エコポイントの縮小を前に、薄型テレビなどに対する駆け込み需要が起き、自動車販売の不振を補った。
外需も、円高や海外経済の減速でマイナスになったが、米国やアジア向けの輸出は底堅かった。
この結果、2010年の1年間のGDPは、実質、名目ともに3年ぶりにプラスに転じた。
2008年秋のリーマン・ショック以降の深刻な不況からの脱出が改めて確認された形である。
今後の景気動向については、予断を許さない。原油や小麦など、世界的な資源や穀物の高騰で、原材料の価格は上昇を続け、企業の収益を圧迫し始めている。失業率も高止まりしたままで、雇用は依然として厳しい。
こうした情勢の中、景気下支えに必要な2011年度予算案と関連法案は、国会審議が難航している。子ども手当などのバラマキ政策を見直したうえで、早期成立を図るべきだ。
今回の発表で、10年の名目GDPは、中国が日本を追い抜いたことが確定した。
日本は1968年に、当時の西ドイツを抜いて米国に次ぐ経済大国となった。その地位を42年間守り続けたが、ついに世界2位の座を明け渡した。
中国経済の急成長は、巨大な市場が生まれることを意味し、日本経済にとってもプラス材料だ。
それにしても、日本の経済規模が約20年前と同水準というのは情けない。やみくもに規模拡大を目指す必要はないが、一定の豊かさを維持するため、成長戦略を着実に進める必要がある。
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