小沢元代表の処分 一刻も早く決着つけよ

朝日新聞 2011年07月23日

民主党謝罪 代表選へ論戦を始めよ

とっくの昔に、謝るべきだった。どうしてここまで時間がかかるのか。

菅直人首相や政権幹部らが、民主党のマニフェスト(政権公約)について謝罪した。

首相は「財源などの見通しがやや甘かった」と反省し、「不十分な点があったことを、国民のみなさんにおわび申し上げたい」と語った。

政権交代から、はや2年になる。2度も予算を編成すれば、無駄の根絶などで16兆8千億円をひねり出すという公約が、いかに現実離れしていたかに、気づかないはずがない。

なのに野党に尻をたたかれ、夏を迎えても赤字国債の発行を認めてもらえず、立ち往生してから謝る。いかにも遅い。

公約のすべてが間違っているわけではない。子どもを重視する方針をはじめ、大切にすべき主張はたくさんある。

問題の根っこにあるのはむしろ、公約に向き合う姿勢ではなかったか。「政権に就いたら実現させる目標」というよりも、「政権をとるための道具」のように思っているから、じっくり練り上げる作業を怠る。財源を軽んじ、あれもこれも並べる。

子ども重視を貫くには、今の子ども手当の形で良いのか、代わりに何を削るのか。公約の見直しとは、本当に大切なもの、めざすべきものを見極め、選び取る厳しい作業なのだ。

公約不履行をわびた民主党は、その見直しを急がねばならない。だが、まもなく交代する執行部にやりきれる仕事ではない。いまの公約堅持を訴える人が次の代表に選ばれたら元のもくあみになりかねない。

逆にいえば、代表選で議論を重ねて、見直しを掲げる候補が勝てば、党内合意を確立したことになる。バラバラな党内を固める好機になりうる。

それなら、菅首相が辞任の時期を明示するのを、のんびり待っているわけにはいかない。代表選に向けた議論を、すぐに始めてはどうか。

「我こそは」と思う者は名乗りを上げる。公約の見直しはもちろん、震災からの復興と日本の針路、エネルギーの将来像も含めて政策と路線をはっきり示す。政権の枠組みや、野党との連携の道筋も提示する。

そんな論戦を始めればいい。

ほかの政党も口を挟んだらどうか。だれが代表なら手を組めるのか。その条件は何か。これまでのように、菅首相が悪いから協力できないというばかりでは不毛だ。

「菅おろし」に時間と力を使うより、前向きな論議を望む。

毎日新聞 2012年01月23日

自民党大会 解散を求めるだけでは

間もなく始まる通常国会は、やはり与野党対決一色になってしまうのだろうか。22日の自民党大会で、谷垣禎一総裁は「今年こそ政治決戦の年だ。一刻も早く衆院解散・総選挙に追い込んで、政権を奪還しなければならない」と力説した。

09年の衆院選で敗北し、野党に転落して以来、3回目の党大会。確かに政権が行きづまれば別の党が担えばよい。だが、政権を選択するのはあくまで有権者だ。ひたすら解散だけを求める姿勢で国民の信頼を回復できるだろうか。はなはだ疑問だ。

改めて、分かりにくさを指摘したいのは税と社会保障の一体改革への対応だ。自民党は10年の参院選で消費税率を10%に引き上げる公約をいち早く掲げた。このままでは社会保障制度を維持できないという問題意識は共有しているということだ。ところが、民主党が呼びかけている与野党協議は拒否している。

谷垣氏らは「法案提出前に与野党で協議するのは密室談合だ」と批判する。しかし、昨年は大震災の復旧・復興策などに関し、民主、自民、公明の3党協議が行われ、一定の合意を図ってきた。かつて自公政権時代には自民党が呼びかけて社会保障に関する衆参両院の合同会議が設置されたこともある。3党のみならず各党が参加して議論をオープンにするなど方法はいくらでもある。

自民党は、政府が消費増税法案などを閣議決定し、国会に提出した場合には堂々と議論するとも言っている。それが本道ではあろうが、徹底議論して、修正・合意を目指すとは言っていない。

谷垣氏は党大会で「今問われるべきことは『なぜ協力しないのか』ではない。『国民との約束を破った民主党は信を問い直せ』ということだ」と反論した。ならば、自民党が政権に復帰した場合、どうこの問題を解決していくのか、せめてもっと具体的に語るべきである。

増税先行の政府・民主党と同様、自民党も年金や医療など肝心の社会保障政策をどうしていくのか、具体案作りは進んでいない。自民党内にはこれも民主党と同じように消費増税に反対する声がある。これでは民主党とどう違うのか、総選挙になっても有権者は戸惑うばかりだ。

それだけではない。増税と並ぶ大きな政治テーマの環太平洋パートナーシップ協定(TPP)も賛成なのか、反対なのか。党内亀裂を恐れるのか、明確な方針を示していない。

21日の全国幹事長会議などでは「国民のために何をするか明確にすべきだ」「政権復帰した時を考えて、発言してもらいたい」といった手厳しい意見が地方側から出た。謙虚に耳を傾けるべきではないか。

読売新聞 2012年01月23日

自民党大会 政権復帰の準備は不十分だ

日本の将来を決定する重要課題に、本気で取り組む意欲が欠けていないか。自民党が政策論議を避けるようでは、政権復帰の道は遠い。

自民党が定期党大会を開いた。運動方針は、「日本の存亡を懸けた政治決戦の年である」として、民主党政権を早期の衆院解散・総選挙に追い込み、政権を奪還する決意を示した。

谷垣総裁も「取り返しのつかない国家危機に陥る。へたをすれば国家破綻も覚悟しなければならない」と強調した。

だが、そう言うなら、社会保障と税の一体改革に、政府・与党とともに取り組むべきだろう。

谷垣氏は、与党との協議に応じない理由として、民主党の政権公約(マニフェスト)に「消費税率を上げることはどこにも書いてない」と、改めて指摘した。

自民党は、民主党が破綻した公約に執着することを批判してきた。民主党が歩み寄り、政策を転換したにもかかわらず、話し合おうともしないのは、あまりに大人げないではないか。

谷垣氏は昨年、当時の菅首相に消費税率引き上げの具体案取りまとめを促し、「我が党の議論までぜひ追いついていただきたい」と挑発した。その後、民主党は党内論議を経て2015年10月には10%に引き上げる案を決めた。

今や自民党の方が周回遅れだと言える。一昨年の参院選の公約で掲げた「消費税10%」について、引き上げ時期や、低所得者対策などの対案を示すべきだ。

党内や地方には「党利党略を言っている場合か」と執行部批判もある。消費税率引き上げ関連法案を成立させて、衆院選に臨む方が、自民党にとって得策だろう。

環太平洋経済連携協定(TPP)をどう考えるかも不明だ。運動方針は、政府に「情報開示を求める」としているだけである。党内に対立のある政治課題から逃げるのは無責任と言えよう。

エネルギーの確実な供給体制の構築は「重要な政治課題」とする一方、中長期的な原子力発電所の位置づけについては、「責任ある政策を早急に打ち出す」とするにとどまっている。

原発政策を長年推し進めてきた自民党として、事故の反省を踏まえたエネルギー戦略を策定し、政府・与党に提言すべきだ。

自民党は政権復帰してから重要な政策の議論を始めるつもりなのか。野党時代の今こそ、十分に議論する必要がある。民主党政権の失敗を繰り返してはならない。

産経新聞 2011年01月14日

民主党大会 「最強態勢」画餅にするな

菅直人首相は民主党定期大会で、14日の内閣改造や党人事について「日本の改革を推し進める最強の態勢にする」と強調した。

その決意は尊重したいが、主要政策をどうするかがまったく不透明な政党では画餅に終わるだけだろう。

消費税増税や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加問題をめぐり、小沢一郎元代表のグループを中心に慎重論が打ち出されている。政権公約(マニフェスト)に盛り込まれていないことなどを理由としているが、菅首相が指導力を発揮すべきは主要政策への合意作りである。

ところが、首相は消費税増税を含む税制と社会保障の一体改革をめぐる与野党協議について「野党が積極的に参加しないなら、そのこと自体が歴史への反逆行為だ」と述べた。野党を牽制(けんせい)している場合ではないだろう。

参院選で自ら消費税増税を提起しながら、批判を受けて発言がぶれたことが、政策面の信頼性を損なった。小沢氏らに攻撃材料も与えた。税率や税収の使途など、菅内閣としての基本的立場を早急に示さねばならない。

12日の両院議員総会で首相や執行部批判が相次いだように、昨年9月の党代表選を首相と争った小沢氏のグループと首相を支持する勢力との厳しい対立状況は深刻化する一方だ。

米軍普天間飛行場の移設問題でも、小沢氏や鳩山由紀夫前首相に近い議員が県外移設論を唱えるなど、日米合意に基づく辺野古移設案で党内はまとまっていない。政権与党でありながら、主要政策に関する統一的な見解も出せないようでは致命的な欠陥といえる。

一方、大会では党の現状を是正する動きも出始めた。マニフェストの見直しを夏までに行う方針を岡田克也幹事長が打ち出し、了承された。

これまでなかった党綱領も策定する。遅まきながら政党としての基本政策や理念を持とうというわけだが、責任政党といえる国益を踏まえた内容にしてほしい。

問責決議を可決された仙谷由人官房長官は、「自衛隊は暴力装置」など、数々の暴言を吐いてきた。更迭は遅きに失したが、政権運営の屋台骨であったことも間違いない。改造以降、内閣の求心力を強め、最強の布陣にするかどうかは首相の力量次第である。

朝日新聞 2011年02月11日

小沢氏処分 菅首相の覚悟ひとつだ

自分ではけじめをつけないというのなら、党としてきっちりとけじめをつけさせる必要がある。菅直人首相と民主党執行部の覚悟が問われる。

民主党の小沢一郎元代表の政治資金問題をめぐり、首相と小沢氏がきのう、2度目の会談をした。

小沢氏の強制起訴を受け、首相は裁判が終わるまでの間、自発的な離党を求めたが、小沢氏は拒否した。衆院政治倫理審査会への出席要請にも、消極的な姿勢を変えなかった。

この間、小沢氏が挙げてきた理由には首をかしげざるを得ない。

まず、市民の代表で構成する検察審査会による強制起訴は、有罪率の極めて高い検察による起訴とは「本質的に違う」という理屈だ。

もとより両者の法的効果は全く同じである。推定無罪の原則も、等しく適用される。

これまで逮捕・起訴された政治家の多くが、有罪確定の前に離党や議員辞職といったけじめをつけてきたのは、法的な責任とは異なる政治的、道義的な重い責任を自覚してのことだろう。

小沢氏はまた、事実関係は裁判で明らかになると繰り返し主張している。しかし、司法の場での真相解明と、国会議員として説明責任を果たすことは全く別物である。

小沢氏はきのうの記者会見で、自身の離党や党の処分は「健全な政党政治と民主主義の発展にとって妥当ではない」とまで強弁した。1年以上にわたり、国会での説明を拒み続けてきた小沢氏の不誠実な態度こそが、国民の政治不信を高めているのではないのか。

民主党の岡田克也幹事長は週明けに、小沢氏の処分を提案するという。早急に結論を出さなければいけない。

いま検討されている処分は、最も軽い党員資格の停止が軸のようだ。そもそも自発的な離党を求めたのだから、最低でも離党勧告が筋ではないか。

首相は年頭会見で「今年を政治とカネの問題にけじめをつける年にしたい」と言い切った。小沢氏には「出処進退を明らかにすべきだ」と、議員辞職も含めたけじめを求めたのではなかったか。腰が引けた印象は否めない。

処分を軽くする背景に、ねじれ国会の下で予算関連法案を衆院で再可決するには、小沢氏や小沢氏を支持する議員らの「造反」を避けたいという思惑があると指摘されている。とするなら本末転倒の発想と言わざるを得ない。

首相は年頭会見で、政治とカネの問題に対する国民の不信を放置したままでは、国民に痛みを分かち合ってもらう改革は進められないと語った。その認識は全く正しい。

税と社会保障の一体改革や「平成の開国」など、困難な政策課題に臨む前提として、首相の「有言実行」が真に試される局面だ。

毎日新聞 2011年02月18日

民主党内紛 会派離脱は筋が通らぬ

普天間問題に関する鳩山由紀夫前首相の「抑止力は方便」発言に続いて、またもや民主党内であぜんとさせられる騒ぎが起きた。同党の小沢一郎元代表に近い比例代表選出衆院議員16人が、衆院会派の離脱届を提出した内紛である。

確かに今回の分派行動は菅直人首相にとって大きな打撃となり、政権の行き詰まり状況を表すものだろう。しかし、こうした内部抗争が続けば続くほど、民主党そのものへの国民の不信は増幅していくだけだ。まず、それを指摘しておく。

そもそも、「院内会派は離脱して新会派を作るが、離党しない」という今回の16人の行動は奇策どころか禁じ手といっていい。

会派は委員会の議席数や質問時間配分などを決める国会内の構成単位であり、ある党が無所属議員とともに会派を作ったり、複数の党が統一会派を作るのは通常あることだ。だが、基となるのは、あくまで政党である。同じ政党が複数の会派に分かれ、首相指名や重要法案の賛否で判断が分かれるというのでは、政党政治、あるいは議院内閣制の根幹を揺るがす事態にさえなる。

会派を離脱するためには、会派の代表者が議長に離脱届を出す、つまり党側が判断する手続きが必要となっているのはそのためだ。岡田克也幹事長が今回、離脱を認めない考えを表明したのは当然である。

16人は発表した「宣言」で、「菅政権は国民との約束、マニフェストを捨てた」などと激しく批判する一方、記者会見では「離党したら何の意味もない」とも語った。民主党はマニフェストの原点に返るべきだというのだろう。

ならば、その実現に努力すればいいのであって、自分たちの主張が通らないから会派を離脱し、国会で別行動を取って揺さぶるというのでは国民の理解は得られまい。離党した方がよほど筋が通るというものだ。

もちろん、新年度予算案や予算関連法案の早期成立を図るための行動でもないのだろう。自民党など野党はマニフェストの大幅修正や撤回を求めており、マニフェスト回帰路線は国会運営をスムーズに進めることにつながらないのは明らかだからだ。

結局、小沢元代表に対し党員資格停止処分の手続きを執行部が進めている点が大きな不満であり、処分の見直しをはじめ、党の主導権を確保するため、菅首相の退陣を狙っていると見られても仕方がない。

首相や岡田氏も放置しているだけでは済まない。分派行動には厳しい処分で臨まざるを得ないだろう。党内をまとめられない首相に野党との協議など夢のまた夢だ。もはや党分裂も覚悟して臨むほかあるまい。

読売新聞 2012年01月17日

民主党大会 首相は「負担増」の説得尽くせ

内閣支持率の低下、民主党内の不協和音、与野党協議の停滞――。野田政権を取り巻く環境は、厳しさを増している。

もはや「安全運転」を続けている余裕はない。内閣の命運がかかっている社会保障と税の一体改革の実現に向けて、反転攻勢を図る必要がある。

野田首相は、民主党大会であいさつし、一体改革について「やりきることなくして日本と国民の将来はない」と強調した。

「やるべきことはやり抜いて民意を問うことを、はっきり宣言する」と述べ、消費税率引き上げ関連法案が成立した後の衆院解散・総選挙にまで言及した。

民主党内では依然、小沢一郎元代表の支持グループを中心に、消費税率引き上げへの反対・慎重論がくすぶっている。

だが、昨秋の党代表選や年明けの一体改革の素案決定で、増税の方針は明確に確認されている。全国幹事長会議で地方代表が批判したように、与党の国会議員が政府方針と異なる発言をするのは、極めて無責任である。

野田首相は、「党内融和」に配慮するよりも、一体改革案の具体化や与野党協議の環境整備に自ら指導力を発揮せねばならない。

党大会で採択した2012年度活動方針は、政権公約(マニフェスト)について「実現に向けてできうる限りの取り組みを進める」としている。これは疑問だ。

民主党は、財源不足で既に破綻したマニフェストを実行するとごまかしを重ねても仕方がない。野党時代に作成したマニフェストに無理があったと謝罪したうえ、一体改革を進めることが大切だ。

昨夏の中間検証は、マニフェスト作成時に「検討・検証が不十分だった」との総括にとどまった。より踏み込んだ総括が必要だ。

先週末の読売新聞世論調査では内閣支持率が前月比5ポイント減の37%に続落した。内閣改造による政権浮揚効果はなかった。消費税率引き上げについては、反対が55%で賛成の39%を上回った。

重視すべきは、首相が政策や考えを十分説明していないとの回答が85%に上っていることだ。

首相は、一体改革に「政治生命をかける」と明言する以上、国民に負担増を求めざるを得ないことを率直に訴え、説得を尽くすべきだ。当然、行政改革を徹底し、議員の歳費や定数の削減など「自らの身を切る」努力も欠かせない。

その具体策をまとめることが、自民、公明両党が拒む与野党協議を進める契機ともなろう。

産経新聞 2011年01月13日

民主党 やはり「田舎芝居」なのか

へたな芝居を「田舎芝居」と評するが、民主党の小沢一郎元代表を政治倫理審査会に出席させる党内の動きは、そんな言葉を彷彿(ほうふつ)させる。

国会招致に応じるポーズだけを示す小沢氏に対し、菅直人首相らは傍観しているように見える。首相が年頭会見で「不条理を正す」と強調した意気込みは、いったいどこに消えてしまったのか。

小沢氏は11日、衆院政倫審幹事を務める川内博史氏を通じて「通常国会開会後なら出席に応じる」との意向を土肥隆一政倫審会長に伝えた。しかし、土肥会長が正式な書面を12日に提出するよう求めたのに対して、「14日まででいいだろう」と拒んだ。

小沢氏は昨年暮れに会見し、それまでの政倫審出席を拒む姿勢を一転させた。だが、自らの出席で国会運営が円滑に行われることを前提に置き、国会の召集直後か予算案成立後と時期を指定した。

条件付きの姿勢に批判が出ると、小沢氏は「条件を付けるつもりはない」と周囲に語ったが、結局は国会召集後を指定して出席を申し出たわけだ。

通常国会は当初、28日の召集が予定されていたが、24日に前倒しする調整が行われている。一方で、検察審査会は今月中に小沢氏を強制起訴する手続きを進めている。そうなれば小沢氏が公判準備などを理由に再び政倫審出席を拒むことも予想され、政倫審は開催されるかどうかわからない。

党執行部は25日の政倫審開催を前提に、野党側と協議に入るとしているが、強制起訴の動き次第で確たる見通しは立っていない。

12日の民主党両院議員総会では、小沢氏に近い議員から国会招致問題について「味方を野党に売り渡すのか」といった反発の声も出された。だが、首相は「小沢氏自身が政倫審に出ると言っている」とかわし、政倫審開催によって「一つの形が動いていける」などと、事態が前進するかのような認識を示した。

そもそも、偽証罪を伴う証人喚問でなければ、疑惑解明は困難である。喚問の実現に取り組もうとしない首相や岡田克也幹事長は情けない。

党大会乗り切りや内閣改造にメドがついたと判断して、「政治とカネ」の問題に「知らん顔」を決め込むなら、だれも首相の言葉を信じない。

毎日新聞 2011年02月15日

党員資格停止 これでは納得できない

菅直人首相自身、とても胸を張れる結論ではあるまい。政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表に対する処分問題で、同党は最も軽い党員資格停止とすることで、手続きに入った。

「原則最長6カ月」とされる処分期間を裁判の判決確定までとした点は、「けじめ」をある程度意識したと言える。だが、元代表が国会での説明に応じず政治を停滞させた責任などに照らせば最低限、離党勧告処分が筋だ。党内対立の激化をおそれた妥協と言わざるを得ない。

今回の方針について、岡田克也幹事長は過去の処分との一貫性を重視したと説明する。役員会が処分を了承したのも「法にもとづき国会議員本人が起訴された事実は重い」ためだ。だとすればなぜ除名、離党勧告に踏み込まないのか、疑問である。

確かに党員資格停止処分を受けると小選挙区の総支部長などの役職や会議出席停止など、権限は制約される。それでも、党所属議員としての地位が保たれる以上、元代表の党内での発言力は維持される。これが「けじめ」と映るだろうか。

最も問われるのは首相の言動との整合性だ。首相は年頭の記者会見で「不条理をただす政治」を掲げ、あえて元代表の出処進退に言及した。加えて自らが元代表に裁判終了までの離党を促し、拒否された。

ところが、すぐさま岡田氏に処分を委ね、結局は党としての離党勧告は見送った。元代表が説得を拒むことを見越し、あらかじめ落としどころを想定しての直談判だったとすれば、自らの努力の演出だけが目的だったとの、そしりを免れまい。

元代表に厳しい処分を促す党内の声はこのところ、トーンダウンしている。「ねじれ国会」で予算関連法案成立の頼みとした公明党の同調を得ることは難しい。衆院での3分の2以上の多数による再可決で乗り切りを探る意見が党内に強まっている。その際、社民党の協力だけでなく、党所属議員の造反が起きないことが最低条件となるためだ。

党内対立の激化を避けるうえでも、ここで元代表を追い込むのは得策ではない、という計算が首相らに働いたのではないか。一方で、元代表に近い勢力も、ある程度の処分はやむを得ないという判断に傾いたとすれば、まさに党内力学ゆえの妥協である。政治倫理も政治状況次第というのでは、問題だ。

党は15日の常任幹事会で処分について議論する。元代表側からは今回の方針への反発もなお予想される。納得いかない方針だが、決めた以上は速やかに手続きを進めるべきだ。証人喚問を含め元代表の国会招致も、早急に結論を出すべきである。

読売新聞 2011年12月22日

民主党規約 政権党らしいルールに改めよ

民主党が、代表選などに関する党規約の改正案をまとめた。

2年余の与党経験で、党のルールの不備が身にしみてきたのだろう。1月の党大会で正式決定する。

政権交代後初となる改正案の柱の一つが、在日外国人にも認めていた党員資格を日本国民に限定したことである。

民主党が与党であれば、代表選は事実上「首相を選ぶ選挙」だ。外国人の党員に投票を認めていたことは極めて不適切だった。

党活動を支援するサポーターについても、代表選の投票権を持つのは日本人だけとした。サポーターの国籍は問わないという。年2000円の会費も徴収する。

外国人、外国の団体から、党の政策や運営が影響を受けることがあってはなるまい。党運営と外国人との関係については、明確に整理しておく必要がある。

民主党の「国籍」に対するけじめのなさは、永住外国人への地方選挙権付与への積極姿勢に表れている。鳩山元首相は先月、在日本大韓民国民団の会合で、実現になお努力する考えを示した。

だが、1995年の最高裁判決は、憲法15条の公務員を任免する権利は「国民」にあるとしている。外国人に首長や地方議員の選挙権を与えることには、憲法上の疑念が拭えない。永住外国人への地方選挙権付与は再考すべきだ。

改正案は、代表の任期を1年延ばし、3年間とすることも明記した。来年9月に予定される代表選以降、これが適用される。途中退任の場合、後継代表は前任者の残余任期にかかわりなく「3年目の9月まで」務めることになる。

任期が長くなることにより、代表選を頻繁に実施することは避けられそうだ。合意形成に時間のかかる、より困難な政策にも腰を据えて取り組めるようになろう。

政策決定に関しては、現行規約の内容は不十分である。

鳩山、菅両政権は、政策決定のあり方を巡って混乱した。野田政権は、その反省から政策決定の内閣への一元化を改め、「政府・民主三役会議」を新設した。

政策をどう決めるかは、政権運営の根幹にも関わる。その原則は規約に明記すべきではないか。

長年の懸案である綱領の策定について、輿石幹事長は「きちんとしたものを作るには時間が必要だ」と先送りした。党内対立を警戒していると見られる。

だが、綱領がないままでは政策の基本路線が定まらず、政党として不完全と言わざるを得ない。

毎日新聞 2011年02月11日

小沢元代表の処分 一刻も早く決着つけよ

「私たちもこの問題には終止符を打ちたいのだが」--。通常国会が始まって以来、野党側が、政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表の国会招致問題などを追及する際、こう前置きするのが定番になっている。元代表の国会招致や民主党の処分問題が一向に決着せず、国会が前に進まない要因になっていることに多くの国民がもはやうんざりしているのを野党も承知しているからだろう。

そうした中、菅直人首相は10日、小沢元代表と会談し、元代表自身の裁判が終わるまで自発的に離党するよう求めた。だが、小沢元代表は拒否し、会談は平行線をたどった。

岡田克也幹事長ら執行部は週明け以降、元代表に対する処分を決定する意向で、離党勧告などよりも軽い党員資格停止処分も検討されているという。党内の元代表を支持するグループはいずれの処分にも反対しているが、小沢元代表も「党が判断することだ」と語っている。党の亀裂を恐れず、一刻も早く決着を図るべきである。

小沢元代表は首相との会談後、フリー記者らによる会見で検察審査会の議決によって強制起訴された点について「審査会は秘密のベールに包まれ、どういう判断基準か分からない」と反論したうえで、「(検察による起訴とは)本質的に違う」との考えを改めて示した。

無論、刑事裁判は「無罪推定」が大原則だ。しかし、今回も刑事手続き上は同じ起訴であり、軽んじるのは疑問だ。そして再三指摘してきたように元代表の政治責任は別の話だ。特にこれまで一度も国会で説明してこなかった責任は大きい。

この日も元代表は「裁判という公開の席で事実関係は明らかにされる。同時並行的に立法府で(真相究明を)するのは三権分立、基本的人権の理念のうえからもいかがなものか」と否定的だった。ならば、なぜ、強制起訴される前に、何度も機会があったにもかかわらず国会に出席しなかったのか。「不正はない」「どんな場でも包み隠さず話す」と言いながら、明らかに矛盾した行動である。党の要請に従わず、国会での説明をしてこなかった点だけを考えても処分は免れないというべきだ。

首相は年頭の会見で「強制起訴された時には、政治家として出処進退を明らかにすべきだ」と踏み込みながら、この日に至るまで手をこまねいてきた。党執行部も野党側の証人喚問要求に対し、社民党や国民新党が消極的だとの理由で拒んでいる。民主党としてどう対応するつもりなのか腰が据わらない。国会を政策論争に専念できる場とするためにも、早急に自浄能力を示すべき時だ。

読売新聞 2011年02月16日

民主党処分 親小沢勢力の反対は筋違いだ

党内事情に配慮した、甘い処分案だと言わざるを得ない。

政治資金規正法違反で強制起訴された小沢一郎元代表の処分について、民主党は常任幹事会で、裁判の判決が確定するまで党員資格停止とすることを多数決で了承した。

党倫理委員会に諮問し、その答申を受けて、正式決定する。

党員資格停止になると、党の役職に就けなくなる。選挙区支部長の資格も停止され、党の活動費をもらえなくなる。

ただ、処分としては、除籍、離党勧告に次ぐもので、最も軽い。各種世論調査では、小沢氏は議員を辞職すべきだ、との意見が過半数を占めており、多くの国民の認識との乖離(かいり)は大きい。

民主党執行部が重い処分を避けるのは、小沢氏の処分に反対する党内の親小沢勢力との対立を激化させたくないためのようだ。

小沢氏に近い議員は、予算関連法案採決時の造反をほのめかしている。鳩山前首相も、「党内でいじめのようなことが起きている」などと執行部を批判した。

しかし、小沢氏の強制起訴や説明責任の回避、元秘書3人の起訴などを踏まえれば、政党としてけじめをつけるのは当然だ。親小沢勢力の主張は筋違いである。

小沢氏らは、検察審査会の議決に基づく強制起訴を「密室の決定」などと批判する。だが、この制度を導入した2004年の改正検察審査会法に民主党が賛成したことを忘れてはなるまい。

そもそも、民主党は今、党内抗争をしている場合なのか。

衆参ねじれ国会の下で、予算関連法案や重要法案が成立せず、政治が停滞する事態が懸念されている。民主党は結束し、野党との協議を通じて現状を打開することに全力を挙げるべき時だ。

それなのに、親小沢勢力が権力闘争にうつつを抜かしているのは、政権党の議員としての危機感と責任感が欠如していると言うほかない。こんな状態が続けば、ますます国民から見放されよう。

民主党が処分を決定しても、小沢氏の国会招致問題について免責されることにはならない。

民主党は、野党の求める小沢氏の証人喚問について「起訴された国会議員が証人喚問された例はほとんどない」と拒否している。

国会招致を先送りし続け、小沢氏の説明が実現しないまま強制起訴されたのは、民主党の責任だ。やるべきことをやらずに、今さら起訴を理由に証人喚問に反対するのはご都合主義である。

読売新聞 2011年02月11日

菅・小沢会談 首相は早期に処分を決断せよ

党首の直接の説得にも応じない以上、政党として何らかの処分を行うのは当然だろう。

菅首相が、政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表と会談し、公判中は離党するよう促した。衆院政治倫理審査会に出席することも重ねて求めた。

小沢氏は、「自発的に離党する意思はない」と明言したうえ、当面は政倫審にも出席しない考えを示し、首相の要請を拒否した。

民主党は14日の役員会で小沢氏の処分内容を検討する。小沢氏の裁判が終了するまでの間、党員資格を停止する案が有力という。

最も重要なのは、この問題を早期に決着させることだ。

小沢氏の処分には、党内で小沢氏を支持するグループが反対している。処分を決めれば、党内対立が深刻化する恐れもある。

だが、それを恐れて処分を先送りすれば、民主党の自浄能力の欠如が一層浮き彫りになる。民主党への国民の不信感も強まろう。

政府・与党は今、社会保障と税の一体改革、環太平洋経済連携協定(TPP)など、多くの重要な政策課題に直面している。これ以上、小沢問題に精力を割いている余裕はないはずだ。

小沢氏は、「強制起訴は、通常の検察による起訴と違うため、無罪推定の原則がより強く働く」などとする論法を盾に、自発的な離党を拒否している。

しかし、有罪か無罪かの司法判断が出るまでの間、政党が一定の処分を行い、政治的なけじめをつけることまでは否定できまい。

小沢氏の国会招致問題も、早急に決着を図る必要がある。

小沢氏は昨年末、政倫審出席をいったん表明しながら、「予算の成立が一番大事」などと身勝手な理屈で出席を拒んできた。

「公判はすべて公開の場だ。その場で事実関係が明らかになる」と、国会での説明よりも公判を優先する考えも強調した。

これはおかしい。政治家は、刑事上の責任に加え、国民に説明する政治的な責任も負っている。

菅首相は当初、通常国会前の政倫審開催を目指していたのに、小沢氏の一方的な先送りに対し、有効な手を打てないでいる。これでは「有言実行」とは言えない。

首相が「国会での説明が必要」と本気で考えるなら、政倫審でなく、法的拘束力のある証人喚問に同意すればいい。小沢氏に近い国民新党の反対などを理由に「証人喚問の環境が整っていない」と言うのは、逃げでしかない。

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