52年ぶりに火山活動が活発化した霧島連山の新燃岳が、爆発的な噴火を繰り返している。
爆発的な噴火が続いて起きた1日には、火口の溶岩ドームが一部壊れ、噴煙が上空約2000メートルに達した。
噴火の衝撃で空気が揺れる空振が麓の鹿児島県霧島市などで観測され、窓ガラスが割れる被害が相次いだ。同市内の病院では、散乱した破片で女性がけがをした。
今のところ、こうした激しい噴火活動が静まる見通しは立っていない。政府と鹿児島、宮崎両県、周辺の市や町は被害の防止に万全を期してほしい。
最も心配されるのが噴石、そして火砕流の被害だ。火口から4キロ離れた場所で、直径50センチの噴石が確認された。3キロ離れた山林には、噴石の直撃で直径5メートル、深さ2メートル以上の大穴ができた。
岩石などが高温の火山ガスとともに斜面を下り落ちる火砕流も、いつ発生するか分からない。
大量の降灰も続く。長い間吸い込むと、呼吸器官などに健康被害が出る恐れがある。
現在、火砕流の警戒範囲は3キロに、入山規制は4キロに設定されている。今後の状況変化に応じ、住民の避難範囲を拡大するなど、機敏かつ柔軟な対応が必要だ。
新燃岳は、江戸時代の1716年から翌年にかけ、大規模噴火を繰り返したと記録されている。
今回の噴火でも、観測の結果、地下深くから大量のマグマが上昇していると推定されている。300年前と同様、何か月にもわたって大規模な噴火が起きる恐れもあるという。
財源難で近年、各地の火山活動の監視は手薄になっている。新燃岳もデータの蓄積が十分とは言えない状況だ。新たな観測装置を追加するなど、監視態勢の充実も急がなければならない。
鹿児島、宮崎両県では、農地への降灰で、収穫前のキャベツや白菜などの作物に被害が出ている。空の便に欠航が相次ぎ、温泉地の予約のキャンセルが増えるなど、経済的な損失も膨らんでいる。
宮崎県は昨年、口蹄疫の流行で牛、豚農家が壊滅的な被害を受けた。いまだに本格的な事業再開には至っていない。先月には、鳥インフルエンザが、同県と鹿児島県の養鶏業者に打撃を与えた。
災厄が次々、この地域を襲っている。住民は将来への不安を募らせている。
政府には、住民生活や経済活動への影響を最小限に抑えるよう、きめ細かな支援が求められる。
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