衆院予算委質疑 「熟議」の助走にはなった

毎日新聞 2011年02月02日

衆院予算委質疑 「熟議」の助走にはなった

やっと、論戦に弾みがついてきた。衆院予算委員会は1日、野党・自民党による質問が行われた。

石原伸晃幹事長や石破茂政調会長が揚げ足取りではなく、菅内閣の基本姿勢をただした点は評価できる。国会を空転させ、政治不在を印象づけるような愚を与野党は演じてはならない。予算案の内容や税制・社会保障のあり方について、主張の説得力を大いに競うべきである。

質疑でまず、問われたのは小沢一郎・民主党元代表が政治資金規正法違反で強制起訴された事態に伴う、菅直人首相の対応だ。

石原、石破両氏は小沢元代表をめぐる「政治とカネ」の問題に終止符を打ち、国政の停滞を回避すべきだ、との観点から証人喚問実現に首相の指導力発揮を求めた。首相は小沢元代表の国会での説明は必要としながらも、自らが党内調整に乗り出すことには慎重な言い回しに終始した。

年頭の記者会見で「不条理をただす政治」を掲げ、小沢元代表が起訴された場合の出処進退に言及した首相にしては、何とも踏み込み不足だ。国会招致という最低限のけじめに手をこまねいていては「熟議の国会」実現の決意が問われよう。

予算案では焦点の「子ども手当」の是非が論じられた。自民党側が「バラマキ政策」として中止を求めたのに対し、首相は制度について少子化対策としての意義を強調、「バラマキとは思わない」と反論した。

やはり自民が追及する与謝野馨経済財政担当相の起用について首相は税制・社会保障改革に向けた「大義」を強調した。また、自民側が求めた議員辞職を与謝野氏は拒否した。与謝野氏入閣の是非より、政策論争に力点を移すべきではないか。

その意味で、税制・社会保障改革について政府・民主党が基本案を持ち合わせず論戦にのぞむ不十分さがむしろ浮き彫りになった。民主党が09年衆院選で示した所得比例年金に最低保障年金を組み合わせた改革案について首相らは「(議論の)ベース」と表現したが、位置づけはあいまいだ。

政府案のイメージすらつかめないようでは、論戦はかみ合わない。自民党は「与野党協議を呼びかけるなら民主党案をまとめるべきだ」と主張している。首相は野党との協議が実現しなくても、6月に政府の一体改革案をまとめる意向を示した。だが、本気で協議の実現を目指すのであれば、やはり民主党内の調整を急がねばなるまい。

論戦の場として、今後は党首討論の活用も欠かせない。特に谷垣禎一自民党総裁に対しては、衆院解散要求一辺倒ではない、深みある議論を期待する。

読売新聞 2011年02月02日

予算委論戦 民主は与野党協調の環境作れ

衆参ねじれ国会を打開するためには、政府・与党が野党側との接点を模索し、歩み寄ることが欠かせない。

国会論戦の舞台が衆院予算委員会に移った。

自民党の石原幹事長は、民主党が衆院選政権公約で掲げた子ども手当などについて「バラマキ政策のオンパレード」と批判した。それを撤回しない限り、来年度予算案に賛成できないとも述べた。

菅首相は「バラマキとは思っていない」「マニフェストの大きな項目は相当程度、実現あるいは着手している」などと反論した。

だが、安定財源を確保せず、経済波及効果も乏しい政策を行うのは「バラマキ」以外の何物でもない。一般会計に特別会計を合わせた予算全体の組み替えで必要財源を捻出できるとした民主党の公約は、とうに破綻している。

公明党も、公約の修正がなければ、来年度予算案や予算関連法案に賛成するのは困難だと繰り返している。特例公債法案など予算関連法案が否決されれば、予算の一部が執行できない事態に陥る。

経済や国民生活に甚大な影響が及ぶ事態を回避する責任は、一義的には政府・与党にある。

首相は「今秋」としていた公約見直し作業の前倒しもあり得ると述べたが、一刻も早く公約の大胆な見直しに踏み切るべきだ。

首相は、4月に社会保障の見直し案、6月には税制を含む一体改革の考え方をとりまとめるスケジュールを示した。そのうえで案作りの段階から与野党協議に入りたい考えを強調した。

しかし、自民党や公明党が指摘する通り、野党に協議を呼びかける以上、政府・与党がまず具体案を提示するのが筋だ。そもそも、3月末に採決される予算関連法案の成立を期すなら、このスケジュールも前倒しが必要だろう。

強制起訴された民主党の小沢一郎元代表の国会招致に早く決着をつけることも、野党と協議を進めるうえで、民主党に課せられた重い責任である。

野党も、政府・与党が具体的な行動で歩み寄るなら、対決一辺倒の姿勢では困る。環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題などの重要政策課題で、建設的な議論を展開してもらいたい。

政府内では、国会日程が見通せないことを理由に、今春に予定していた首相訪米の延期を検討しているという。事実であれば極めて遺憾だ。与野党でよく話し合い、外交日程へのしわ寄せは何としても避けねばならない。

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