小沢氏招致先送り この期に及び茶番とは

朝日新聞 2011年01月22日

小沢氏の姿勢 国会を台なしにするのか

民主党の小沢一郎元代表の政治資金問題で、小沢氏による衆院政治倫理審査会での説明が実現しない見通しになった。極めて残念な結果である。

小沢氏は出席の時期について「予算成立後を最優先とする」と条件をつけ、事実上、拒否する考えを政倫審会長に伝達した。これを受けて岡田克也幹事長が、出席を求める議決を断念する意向を示した。

小沢氏はまもなく強制起訴される。一人の刑事被告人として、法廷で潔白を訴える権利が守られるべきなのはいうまでもない。そこでは当然ながら「推定無罪」の原則が適用される。

しかし、政治家小沢氏に対しては言行不一致を指摘しなければならない。

小沢氏は検察審査会の2度目の議決で強制起訴が決まったあと、政倫審出席について「国会の決定にはいつでも従う」と述べていた。

最近は、「すでに司法手続きに入っている」から出席する合理的理由はないと主張する一方、政治家としての総合判断から通常国会中にはいずれ出席するとしていた。

東京地検が小沢氏の事務所などを捜索してからすでに1年。国会で説明する機会はいくらでもあったのに果たさず、いまだに条件をつけている。時間を稼ぎ、「逃げ切り」を図る戦術と見なすほかあるまい。

小沢氏自身が強調しているように、政倫審の生みの親は小沢氏である。

ロッキード事件で損なわれた政治への信頼をどう回復するのか。衆院議院運営委員長だった小沢氏が対処にあたり、26年前に生まれたのが政治倫理綱領であり、その実効を上げるための政倫審だった。

綱領にはこう記されている。

「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯(しんし)な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない」

この言葉を、小沢氏は忘れたのだろうか。小沢氏がかたくなな姿勢を崩さず、政治家としての説明責任を果たさないのなら、小沢氏が唱道してきた政治改革は果たして真摯なものだったのか、原点から疑われることになろう。

この事態を受けて、民主党執行部は証人喚問や、離党勧告の検討に入る。小沢氏が政倫審出席を拒否する以上、当然の対応である。

これを見過ごし、何もせずに放置すれば、週明けに召集される通常国会はまたしても「政治とカネ」をめぐる不毛な対立に終始するだろう。

新年度予算をはじめ社会保障と税の一体改革、自由貿易と農業再生など、重要な政策課題は多い。そのための「熟議」の場を台なしにして良いのか。小沢氏と民主党執行部の双方が問われている。

毎日新聞 2011年01月22日

小沢氏招致先送り この期に及び茶番とは

茶番と言われても仕方あるまい。小沢一郎民主党元代表の「政治とカネ」の問題をめぐる国会招致問題で民主党は衆院政治倫理審査会への同氏出席を事実上断念、国会での説明はまたも暗礁に乗り上げた。

この期に及んで説明を拒んだ小沢氏には、もはやあぜんとするばかりだ。同時に小沢氏や野党の対応を理由に出席の議決方針をあっさり転換した党執行部にも問題がある。

これ以上の先送りは許されない。国会での証人喚問を真剣に検討すべきである。

遅ればせながら招致問題を決着させたかに思えた昨年末の一連の動きはいったい、何だったのだろう。

民主党は衆院政倫審への小沢氏出席を議決する方針を菅直人首相が出席した役員会で決め、小沢氏は通常国会で出席する考えを表明した。小沢氏は時期について状況次第で11年度予算の成立後とする考えをいったん示したが、その後「条件はつけていない」と党側に回答していたはずである。

ところが結局、小沢氏は「予算成立を最優先させ、国会の状況をみながら判断する」との表現で、事実上の出席拒否を通告した。さまざまな理由をつけながら先送りする、いつもの展開である。

民主党の対応も解せない。たとえ小沢氏が出席を拒んだとしても、あくまで政倫審で出席を議決し、小沢氏に翻意を促すというのが筋道ではないか。

民主党が単独で議決した場合、証人喚問を要求する野党が反発する事態も執行部は懸念したという。だが、審査会の小沢氏系議員を差し替え議決した場合の対立激化を警戒し、腰が引けたとみられかねない。

小沢氏は近く資金管理団体「陸山会」を舞台とする土地取得事件をめぐり、政治資金規正法違反で強制起訴される。だからといって、小沢氏の国会での説明責任の問題がこれで消え去るわけではない。

政倫審の道が事実上閉ざされた以上、国会での早期の説明を実現するには、野党が求める証人喚問も検討せざるを得まい。偽証罪も適用される喚問の予算委員会での実施は全会一致が慣例だ。しかも起訴された議員の喚問実施はハードルが高く、実現は難航が予想される。だが、このままでは「政治とカネの問題に対する失望を解消する」という首相の年頭所感が宙に浮いてしまう。

内政、外交に政策課題が山積する中、国会招致問題でエネルギーを費やし、政治の停滞を招き続けた責任はあまりに大きい。小沢氏が強制起訴された場合、小沢氏や党は明確なけじめをつけ、国民に示さなければならない。

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