スーダン南部 投票後の安定にも支援を

朝日新聞 2011年01月15日

スーダン南部 投票後の安定にも支援を

紛争の解決策は、和解による統一政府の樹立か、分離独立か。

アフリカ大陸のスーダン南部で9日に始まり、15日まで続く住民投票で問われるのは、この問いである。

国のなかで民族と宗教が異なる集団が争い、内戦や紛争が起こる国が少なくない。スーダンもその一つだ。北部にある中央政府はアラブ系のイスラム教徒が主導し、南部はアフリカ系キリスト教徒の解放闘争勢力が率いた。

南と北が戦ったスーダン内戦は1980年代前半に始まり、約20年で200万人が死に、400万人が難民化した。20世紀後半に起きた内戦で最も悲惨といわれた。最近では03年に始まった同国西部のダルフール紛争が注目を集めたが、南北の対立も根が深い。

米英などが乗り出し、05年に南北の包括和平合意が調印された。暫定的な統一政府ができて和平に動き始めた。

住民投票は、和平プロセスの最終段階である。この6年間の経験を踏まえて、南部の住民が決断する。住民には北部のバシル政権への不満が強く、分離独立が支持されるという観測が流れている。

重要なのは、投票が最後まで平和に完了することだ。国連PKOの国連スーダン派遣団(UNMIS)が投票を支援している。派遣団の司令部には日本の自衛官2人も派遣されている。国際的な選挙監視態勢がとられ、日本からの監視団も活動している。

南部が独立を選んでも、バシル大統領は意思を尊重すると述べている。同大統領と南部の代表、エジプト、リビアの首脳が会談し、共同声明で平和な投票を呼び掛けた。

住民投票への南北の協力と、周辺国家や国際社会の支援を歓迎したい。投票後の混乱の防止や地域の安定のために、この協力と支援が必要だ。

もし南部が独立を選んでも、北部との関係が終わるわけではない。

南北の境界に未画定の部分があり、境界付近にある油田地帯の帰属を巡る住民投票は延期されている。この国の外貨収入源である石油資源の大半が南部にあるため、領土や資源を巡る紛争が再燃する心配もある。

バシル大統領はダルフール紛争に絡んで、戦争犯罪や集団殺害の疑いで国際刑事裁判所から逮捕状が出ている人物だ。今後の行動にも不安がある。

スーダン内戦やダルフール紛争には米国が積極的にかかわって、国際社会を引っ張ってきた。一方で、中国が進出し、石油利権を得て、中央政府に強い影響力を持っている。

バシル大統領を抑え、スーダンを安定化させるためには、米国や中国はもちろん、国際社会の協力が欠かせない。世界の不安定な地域を一つずつ安定させてゆくために、日本も注視を続け、支援を続ける必要がある。

読売新聞 2011年01月17日

南北スーダン 分離後の平和と安定に努めよ

スーダン南部の分離独立の賛否を問う住民投票が終了し、アフリカ大陸54番目の国が誕生する見通しとなった。

独立後、半世紀にわたり内戦に明け暮れたこの国に、新時代が訪れようとしている。

南北スーダンはいがみ合う関係に終止符を打つだけでなく、共存共栄の関係を築いていかなければならない。

日本の約7倍、アフリカ最大の国土を持つスーダンでは、イスラム教徒主体の北部のアラブ人が支配層となり、キリスト教徒が多い南部の黒人が反発して衝突が続いてきた。

1983年からの第2次内戦では約200万人が死亡、400万人が故郷を追われたとされる。

今回の住民投票は、この内戦を終わらせた2005年の包括和平合意に基づいて実施された。

開票作業は今月末までかかる見込みだが、賛成が多数を占めるのは確実で、南部は早くも祝賀ムードに沸いているという。

独立は、包括和平合意の適用期間が終了する今年7月に予定されている。だが、それまでに、なお紆余(うよ)曲折が予想される。

北部のバシル政権は南部の独立を約束通り認めるのか。新政府作りをめぐり、南部の部族間で権力争いは起きないか。生活基盤整備など国家樹立後の課題も多い。

最も重要なのは、南北間の協調関係の構築である。

スーダンの最大の財源は、石油だ。油田は南部や南北国境地帯に集中しており、パイプラインで北部の精製施設に運ばれ、輸出されている。国境線を早期に画定し、油田地帯の分割と利益の適切な配分に合意しなければならない。

その際、国際社会が仲介の手を差し伸べる必要も出て来よう。

バシル政権は、イスラム原理主義を標榜(ひょうぼう)する組織に支えられている。米同時テロの首謀者であるビンラーディンが滞在していたこともあり、米国からテロ支援国家に指定されている。

国際社会から孤立したバシル政権と関係を深めたのが、石油利権を求める中国だった。

南北の協調を促すためには、バシル政権を国際社会に取り込むことが必要だ。中国も国際社会と足並みをそろえるべきだ。

和平合意の履行を支援する国連平和維持活動(PKO)、スーダン派遣団には、68か国から1万人以上が参加している。治安維持や国造り支援でPKOの役割はますます重要になる。2人派遣の日本は増員を検討してはどうか。

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