スーダン南部の分離独立の賛否を問う住民投票が終了し、アフリカ大陸54番目の国が誕生する見通しとなった。
独立後、半世紀にわたり内戦に明け暮れたこの国に、新時代が訪れようとしている。
南北スーダンはいがみ合う関係に終止符を打つだけでなく、共存共栄の関係を築いていかなければならない。
日本の約7倍、アフリカ最大の国土を持つスーダンでは、イスラム教徒主体の北部のアラブ人が支配層となり、キリスト教徒が多い南部の黒人が反発して衝突が続いてきた。
1983年からの第2次内戦では約200万人が死亡、400万人が故郷を追われたとされる。
今回の住民投票は、この内戦を終わらせた2005年の包括和平合意に基づいて実施された。
開票作業は今月末までかかる見込みだが、賛成が多数を占めるのは確実で、南部は早くも祝賀ムードに沸いているという。
独立は、包括和平合意の適用期間が終了する今年7月に予定されている。だが、それまでに、なお紆余曲折が予想される。
北部のバシル政権は南部の独立を約束通り認めるのか。新政府作りをめぐり、南部の部族間で権力争いは起きないか。生活基盤整備など国家樹立後の課題も多い。
最も重要なのは、南北間の協調関係の構築である。
スーダンの最大の財源は、石油だ。油田は南部や南北国境地帯に集中しており、パイプラインで北部の精製施設に運ばれ、輸出されている。国境線を早期に画定し、油田地帯の分割と利益の適切な配分に合意しなければならない。
その際、国際社会が仲介の手を差し伸べる必要も出て来よう。
バシル政権は、イスラム原理主義を標榜する組織に支えられている。米同時テロの首謀者であるビンラーディンが滞在していたこともあり、米国からテロ支援国家に指定されている。
国際社会から孤立したバシル政権と関係を深めたのが、石油利権を求める中国だった。
南北の協調を促すためには、バシル政権を国際社会に取り込むことが必要だ。中国も国際社会と足並みをそろえるべきだ。
和平合意の履行を支援する国連平和維持活動(PKO)、スーダン派遣団には、68か国から1万人以上が参加している。治安維持や国造り支援でPKOの役割はますます重要になる。2人派遣の日本は増員を検討してはどうか。
この記事へのコメントはありません。