日韓両国が、経済や文化だけでなく安全保障分野でも、互いの協力を深める方向で動き出した。
北沢俊美防衛相が10日、韓国で金寛鎮(キム・グァンジン)国防相と会談し、自衛隊と韓国軍の防衛協力をめぐる二つの協定の締結に向けた協議を進めることで一致した。きのう訪韓した前原誠司外相も両国の関係強化を話し合った。
対象となるのは、交換情報の保全手続きを定める「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」と、国連平和維持活動(PKO)や共同訓練などで燃料や部品を融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」である。
日韓とも既に米国とは両協定を結んでいる。朝鮮半島情勢をめぐる日米韓3カ国の連携を一層緊密にする枠組み作りとして、有益だろう。
日本にとっては、米軍からしか得られていない北朝鮮の軍事動向や大量破壊兵器の情報が、韓国からも期待できる。また海外での平和協力活動や災害派遣の現場で連携が円滑になったり、3万人近い在韓邦人の有事の際の避難について、滞っている話し合いの糸口になったりするメリットがある。
朝鮮戦争から60年を経て、米国を軸に日米、米韓関係は強固になったが、日韓の間柄は今も隔たりがある。日本の憲法解釈が集団的自衛権の行使を認めていないことに加え、植民地支配の歴史や竹島の領有問題にからむ双方の不信感が障害になっているからだ。
北朝鮮の度重なる軍事的挑発が、そうしたハードルを押し下げた感がある。日韓併合100年にあたっていた昨年も、両国の友好ムードは緩まず、韓国が主催した大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)の訓練に海上自衛隊の護衛艦が参加したり、米韓・日米両軍事演習に相手の将校をオブザーバーとして招いたりした。
防衛協力の範囲は、憲法上の制約をわきまえ、情報交換やPKO、安全保障対話などにとどめ、まずは相互の信頼関係の構築に重点をおくべきだろう。その際、3カ国の連携が、ただちに中国を脅威と見なすものではないこともていねいに説明する必要がある。
日本側は前のめりになってはならない。菅直人首相は昨年12月、邦人救出のための自衛隊機派遣について韓国政府と協議する考えを示し、韓国社会のひんしゅくを買ったばかりだ。朝鮮王朝時代の文書を引き渡す日韓図書協定の承認も先送りされたままである。
韓国側は、敏感な国民感情や中国への配慮からまだ慎重な構えでいる。不用意な言動は厳に慎むべきだろう。
日本側の意気込みを示すのなら、図書協定の承認を、通常国会の冒頭で行うくらいの気構えで臨んでみてはどうか。日韓関係をより深めていくために、時間をかけてでも与野党一体になった取り組みを望みたい。
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