民主党大会 政権目標をより明確に

朝日新聞 2011年01月14日

政権公約見直し 予算案修正と一体で臨め

民主党がきのうの党大会で、夏までに2009年衆院選のマニフェスト(政権公約)を見直す方針を決めた。

この政権公約を土台に編成している新年度予算案についても、同党の岡田克也幹事長が先日、「修正に否定的ではない。政府が出したものが最終ではなく、議論で変えることはあっていい」と述べている。

問題のある政権公約や予算案について、政府・与党が修正に柔軟な姿勢を示したことを評価したい。

ただし公約の見直しが夏というのは遅すぎないか。

十分な党内論議を積み重ねることはもちろん必要だ。とはいえ、これから開く国会で審議する新年度予算案に、見直しの成果がまったく反映されないのではつじつまが合わなくなる。

政策の行方が今後どうなるかわからないという状況のなかで、予算案を通してくれと言われても、野党が理解を示すとは思えない。

国会開会中の本格的な予算案修正は極めて異例である。過去には小規模な修正例が数件あるだけで、枠組みを変えるような大がかりな修正例はない。だが今こそ、それも辞さない覚悟を、政府・与党に求めたい。

予算案修正が必要なのは、単に成立を図るための国会対策の方便としてではない。鳩山政権以来、予算の土台となってきた政権公約は、財源の確保や制度づくりの難しさに照らして、かなり修正が必要なことがはっきりしているからである。

例えば政権公約の目玉の一つである高速料金の原則無料化は、他の公共交通機関への影響、渋滞や財源の問題があって、もはや最終ゴールにはなりえない。にもかかわらず新年度予算案に社会実験の継続が盛り込まれるのは、説得力を欠く。

農業の戸別所得補償は、零細農家を含めすべての販売農家を対象としたことで農地集約の障害となり、効率化が進まないという欠陥が露呈した。それを放置したまま制度を続けるのか。

子ども手当は、政権公約にうたった額の半分、月1万3千円の給付を続けるが、いずれ満額まで上積みする前提なのか。現物給付に重点を移す道や所得制限導入の是非も論点として残る。

もろもろの政策の行き着く先が見えぬままでは、国民は制度継続を前提に生活設計はできない。適切な方向に早くかじを切り直し、国民生活や経済活動が停滞しないようにすべきだ。

それには主要施策の政権公約だけでも前倒しで見直し、国会論戦を通じて予算案を柔軟に修正すべきである。

もちろんその際、菅直人首相は修正理由と新たな政策の方向について、国民に丁寧に説明しなければならない。野党もいたずらに審議を拒むことなく、国民本位で判断してもらいたい。

毎日新聞 2011年01月24日

自民党 与野党協議を拒むな

4月の統一地方選で勝利し菅政権を衆院解散・総選挙に追い込む。23日の自民党大会は昨年とうって変わって強気の姿勢が目立った。だが、野党転落から約1年半経過し、自民党への国民の信頼が回復したかといえば、そうとはいえない。

特に「何も動かない国会」に対しては与野党通じて国民の厳しい目が向けられているように思われる。通常国会が24日から始まる。今、国民が何を求めているのか。自民党もそれを見失わない対応が必要だ。

大会の演説で谷垣禎一総裁は「民主党の失政を徹底的に追及する」とアピールした。ただし、「といって、いたずらに国会審議を混乱させない」と付け加えたのは、やはり世論を意識したものだろう。

毎日新聞が菅内閣の再改造直後に行った世論調査では自民党の支持率は21%で民主党を1ポイント逆転した。しかし、両党合わせても「支持政党なし」の42%に及ばず、政党政治そのものの危機的状況が続いている。しかも、この調査で国会での与野党のあり方について聞いたところ、「互いに対決すべきだ」が30%だったのに対し、「双方譲り合うべきだ」は64%に上っている。

自民党は新年度予算案と予算関連法案に反対する構えを見せている。衆院の議決が優先する予算案はともかく、野党がそろって参院で反対すれば関連法案は成立せず、菅直人首相は追い詰められる。だが、予算が執行できない混乱状況に至れば批判の矛先は自民党に向かう可能性がある。そこまでの覚悟はあるのか。

税と社会保障の一体改革についても同様だ。谷垣氏はこの日、菅首相が与謝野馨氏を経済財政担当相に起用したことを強く批判し、「与野党協議においそれとは応じるわけにはいかない」と語った。しかし、昨年の参院選で消費税率を当面10%に引き上げる公約を真っ先に掲げ、議論をリードしたのは自民党だ。

当時、私たちはその姿勢を評価したが、自民党内では統一地方選前に増税に言及するのは得策ではないとの声が強まり、一転、菅政権を批判するだけで政策論には口を閉ざしている印象だ。それでは「選挙目当て」と民主党を批判できない。無論、政権側が案をまとめるのが先だが、与野党協議に加わり、国民の将来のための議論を前に進める時ではないか。

この日採択された運動方針では昨年の参院選での自民党勝利について「『政権に戻ってこい』との意思表示ではなく『いまの政権をしっかりチェックしろ』と理解するのが正しいのでは」と謙虚に分析し、「かつての民主党のような『反対のための反対』はしない」とも明記した。ぜひ、そうあってほしい。

読売新聞 2011年01月24日

自民党大会 政策で責任政党の役割果たせ

政権奪還を目指す以上は、責任政党として、喫緊の課題である消費税率引き上げや環太平洋経済連携協定(TPP)参加の問題などにも積極的にかかわっていくべきだ。

自民党が定期党大会を開いた。民主党政権を衆院解散・総選挙に追い込み、早期に政権復帰を果たすとする運動方針を採択した。

谷垣総裁は「民主党の失政を徹底的に追及する。戦う野党としての責務だ」と述べ、菅政権への対決姿勢を強く打ち出した。

しかし、運動方針が、昨夏の参院選勝利は「政権に戻ってこい」との有権者の意思表示と見るのは早計、と書いている通り、党勢が回復したとは言いがたい。

最近の世論調査で、衆院比例選の投票先として民主党を上回っているのも“敵失”が要因と見るべきだろう。自民党は、民主党政権を厳しくチェックするとともに、国民の信頼を取り戻す地道な努力を重ねることが必要である。

特に、国の命運を左右するような政策課題では、建設的な姿勢を示すことが大切だ。政権に復帰すれば、直ちに取り組まねばならない課題ではないか。

谷垣総裁は大会の中で、税制・社会保障改革を巡る超党派協議について、民主党による衆院選政権公約の「撤回」が協議に入るための「前提」との考えを示した。

自民党出身の与謝野経済財政相がこの問題に関する司令塔になったことにも反発した。

子ども手当などのバラマキ施策をはじめ、多くの点で見直しが必要なのは確かだ。しかし、撤回しない限り協議に応じない、というのでは議論が先に進まない。

政府・与党が税制・社会保障改革に対する具体的な見解をまとめて提示してくるなら、前提をつけずに協議の席につくべきではないか。与謝野氏へのわだかまりも脇に置くべきだ。

運動方針にTPP参加問題への言及がないのも解せない。石原幹事長は以前、3月中に賛否をはっきりさせると言明したはずだ。

党内には、TPP参加を打ち出した場合、これに断固反対を訴える農業団体が離反して票を失うと懸念する議員が多い。

それが理由で態度を曖昧にするなら、与党を批判できまい。自民党もTPP参加の方向で早急に党内の意見をまとめるべきだ。

外交面でも、米軍普天間飛行場の移設問題は、自民党が積み残した課題である。

民主党をただ批判するだけでは無責任のそしりを免れない。

産経新聞 2011年01月14日

民主党大会 「最強態勢」画餅にするな

菅直人首相は民主党定期大会で、14日の内閣改造や党人事について「日本の改革を推し進める最強の態勢にする」と強調した。

その決意は尊重したいが、主要政策をどうするかがまったく不透明な政党では画餅に終わるだけだろう。

消費税増税や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加問題をめぐり、小沢一郎元代表のグループを中心に慎重論が打ち出されている。政権公約(マニフェスト)に盛り込まれていないことなどを理由としているが、菅首相が指導力を発揮すべきは主要政策への合意作りである。

ところが、首相は消費税増税を含む税制と社会保障の一体改革をめぐる与野党協議について「野党が積極的に参加しないなら、そのこと自体が歴史への反逆行為だ」と述べた。野党を牽制(けんせい)している場合ではないだろう。

参院選で自ら消費税増税を提起しながら、批判を受けて発言がぶれたことが、政策面の信頼性を損なった。小沢氏らに攻撃材料も与えた。税率や税収の使途など、菅内閣としての基本的立場を早急に示さねばならない。

12日の両院議員総会で首相や執行部批判が相次いだように、昨年9月の党代表選を首相と争った小沢氏のグループと首相を支持する勢力との厳しい対立状況は深刻化する一方だ。

米軍普天間飛行場の移設問題でも、小沢氏や鳩山由紀夫前首相に近い議員が県外移設論を唱えるなど、日米合意に基づく辺野古移設案で党内はまとまっていない。政権与党でありながら、主要政策に関する統一的な見解も出せないようでは致命的な欠陥といえる。

一方、大会では党の現状を是正する動きも出始めた。マニフェストの見直しを夏までに行う方針を岡田克也幹事長が打ち出し、了承された。

これまでなかった党綱領も策定する。遅まきながら政党としての基本政策や理念を持とうというわけだが、責任政党といえる国益を踏まえた内容にしてほしい。

問責決議を可決された仙谷由人官房長官は、「自衛隊は暴力装置」など、数々の暴言を吐いてきた。更迭は遅きに失したが、政権運営の屋台骨であったことも間違いない。改造以降、内閣の求心力を強め、最強の布陣にするかどうかは首相の力量次第である。

毎日新聞 2011年01月14日

民主党大会 政権目標をより明確に

民主党の党大会が開かれた。菅直人首相はあいさつで民主党政権のこれまでの運営について「大きな意味で間違っていなかった」と強調、社会保障など諸課題をテーマとする与野党協議に野党が参加を拒み続けた場合、「歴史に対する反逆」になると、強い表現でけん制した。

大会は衆院選マニフェスト(政権公約)を今夏をめどに見直す方針を了承したが、11年度予算案を審議する通常国会を控え、政権の目標と優先順位をより早期に、明確に示す必要がある。14日に行う内閣改造人事は、政策の方向性を十分意識した布陣としなければならない。

「政治とカネ」をめぐり小沢一郎元代表との対立を深める首相にとって、改造人事前のハードルとみられていたのが党大会と、前日の両院議員総会だった。両院総会では小沢氏に近い議員から首相批判が相次いだが、党大会では質疑の時間を設けず議案を了承してしまった。亀裂の封印に腐心した印象を与える内向きな運営である。

一方で、両院総会では出席議員から首相退陣を求める意見も出ず、ガス抜きの域を出なかった。小沢氏が強制起訴された場合の出処進退に首相が言及するなど攻勢をかける中、小沢氏系議員らの手詰まり感も浮き彫りになった。

より重要なのは、首相が政権の失地回復に向け、どれだけ国民にわかりやすいメッセージを発したかだ。首相は大会で政権交代の実績として子ども手当と農業者への戸別所得補償を力説したが、今後の社会保障と税制改革については踏み込み不足だった。地方組織に反発が強い環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加問題も、「平成の開国」と抽象的にふれるにとどめた。

大会では政権公約の見直しや綱領策定に向けた議論が了承された。確かにこうした作業は重要だが、早急に政策の優先順位と具体的イメージを示さない限り、迫る通常国会は乗り切れまい。「歴史への反逆」と言い切り野党をけん制しても現状では単なる挑発にしか聞こえない。

調整が進む改造人事では、閣内で政権の支え役であり、参院で問責決議を受けていた仙谷由人官房長官について首相は交代させる方針を固めた。通常国会が出足から混乱する事態を回避するための判断だが、「ねじれ国会」対策ばかり意識した守りの布陣では、迫力は生まれない。

改造人事では財政、社会保障に詳しい与謝野馨元財務相が「たちあがれ日本」を離党、何らかの形で政権に参画するとみられている。閣僚や党役員人事を通じ、内閣の意思を明確にする体制を構築することが、何よりも肝心である。

読売新聞 2011年01月14日

民主党大会 与野党連携へ公約修正を急げ

衆参ねじれの通常国会を乗り切るためにも、消費税率引き上げや環太平洋経済連携協定(TPP)参加などの重要課題に取り組むためにも、民主党には野党の協力が欠かせない。

野党が求める政権公約の見直しを急いで環境を整え、率直に連携を要請することが肝要だ。

民主党が菅政権初の定期党大会を開いた。菅首相はあいさつで、税制と社会保障改革に関する与野党協議を呼びかけ、「参加しないなら、歴史に対する反逆行為だ」などと野党をけん制した。

与野党協議の重要性は認めるとしても、こうした発言は野党の反発を招くだけで逆効果だ。むしろ菅政権が誠実に取り組むべきは、政権公約の見直しである。

岡田幹事長は、公約検証・見直しの新組織を党内に設置すると表明した。だが、党大会で採択された2011年度活動方針は、「マニフェストの着実な実現」を掲げ、見直しへの言及は一切ない。

財源の裏付けのないバラマキ政策に満ちた公約は、既に事実上破綻している。政権運営の足かせになるばかりか、国民の民主党不信の一因ともなっている。小手先の弥縫(びほう)策を重ねるのではなく、抜本的な見直しが避けられない。

民主党が公約見直しの時期を夏としているのも遅すぎる。

通常国会で11年度予算関連法案や重要法案の成立に向け、野党の協力を本気で得たいのなら、より早く見直しの方向性を示し、野党と協議する必要がある。

菅政権は、参院で問責決議を受けた仙谷官房長官と馬淵国土交通相の交代をようやく決めた。

これは、野党が国会審議に応じる環境を整備したに過ぎない。予算・法案審議を円滑に進め、一部の賛成を得るには、もっと踏み込んだ対応が不可欠だ。

菅政権の問題は、内政も外交も難しい課題を先送りしたり、場当たり的な対応に終始したり、戦略的視点が欠如していることだ。

党大会に先立つ両院議員総会では、小沢一郎元代表の支持勢力を中心に、「小沢氏を敵だと思っているのか」などと執行部批判が噴出した。民主党は今、党内抗争をしている余裕はないはずだ。

小沢氏は衆院政治倫理審査会の開催を申し出たが、依然、「国会召集後」との条件に固執している。月内にも政治資金規正法違反で強制起訴されれば、それを理由に出席しない意向ともされる。

そんな茶番劇は許されない。民主党には、小沢氏の国会での説明を実現する責任がある。

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