B型肝炎訴訟 全面解決に道が見えた

朝日新聞 2011年01月13日

B型肝炎訴訟 全面解決に道が見えた

集団予防接種の際、注射器を使い回したためB型肝炎ウイルスに感染したとして、被害者が国に賠償を求めた訴訟で札幌地裁の和解案が示された。

最後まで調整が難航したのは、感染しているが症状が出ていない人(持続感染者)の扱いだった。和解案は、国が今後の検査費用や交通費に加え、過去の検査にかかった経費などとして50万円を支払うとなっている。

原告側は、感染の事実を知った時点で受けた精神的ダメージや将来への不安、社会生活を送るうえでの制約などを訴え、1200万円の和解金を求めていた。その落差を納得できないと感じる人がいるのは理解できる。

だが、裁判所を交えて患者と国が話し合い、歩み寄りの末に導き出された和解案だ。前向きに評価したい。

持続感染をめぐっては、法的には、注射から20年が経ったら請求権は消滅するという考えが有力だ。そして20年前には既に使い回しは終わっていた。原告側は「感染を知った時から20年」とするべきだと主張したが、地裁もそこまでは踏み込まなかった。

境遇が違い、様々な思いをもつ原告をまとめるのは簡単でないだろうが、弁護団は事情を丁寧に説明し、全面解決への道筋をつけてもらいたい。

予防接種を受けたことの証明の仕方や、発症した患者に支払う金額などでも知恵が絞られた。幅広い救済をめざすとの理念に照らし、妥当な線が打ち出されたのではないか。

この案に基づけば、国の試算で向こう5年間で最大1兆円、その後の25年間で2兆円が必要になる。70~74歳の医療費の自己負担を、本来の2割から1割に引き下げるために、いま使われている予算が年間約2千億円だ。規模の大きさを痛感する。それはまた、被害の広がりを示すものでもある。

負担するのはほかでもない。税金を納める国民一人ひとりだ。そう考えるとたじろいでしまうが、ここは覚悟を決めて引き受けるしかない。

予防接種は、感染症から個々の子どもを守るとともに社会全体を防衛するため、ほぼ強制的に行われた。そしてそこで過ちが起きた。もしかしたら自分や家族が感染したかもしれない。その想像力と共感をもって、長年にわたる被害に向き合う必要がある。

救済を円滑に進めるにはC型肝炎対策と同様の立法措置が必要になろう。使い回しの時期は自民党政権時代とほとんど重なる。国民の健康とあわせ、今後の財政運営にもかかわる問題だ。政党間の対立を越えて、社会の理解の深化につながる協議を求めたい。

検診の強化と実態の把握、症状の進行を抑えるための研究など、総合的な肝炎対策に着実に取り組む。国民病ともいわれるこの病気との闘いは、私たちが背負う大きな課題である。

読売新聞 2011年01月13日

B型肝炎訴訟 国と原告は早期和解を目指せ

集団予防接種の注射器使い回しによりB型肝炎ウイルスに感染したとして、患者らが全国10地裁で国を相手取り、損害賠償を求めている訴訟で、札幌地裁が和解案を示した。

国と原告双方の主張を()んだ内容と言えよう。政府は関係閣僚が協議し、和解案を受け入れる方向で検討していくことを確認した。原告側もおおむね評価している。早期の和解を目指すべきだ。

最大の争点は、症状の出ていない持続感染者(キャリアー)への補償をどうするかにあった。

原告は、薬害C型肝炎のキャリアーに対する救済策と同等の1200万円の補償を求めていた。

だが、予防接種が原因のキャリアーは約44万人もいると推計されることや、B型ではキャリアーの肝炎発症率は1~2割と低いことから、国は補償の対象としないよう主張してきた。

和解案は、キャリアーも含め、幅広く補償対象とした。一方で金額は50万円にとどめた。現実的な提案だろう。キャリアーには、定期的な検査費用などの助成を充実させることが重要だ。和解案にはこの点も盛り込まれている。

肝炎を発症したり、肝がんに進行したりした場合には、症状に応じて1250万~3600万円の補償額が提示された。これも、薬害C型の補償金額よりは低いが、国の主張する額に相当上乗せしたものだ。

国は、和解が成立し、推計されているキャリアーと発症者の全員が補償請求した場合には、今後30年間で最大計3・2兆円が必要と試算している。

財政難の中、補償の財源を捻出するのは容易ではない。国は和解に応じるのであれば、国民に生じる新たな負担について、より詳細な金額の見通しと、納得できる理由を示す必要があろう。

B型肝炎ウイルスは血液を介してうつる。注射器の針と筒が完全に使い捨てになったのは1980年代の末ごろだ。それ以前に生まれた世代はだれもが感染した可能性がある。

キャリアーであっても気づいていない人は多い。感染の有無を検査する態勢を強化し、肝がんなどに進行しないよう治療支援を充実させることが急務だ。

最高裁で確定した別のB型肝炎訴訟では、国は48年時点で注射器使い回しの危険性を認識していたのに、88年まで対策をとらなかった、と認定されている。

なぜ医療行政の不作為がまかり通ったのか、検証も不可欠だ。

ただの原告 - 2011/01/19 22:41

http://www.geocities.jp/team_hbv_hcv/
http://jimihen.exblog.jp/

和解案の、、、受け止め方は、様々でしょうね。。。。
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