集団予防接種の注射器使い回しによりB型肝炎ウイルスに感染したとして、患者らが全国10地裁で国を相手取り、損害賠償を求めている訴訟で、札幌地裁が和解案を示した。
国と原告双方の主張を汲んだ内容と言えよう。政府は関係閣僚が協議し、和解案を受け入れる方向で検討していくことを確認した。原告側もおおむね評価している。早期の和解を目指すべきだ。
最大の争点は、症状の出ていない持続感染者(キャリアー)への補償をどうするかにあった。
原告は、薬害C型肝炎のキャリアーに対する救済策と同等の1200万円の補償を求めていた。
だが、予防接種が原因のキャリアーは約44万人もいると推計されることや、B型ではキャリアーの肝炎発症率は1~2割と低いことから、国は補償の対象としないよう主張してきた。
和解案は、キャリアーも含め、幅広く補償対象とした。一方で金額は50万円にとどめた。現実的な提案だろう。キャリアーには、定期的な検査費用などの助成を充実させることが重要だ。和解案にはこの点も盛り込まれている。
肝炎を発症したり、肝がんに進行したりした場合には、症状に応じて1250万~3600万円の補償額が提示された。これも、薬害C型の補償金額よりは低いが、国の主張する額に相当上乗せしたものだ。
国は、和解が成立し、推計されているキャリアーと発症者の全員が補償請求した場合には、今後30年間で最大計3・2兆円が必要と試算している。
財政難の中、補償の財源を捻出するのは容易ではない。国は和解に応じるのであれば、国民に生じる新たな負担について、より詳細な金額の見通しと、納得できる理由を示す必要があろう。
B型肝炎ウイルスは血液を介してうつる。注射器の針と筒が完全に使い捨てになったのは1980年代の末ごろだ。それ以前に生まれた世代はだれもが感染した可能性がある。
キャリアーであっても気づいていない人は多い。感染の有無を検査する態勢を強化し、肝がんなどに進行しないよう治療支援を充実させることが急務だ。
最高裁で確定した別のB型肝炎訴訟では、国は48年時点で注射器使い回しの危険性を認識していたのに、88年まで対策をとらなかった、と認定されている。
なぜ医療行政の不作為がまかり通ったのか、検証も不可欠だ。
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和解案の、、、受け止め方は、様々でしょうね。。。。