日米外相会談 形を整えるより成果示せ

毎日新聞 2011年01月08日

日米外相会談 同盟立て直しの一歩に

前原誠司外相とクリントン米国務長官が、安全保障分野での日米協力の指針となる新たな「共通戦略目標」を策定することで合意した。また、日本有事や周辺事態が発生した際の協力強化に向けた協議を加速することでも一致した。

日米外相の合意は、緊張を高める朝鮮半島情勢や活発な海洋活動を展開する中国の動向など、アジア太平洋地域の安全保障環境の変化を踏まえたものだ。妥当な判断といえるだろう。

これまでは必ずしも十分な検討が行われてこなかった安全保障分野での日米協力の仕組みについて協議を深め新たな共通の目標を定めることは、鳩山前政権下でぎくしゃくした両国関係を立て直すためにも意味がある。

自民党政権時代の05年2月、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)でまとめられた現在の共通戦略目標は、日米同盟が地域、世界の平和、安定を高めるうえで「死活的に重要な役割を果たし続ける」とうたい、自衛隊と米軍の役割、任務、能力について検討を継続するとしている。

しかし、鳩山前政権下では沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題がこじれ、米軍の役割や自衛隊のあり方に関する論議を深めることができなかった。

両外相は春に予定されている菅直人首相の訪米の際、日米同盟深化に関する共同声明を発表する方針を確認したが、新共通戦略目標が共同声明の基礎になる見通しだ。

昨年12月に政府が決定した防衛計画の大綱は、中国について「地域・国際社会の懸念事項」とし南西諸島方面の防衛態勢強化を打ち出した。不透明な軍事費増強を続け、海洋権益拡大に向け活発な活動を続ける中国の動きは日本をはじめ周辺の国々にとって大きな不安要因なのは間違いない。

だが、中国を国際社会の責任ある一員に導くためには軍事面の対応だけでなく政治、経済、文化などを含めた総合的な戦略が必要だ。前原外相はクリントン長官に「日中関係は改善の軌道に乗りつつある」と説明したが、日本もそのために積極的に動くべきだ。

北朝鮮の核開発をめぐる6カ国協議について両外相は、北朝鮮が核廃棄に向け具体的な行動を起こせば再開を認めるとの認識で一致した。過去の失敗を繰り返さないよう慎重に判断してほしい。

普天間問題については沖縄の負担軽減策の具体化を進めることを確認した。解決の見通しは全く立っていないが、この問題が同盟深化協議の妨げにならないよう双方の賢明な対応を求めておきたい。

産経新聞 2011年01月08日

日米外相会談 形を整えるより成果示せ

訪米した前原誠司外相はクリントン米国務長官と会談し、今春予定される首相訪米へ向けて新たな共通戦略目標策定など同盟深化協議を加速させることで一致した。

日本外交は昨年、民主党政権下で米国との同盟空洞化が進み、中国やロシアにつけ込まれた。北朝鮮の挑発行動が増す中で拉致問題も進展がなかった。

日米安保体制を軸とする同盟の立て直しが日本の急務である。にもかかわらず、会談が首相訪米の形を整えるだけの話し合いに終始した感が強いのは残念だ。今必要なのは普天間飛行場移設や集団的自衛権などの問題を解決し、同盟の実効性を確保することだ。菅直人政権と前原氏には言葉でなく成果を示す外交を求めたい。

日米は2005年に外務、防衛閣僚級の安全保障協議委員会(2プラス2)で、中台関係などに触れた共通戦略目標を定めた。その後、中国の力ずくの海洋権益拡大が進み、北朝鮮も核・ミサイルに加えて韓国砲撃など挑発的行動を高めた。日本の安全保障環境が悪化したのはいうまでもない。

今回の外相会談で、クリントン長官は「日米同盟のビジョンをまとめる作業」を重視し、前原氏は「共通認識を深め、具体的協力の実をあげる」と強調した。

日米が新たな情勢に対応する共通戦略を練り直すことに異存はない。だが、昨年来の経過を踏まえれば、日米の共同防衛態勢を強化し、抑止力を高めることこそ同盟の喫緊の課題だ。しかも、その方策は既に出ている。

普天間移設の速やかな履行、集団的自衛権の行使容認、非核三原則の見直しなどがそれにあたる。菅政権はこれらを着実かつ速やかに進めることが先決だ。

外相会談前にワシントンで行った講演で前原氏は「日米同盟はアジア太平洋の公共財として死活的に重要」と強調したが、普天間問題解決の期限を設定せず、尖閣諸島や東シナ海の中国の行動にも直接言及しなかった。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加をめぐる判断時期も「6月くらいまでに」と歯切れが悪く、果断に行動する外交とはいい難い。

前原氏は来週、訪韓して安全保障面の日韓連携強化を図り、2月に予定されるロシア訪問では北方領土問題の進展を探るという。いずれも、求められているのは国民を納得させる実現力である。

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