まかり間違えば、大規模な交戦に発展しかねない朝鮮半島の緊迫した状況も、対話を探る局面へ軸足を移しつつあるように見える。
韓国軍が北朝鮮に近い海域で射撃訓練をした。北朝鮮は先月の韓国の島に対する砲撃を超える反撃を加えると公言していたが、当面は軍事的な対応をしないことを示唆した。
さらに北朝鮮は、平壌に招いた旧知の米国の州知事を通じて、核開発に関連する新たな提案をした。
その真意をはかり、北朝鮮が実際どう動くのか見極めねばならない。
州知事が明らかにした北朝鮮の提案は3点だ。寧辺地区に建てたウラン濃縮施設に国際原子力機関(IAEA)からの監視要員を受け入れる。核燃料の国外搬出について交渉する。そして砲撃戦のあった黄海の緊張緩和策を韓国や米国と話し合うのだという。
文字通り受け取れば、悪い話ではない。だが、中身はあまりに不十分であり、問題点が多すぎる。
IAEAの要員はもともと寧辺の核施設に常駐していた。北朝鮮が、昨春の弾道ミサイル実験を受けた国連安全保障理事会の非難声明に反発して、国外に追い出したものだ。それを復帰させるのは当然のことだ。
ただし、監視対象をウラン濃縮施設に限るのだとしたら、それは認められない。プルトニウム型の核開発をしてきた他の多くの施設はどうするのか。また濃縮施設も、寧辺だけではなかろう、と米韓は見ている。
核燃料の国外搬出についても、北朝鮮はすでに使用済み燃料を再処理してプルトニウムを抽出したとしており、搬出するのは未使用分だけだろう。そうならば、核兵器になるプルトニウム問題が監視されないまま残る。
それより何より、北朝鮮は核問題を話し合う6者協議の合意に基づいて、主要な核施設を凍結し、検証を受けねばならない立場にある。そこまで戻るのが本来の形である。
北朝鮮は先の砲撃の責任を負わねばならない。なのに、それを促すべき国際社会がまとまらないのは残念だ。中国が同意せず、安保理は非難声明を出せなかった。日本から見れば、中国がそこまで北朝鮮をかばうのは理解しがたいが、安保理で問題を解決する難しさが表れた。
北朝鮮は関係国の溝を突き、今回のような譲歩を小出しにして様子を見る腹づもりだろう。この国がもっとも恐れる米国を対話の場に誘い出したい、そんな思惑が見える。
もちろん、北朝鮮をめぐる数々の問題は、交渉を通じて解決していかなければならない。北朝鮮が前向きの行動をとるよう迫る。そのために、日本はむろん、中国、米国をはじめとした連携が強く求められる。
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