首相の沖縄訪問 意識の落差どう埋める

朝日新聞 2010年12月19日

首相沖縄訪問 正攻法で行くしかない

菅直人首相が半年ぶりに沖縄県を訪れ、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事と会談した。米軍基地の実情を把握するため、普天間飛行場や嘉手納基地の視察もした。

鳩山由紀夫前首相が「最低でも県外」の公約を破り、普天間を名護市辺野古に移設する日米合意を結んだことで、沖縄の民主党政権に対する不信は決定的なものとなっている。

今回の首相訪問は、遅ればせではあるが、政府が沖縄との信頼関係の再構築を目指し、沖縄が抱える諸問題に真剣に向き合う第一歩と受け止めたい。

とはいえ、その道のりは険しい。

首相は普天間移設について、ベストではないが「ベターな選択」として、辺野古案の再考を仲井真氏に求めた。

しかし、なぜ辺野古なのかについての説明がまったくできていない。過去の経緯と国際情勢とだけ言われても、沖縄県民は到底納得できまい。知事選で県外移設を公約した仲井真氏との議論が平行線に終わったのも当然だ。

知事は改めて日米合意の見直しを求め、首相のベター発言を「県内はすべてバッド」と批判した。

一方、首相は来年度予算で導入する一括交付金について、沖縄を別枠で優遇し、最低でも250億円を充てる方針を伝えた。沖縄振興特別措置法に代わる新法制定や、基地返還後の跡地利用を促進する法整備も約束した。

沖縄戦、米軍統治、復帰後も続く基地負担……。歴史的経緯に由来する本土との格差を縮めるため、沖縄に特別な目配りが必要なことに異論はない。

ただ、振興策だけをテコに知事の翻意を期待するなら、見当違いだろう。

もう振興策というアメで基地負担を引き受けることはしない。沖縄の堅い民意は、昨年の総選挙以降、名護の市長選・市議選、そして先の知事選の結果を見れば明らかだ。

仙谷由人官房長官が先に、沖縄に基地負担を「甘受していただく」と発言し、地元の強い反発を招いた。

日本全体の安全保障のため、あるいは日米同盟深化のためといって、過重な基地負担を押しつけるヤマトの発想そのものを、沖縄は問うている。

やはり、基地の負担軽減に正攻法で取り組むことを通してしか、沖縄の信頼を取り戻すことはできまい。

米軍の訓練の県外・国外への移転は日米合意にも盛り込まれている。県民が実感できる具体的な負担軽減の実をあげることが先決だ。

辺野古移設とセットとされている海兵隊の一部のグアム移転や嘉手納以南の米軍基地の返還を、辺野古移設と切り離して実現できないか、米国と話し合うことも十分検討に値する。

さらに、東アジア情勢の安定を図る外交努力と合わせ、沖縄の基地をどう減らしていくのか、中長期的なビジョンを示せるかどうかが鍵となろう。

毎日新聞 2010年12月18日

首相の沖縄再訪 負担軽減策の具体化を

菅直人首相が沖縄県を訪問した。就任以来、2回目である。

首相は仲井真弘多知事との会談で米軍普天間飛行場の移設問題について、鳩山前政権の迷走を謝罪したうえで、同県名護市辺野古への移設が「実現可能性を考えた時、ベターな選択肢だ」と述べ、日米合意履行の政府方針への理解を求めた。知事は「県外移設が私の公約だ」と語り、平行線に終わった。

知事は会談後、「県内(移設)はグッド、ベター、ベストという分類に入らない。バッド(悪い)の系列というのが沖縄の感覚だ」と、首相の言葉遣いに不快感を示した。

一方、首相は会談で、来年度予算から導入する地方への一括交付金について、沖縄県分を「別枠」として優遇措置を継続する考えを伝えるとともに、来年度で終了する沖縄振興特別措置法に代わる新法を制定する方針を表明した。

首相が沖縄振興策を重視するのは、これを突破口にして普天間飛行場の辺野古移設に道を開きたいという思いがあるのだろう。日米合意履行に向けた環境整備である。

だが、沖縄振興と引き換えに米軍基地の「過重な負担」を押しつけるという自民党政権時代以来の手法はもう限界である。今、沖縄に充満しているのは、日本全体の安全保障の負担を沖縄が引き受けることへの強い疑問だ。「沖縄への差別だ」との声もある。本土と沖縄の意識の落差を埋める努力がなければ、振興策をいくら強調しても、移設問題の解決には結びつかない。

菅政権発足以降、普天間問題にはまったく進展が見られない。名護市では、1月の移設受け入れ反対を掲げる市長の誕生に続いて、9月の市議選で市長派が勝利した。県議会も県外移設を決議している。そして、かつて条件付きで辺野古移設を容認していた仲井真知事も、先月の知事選を経て「県外移設」に方針変更した。菅政権の思惑と沖縄の現実の隔たりは大きくなるばかりである。

にもかかわらず、普天間問題について首相は今回も、打開に向けた方向性を県側に提示することができなかった。近い将来、沖縄が「県内移設」受け入れに転換するとは考えにくい。残るのは普天間飛行場周辺住民の危険性の固定化である。

このまま事態が推移すれば、米国からも沖縄からも、菅政権は本気で問題を解決する気があるのか、という見方さえ出かねない。

日米合意には、辺野古への移設とともに具体的な負担軽減策が盛り込まれている。県外・国外への米軍の訓練移転などの軽減策を、移設問題と切り離して先行実施するための真剣な検討を重ねて求める。

読売新聞 2010年12月18日

首相沖縄訪問 普天間移設へ粘り強い努力を

遅すぎた沖縄への謝罪と言わざるを得ない。

菅首相が沖縄県を訪れて、仲井真弘多知事と会談した。6月の就任直後、沖縄の「慰霊の日」に日帰り訪問して以来のことだ。

首相は、鳩山前政権の失政で米軍普天間飛行場の移設問題を迷走させたことについて陳謝した。

11月末の県知事選での仲井真知事の再選まで、政府側は動きづらかったというのは言い訳になるまい。最低でも沖縄への謝罪は、もっと早くすべきだったろう。

最も罪が重い鳩山前首相が何もしていないのは、無責任極まる。普天間飛行場の名護市辺野古への移設を、白紙どころか、それ以上に困難な状態に後退させたことは首相辞任だけで免責されない。

本来は、前首相こそ、沖縄を謝罪行脚すべきだろう。

首相は会談で、辺野古移設について「ベストではないが、ベターな選択」として、理解と協力を求めた。だが、知事は県外移設を主張し、議論は平行線だった。

知事は、県外移設を選挙公約に掲げただけに、辺野古移設容認に転じるのは簡単ではない。

それでも首相は、辺野古移設の5月の日米合意を支持してきた以上、その実現に最大限の努力をする責任がある。沖縄と対話を重ね粘り強く解決を模索すべきだ。

朝鮮半島情勢の緊迫化や中国の海洋進出を踏まえれば、普天間飛行場を県外に移設し、海兵隊の抑止力を減退させる選択肢は、中長期的にも取り得ない。

結局、辺野古移設が実現しない限り、市街地にある米軍基地にヘリコプターが発着するという今の危険性が固定化されてしまう。在沖縄海兵隊8000人のグアム移転も大幅に遅れかねない。

首相は、そうした現実を沖縄側に率直に説明し、誠意を持って説得を続けることが大切だ。同時に沖縄振興や基地負担の軽減に最大限配慮することも必要となる。

特に重要なのは、普天間飛行場など米軍施設返還後の広大な跡地利用について、具体的な青写真を示し、地元自治体と本格的に協議を進めることだ。単に沖縄振興の名の下で、金をばらまくだけでは、地元の理解を得るのは難しい。

首相は、来春の訪米を普天間問題の決着期限としない考えを示している。今年5月という根拠のない決着期限を設定、自滅した前首相の(てつ)を踏まないためだろう。

ただ、何事も問題を先送りし、具体的な努力を避けるのは現政権の悪癖だ。普天間問題には正面から取り組まねばならない。

産経新聞 2010年12月16日

露副首相国後訪問 どこまで暴挙重ねるのか

ロシアの対日強硬姿勢が鮮明になってきた。11月のメドベージェフ大統領による国後島訪問に続き、シュワロフ第1副首相が国後と択捉の両島を訪問した。

日本固有の領土である北方四島の不法占拠を固定化し、「ロシア化」を図る暴挙であり、断じて許すことはできない。菅直人政権はロシア政府による挑発的外交を看過せず、実効ある対抗措置を講じるべきだ。

日本海で先週行われた日米共同統合演習では、ロシア軍機が演習空域中心部に繰り返し進入し、あからさまな妨害活動を行った。このために、北朝鮮の弾道ミサイルを想定した自衛隊と米軍のイージス艦による迎撃訓練が中止に追い込まれた。ロシア太平洋艦隊報道官は飛行を認め、「国際法に違反していない」と強弁した。

演習さなかの9日、来日したナルイシキン・ロシア大統領府長官は菅首相と会談、北方領土問題の協議継続を認める姿勢は示した。だが、大統領の国後島訪問は「ロシア国内の視察」と強調し、日本の抗議は「理解し難く、適切でない」と言い切った。

スルコフ大統領府第1副長官は大統領の国後島訪問には「ロシアの主権」を誇示する意味があり、「主権はいまやわれわれの政治の至上命令」と明言している。

一連の言動は、日露両国が「北方四島の帰属に関する問題を法と正義の原則により解決する」と約束した1993年の東京宣言を完全に反故(ほご)にするものだ。

「日本の領土要求に一切応じない」とするソ連時代の対日外交に逆戻りしたばかりか、北方領土を一方的にロシア化する意図を明確にしたことを意味しよう。このような歴史の捏造(ねつぞう)を日本政府は決して認めてはならない。

北方四島は戦後65年以上にわたり不法占拠が続いている。まずは政府首脳がこの歴史的事実を明確に指摘し、広く国際社会に訴えていく外交が必要だ。

菅首相は先に横浜で行われた日露首脳会談で、メドベージェフ氏にこれを最後まで明言せず、反対に「ロシア領だ」とたたみ込まれて、反論すらしなかった。

ロシアの恫喝(どうかつ)的な外交に屈せずに、断固たる姿勢を貫くことが何よりも大切だ。そのためには、力ずくで海洋権益拡大を図る中国も念頭に、日米同盟の強化を図ることが欠かせない。

毎日新聞 2010年12月15日

首相の沖縄訪問 意識の落差どう埋める

菅直人首相は17、18両日、沖縄県を訪問し、再選された仲井真弘多知事と会談する。首相就任後の訪問は6月に次いで2回目である。

菅政権は、米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移転を盛り込んだ日米合意(5月28日)の履行を掲げる。しかし、首相は今回の訪問では、沖縄振興策を中心に、まず普天間問題を話し合う環境整備を優先したい考えのようだ。

普天間移設問題が中心になれば、知事選で「県外移設」を公約した知事との話し合いは平行線に終わり、決裂との印象が強くなる。辺野古移設が沖縄の負担軽減に結びつくことや振興策を強調して、今後の話し合いにつなげたいという思いとみられる。仕切り直しである。

そんな時に飛び出したのが、仙谷由人官房長官の「甘受」発言だ。長官は13日の記者会見で、日米同盟深化と日韓連携強化の必要性を指摘したうえで、「沖縄の方々もそういう観点から、誠に申し訳ないが、こういうこと(基地負担)について甘受していただくというか、お願いしたい」と語った。

長官は14日に撤回したが、沖縄では反発の声が出ている。仲井真知事は同日の県議会で「理解ができない表現で、誠に遺憾であるとしかいいようがない」と不快感を示した。

首相自身も就任後、沖縄の米軍基地の負担に対して「お礼」「感謝」を表明し、沖縄の反感を買ったことがある。これらの言葉が、引き続き「過重な負担」を押しつけるメッセージと映ったからだ。

普天間問題迷走の直接の原因が、鳩山由紀夫前首相の「国外、最低でも県外」発言と、最終的に政府方針が辺野古移設に舞い戻った経緯にあるのは間違いない。しかし、今、沖縄を覆っているのは、安全保障の恩恵を日本全体が享受しているのに、なぜ沖縄だけが「過重な負担」を押しつけられなければならないのか、という思いである。沖縄に対する本土の「差別」と映っているのだ。

基地負担軽減、普天間の県外移設を求める圧倒的多数の沖縄県民が、日米同盟の強化、抑止力維持を理由に負担への「お礼」「感謝」「甘受」発言を繰り返す菅内閣に不信を募らせ、自らと政府の意識の落差に憤りを覚えるのは当然だろう。

また、首相の沖縄訪問を控えた時期に問題発言をする仙谷長官の政治的センスも疑わざるを得ない。

政府と沖縄がすれ違ったままでは普天間問題の解決はおぼつかない。必要なのは、沖縄の「差別されている」という意識に正面から向き合い、負担軽減に真剣に取り組むことではないか。「甘受」発言から、その姿勢はまったく感じられない。

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