民主党の内紛 有権者の目をおそれよ

朝日新聞 2010年12月14日

政倫審出席 小沢氏はもう逃げるな

これ以上、国会での説明から逃げ続けることが許されるだろうか。民主党の小沢一郎元代表は今度こそ衆院政治倫理審査会への出席を決断すべきだ。

民主党はきのうの役員会で、岡田克也幹事長が改めて小沢氏に自発的な政倫審出席を求めることを決めた。小沢氏があくまで応じないなら、政倫審での議決も辞さない方針だ。

小沢氏は裁判で事実関係を明らかにするので、国会での説明は必要ないとの立場を崩していない。岡田氏は早急に小沢氏を説得し、不調に終われば、議決による国会招致の実現をためらうべきではない。

小沢氏の政治資金をめぐる一連の問題は、民主党にとって、政権交代前から続く宿痾(しゅくあ)といっていい。

それは、鳩山由紀夫、菅直人の2代にわたる首相の政権運営の足かせになったというばかりではない。

自民党時代と変わらぬ「政治とカネ」の問題に、一向にけじめをつけられない民主党。その姿が、政権交代への、ひいては日本の政党政治そのものへの国民の深い幻滅を招いた。

朝日新聞の最新の世論調査では、なお7割近くが小沢氏に国会での説明を求めている。

野党各党は偽証罪に問われうる証人喚問を求めており、政倫審は最低限のけじめに過ぎない。しかし、それすら実現できないようなら、年明けの通常国会はまた与野党の不毛な対立の繰り返しとなるだろう。通常国会が始まる前に、この問題に一定の区切りをつけておくことは必須の作業である。

小沢氏は最近も「政権交代の試みを何としても成功させたい」と語っている。それが本心なら、その成功を邪魔しているのは説明責任を果たそうとしない小沢氏自身の姿勢であることに、なぜ思いを致さないのだろうか。

菅内閣の支持率は続落し、来春の統一地方選の行方を占うとして注目された茨城県議選も、極めて厳しい結果に終わった。

政権の窮状は、もちろん小沢氏の問題だけが原因ではない。この間の外交失態や閣僚の失言について、最高指導者である菅首相は自らの責任の重さを厳しく受け止めなければいけない。

国民のための政策をきちんと立案し、実行する。そのための指導力の発揮と態勢の立て直しにこそ、菅首相は全力をあげねばならない。小沢氏の問題への対処は、その前提となる。

民主党には、税制改正や来年度予算編成が山場を迎えているこの時期に、内紛を重ねている余裕はない。

「小沢か、脱小沢か」の対立から、いい加減に卒業しなければならない。

民主党のすべての国会議員は、政治そのものへの有権者の信頼が失われつつあるという強い危機感を共有して、ことに臨むべきである。

毎日新聞 2010年12月14日

民主党の内紛 有権者の目をおそれよ

民主党の小沢一郎元代表の政治資金問題に関する国会招致をめぐり、党は混乱を深めている。衆院政治倫理審査会への小沢氏出席の議決について党役員会は意見が割れ、岡田克也幹事長は議決を党の方針として決定するに至らなかった。

統一地方選の前哨戦である茨城県議選で民主党は不振を極め、世論の逆風を裏づけた。遅きに失した招致問題の決着に執行部がやっと乗り出した格好だが、それすら腰砕けに終わるのであれば、いよいよ国民の不信を強めよう。

迷走した臨時国会が終わったとたん、今度は党内抗争が勃発した。小沢氏問題に手をこまねいていた岡田幹事長が政倫審出席に向け収拾に乗りだし、菅直人首相も同調した。これに小沢氏が率いるグループが激しく反発し、さきの代表選以来くすぶっていた対立構図に火がついた。

来年度予算編成を控えた重要な時期に与党が政争で混乱することが好ましくないことは言うまでもない。そもそも小沢氏の国会招致問題は首相や岡田氏がさきの臨時国会で解決すべき問題だった。

それだけに、岡田氏は役員会で小沢氏が国会で説明する方針を今度こそ明確に決すべきであった。ところが結局は幹事長への一任にとどめたのは、党が分裂状態に陥る懸念からとみられる。対立激化を覚悟したうえでの調整ではなかったのか。

もちろん、小沢氏の対応も問われる。「一点もやましいことはない」と言うのであれば、国会で自らの主張を説明すればいい。鳩山由紀夫前首相らと協議し、党分裂の回避で一致したという。ならば、進んで国会で説明責任を果たすことが党の結束を維持するためにも最善のはずだ。

茨城県議選で民主党は改選前の6議席を維持したが、公認・推薦候補を24人も擁立しており、実態は惨敗だ。来春の統一選を控え、他の地方選挙でも民主党の苦戦が目立つ。外交問題の動揺など菅内閣に対する失望感が国民の怒りに転じつつある表れだろう。そんな中で招致問題での内紛は「何をやっているのか」という思いを一層、加速させるはずだ。

危機的な状況をよそに首相は12日夜、支持者らを前に「(首相就任から半年の)仮免許を経て、これからが本番だ」と語ったという。これまで半年の政権運営は慣らし運転だから勘弁してくれ、とでもいうのだろうか。これでは、為政者としての自覚すら疑ってしまう。

次期国会に向け、菅内閣が立ち直るには閣僚、党役員人事などの体制立て直しが必要だ。だが、それ以前に、首相や小沢氏が国民の怒りと不信を真剣に受け止めないようでは負の連鎖は止まらない。

読売新聞 2010年12月14日

混迷民主党 小沢氏の招致を先送りするな

民主党が13日、小沢一郎元代表の政治倫理審査会への招致について、事実上決定を先送りした。岡田幹事長が小沢氏と再度会談し、改めて出席を働きかけるという。

この問題を議論した役員会のメンバーの輿石東参院議員会長らは招致は不要との姿勢を崩していない。小沢氏支持の議員も岡田氏を強く批判しており、招致が実現できるめどは立っていない。

これではまるで茶番である。野党各党が一斉に「腰砕け」と批判している通りだ。

強制起訴されることになった小沢氏の国会招致は、昨年来の懸案だ。政治とカネに対する国民の疑問に答えるためにも、岡田氏が政倫審実現に動いたのは、正しい判断といえよう。

民主党に自浄能力があることを示す意味からも、菅首相は自ら指導力を発揮し、政倫審への招致を実現させるべきである。

ただ、政倫審には強制力がなく小沢氏が出席を拒む限り、実現しない。小沢氏は「政倫審より厳しい裁判の場で説明する」とし、国会での説明は不要と主張する。

これはおかしい。岡田氏も指摘する通り、司法の判断と政治的な説明責任は別物だ。そもそも、疑惑を持たれた政治家の弁明の場である政倫審を1985年に作ったのは、当時、衆院議院運営委員長だった小沢氏ではないか。

小沢氏は「一点もやましいことはない」と言う以上、堂々と政倫審に出て説明を尽くすべきだ。小沢氏が出席を拒み続けるなら、野党側の求める証人喚問を実現させるしかあるまい。

心配なのは、小沢氏の招致問題で党内対立が激化して、国政を停滞させることだ。来年度予算編成が越年でもすれば、景気への悪影響が懸念される。内輪もめをしている時ではない。

民主党への国民の視線は厳しいものがある。地方選では公認・推薦候補の落選が相次いでいる。

統一地方選の前哨戦とされる12日投開票の茨城県議選も、候補者の4分の3が落選する惨敗を喫した。昨年の総選挙では県内7小選挙区のうち5選挙区で勝利した。当時の勢いは見る影もない。

政策遂行能力の低さや外交の不手際に加えて、小沢氏の国会招致すら容易に実現できない菅政権の決断力のなさが、選挙での逆風の要因ではないか。

菅首相は、通常国会に向けて早急に態勢を立て直さなければならない。その第一歩が、小沢氏の政倫審招致実現である。

産経新聞 2010年12月14日

小沢氏招致要請 「茶番劇」としか映らない

民主党は小沢一郎元代表の国会招致問題で、政治倫理審査会への出席が必要なことを役員会で確認するとともに、岡田克也幹事長に今後の対応を一任した。

だが、岡田氏が提案した政倫審の議決により小沢氏に招致を求める方針は、党内の強い反対論にあってひとまず先送りされた。

岡田氏が一両日中に小沢氏との会談を求め、出席を要請するというが、これでは従来と変わらないではないか。さきの臨時国会でも同様なことが繰り広げられ、岡田氏は説得に失敗した。

もはや、国民の目には、「茶番劇」としか映らない。

茨城県議選で、民主党は公認・推薦した候補24人のうち6人しか当選しない惨敗を喫した。民主党に注がれる有権者の視線はきわめて厳しい。小沢氏の政治とカネの問題に決着をつけ、自衛隊は「暴力装置」と表現して問責決議を採択された仙谷由人官房長官を更迭するなどして、解党的な出直しが求められている。

党役員会は小沢氏が出席を拒めば、改めて党として方針を決めざるを得なくなることも確認した。だが、岡田氏が小沢氏と会談しても、結果的に政倫審への出席を拒まれることを繰り返すのではないか。野党側も強制力のない政倫審では疑惑解明ができないとして、証人喚問を要求している。

小沢氏は最近も「やましいところはない」などと述べているが、政倫審での弁明を拒否し、説明責任を果たしてこなかった政治的・道義的責任はきわめて重い。岡田氏が「司法の場でやるから国会での説明は必要ないという考え方は違う」と述べたのは当然だ。

耳を疑うのは、首相が支持者との会合で「就任して今までは仮免許だった」と発言したことだ。就任から半年間の職務が不十分だったことを認めるようなもので、最高指導者としての自覚の欠如を示している。

産経新聞社とFNNの合同世論調査では、衆院解散を「できるだけ早い時期に行うべきだ」との回答が47%に達した。民主党政権の外交・安全保障政策に対して「評価しない」が82%に上るなど政策面での批判が強まっている。

民主党政権の是非を国民が改めて問い直すべきだと判断していることを、為政者は重く受け止めなければならない。

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