毎日新聞 2010年12月08日
日米韓外相会談 中国は「北」説得に動け
日米韓の外相がワシントンで会談し、北朝鮮に挑発行為や核開発をやめさせるため結束して対応していくことを確認した。3外相は併せて、北朝鮮を非難し中国が北朝鮮に自制を促すよう求めていくことでも一致し、共同声明として発表した。
ウラン濃縮施設の公開や韓国・延坪島砲撃という北朝鮮の挑発行為は、北東アジアの平和と安定にとって極めて重大な脅威だ。しかし、世界の安全に責任をもつべき国連安全保障理事会の動きは鈍い。
こうした中で日米韓3カ国が北朝鮮の挑発を安全保障上の共通脅威ととらえ、結束して対処していく決意を表明した意味は大きい。北朝鮮は日米韓のメッセージを真摯(しんし)に受け止め、挑発行為を直ちに停止しなければならない。中国は大国としての責任を自覚し、北朝鮮説得に動き出すべきだ。
3外相声明が北朝鮮による韓国砲撃に「重大な懸念」を表明し、1953年の朝鮮戦争休戦協定の順守を求めたのは当然だ。北朝鮮は韓国軍が「わが方の領海」に砲撃したため軍事的措置をとったと主張しているが、説得力はない。米国を協議に引き込む狙いなどの「ゆがんだ意図」(前原誠司外相)が国際社会に受け入れられるはずがないことを悟るべきだ。
北朝鮮が先月、米国の専門家にウラン濃縮施設内の遠心分離機を見せつけたのも国際社会に対する重大な挑戦だ。ウラン濃縮は国連安保理決議や核放棄を約束した05年の6カ国協議共同声明に違反するのは明らかだ。しかし、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)の要員を国外退去させており実態を探るのは難しいのが現実だ。
朝鮮半島の緊張を緩和させるには、やはり北朝鮮への影響力をもつ中国の役割が大きいと言わざるを得ない。3外相声明も、北朝鮮に6カ国協議共同声明を順守させるための中国の努力に期待を表明している。
中国は韓国砲撃事件を受け、「朝鮮半島の平和・安定を守ることは関係各国の共同責任」として6カ国協議の首席代表による緊急会合を提案している。しかし、北朝鮮が挑発的言動を続ける中でそれに応じる選択肢があろうはずはないだろう。クリントン米国務長官が会見で、中国の提案を評価しながらも「まずは北朝鮮が挑発的行動をやめなければならない」と述べたのは当然だ。
3外相声明はロシアとの協力強化の必要性も盛り込んだ。前原外相が会見で「3カ国対3カ国にならず、5カ国が一致して北朝鮮に働きかけることが重要だ」と述べたのは的確な指摘だ。ロシアも北朝鮮説得に汗を流すべきだ。
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読売新聞 2010年12月08日
日米韓外相会談 中国と連携し対北圧力強めよ
日米韓3か国は今後、中国、ロシアとも連携して北朝鮮包囲網を再構築し、北朝鮮に外交、軍事両面で圧力を強めることが重要となろう。
前原外相、クリントン米国務長官、金星煥韓国外交通商相が米国務省で会談し、北朝鮮問題に関する共同声明を発表した。北朝鮮の韓国・延坪島砲撃を非難するとともに、核放棄に向けた具体的な行動を求めている。
北朝鮮による砲撃とウラン濃縮活動の公表で、朝鮮半島情勢は緊迫している。日米韓の外相が一堂に会し、3か国の結束を確認した意義は小さくない。
3外相が、中国が提案した6か国協議再開の条件として、「非核化に真に取り組んでいることを示す具体的な措置」を北朝鮮が取るよう求めたのは、当然だ。
無謀な軍事行動で韓国民間人の犠牲者まで出しながら、何の罰則もなしで済ますべきではない。
核やミサイルで挑発し、外交交渉に持ち込んで見返りを得る――そうした北朝鮮の常套手段に安易に乗るのは禁物だ。いずれは6か国協議を開くとしても、今、歩み寄るべきは北朝鮮である。
今後のカギは中国だ。6か国協議議長国として、より大きな役割を担わせなければならない。
中国は、食糧・エネルギー供給を通じて北朝鮮へ一定の影響力を有しながら、今は北朝鮮を刺激しないことを最優先している。だが、事態の打開には、「具体的な措置」を取るよう中国が真剣に北朝鮮を説得することが不可欠だ。
日米韓外相会談に先立ち、オバマ大統領は胡錦濤国家主席に電話し、「北朝鮮に対し、挑発は容認できないとの明確なメッセージを送るよう迫った」という。
米国は水面下でも、「北朝鮮問題が前進しなければ、来年1月の胡主席訪米は成功しない」と中国に強く働きかけているとされる。この動きを、日本と韓国が最大限、側面支援することが大切だ。
軍事面の日米韓協力も欠かせない。自衛隊と米軍は3日から、日本近海で過去最大規模の共同統合演習を実施中で、韓国軍もオブザーバーを派遣している。
北朝鮮のさらなる軍事的挑発を防ぐには、日米韓3か国の抑止力を高め、その実効性を確保する作業が肝要である。
マレン米統合参謀本部議長が日韓両国訪問を開始した。共同演習にとどまらず、朝鮮半島有事における日米韓の具体的な役割分担を協議し、共同作戦計画を作成・充実させる一歩とすべきだ。
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産経新聞 2010年12月08日
日米韓外相会談 連携して対中圧力強化を
前原誠司外相とクリントン米国務長官、金星煥韓国外交通商相との3カ国外相会談が米国で開かれ、北朝鮮による韓国砲撃やウラン濃縮問題に緊密に連携して対処することで合意し、中露両国にも積極的役割を期待する共同声明を発表した。
北の行動はアジア太平洋の平和と安全を脅かす暴挙であり、日米韓が一致して制裁強化など厳しい対処方針を示したのは当然である。だが、それには北に最大の影響力を持つ中国が応分の責任を果たすことが欠かせない。日米韓はさらに連携して中国への外交圧力を高め、責任ある行動を求めていく必要がある。
共同声明は北の砲撃を強く非難し、ウラン濃縮を国連安保理決議や6カ国協議共同声明への明確な違反とした。6カ国協議再開の条件として南北関係改善や非核化の具体的措置を示すよう北に求め、大量破壊兵器拡散を阻止するための多国間協力も強化する。
日米韓外相会談を開くのは、北が初の核実験を強行した2006年10月以来4年ぶりだ。今年3月の韓国哨戒艦撃沈から砲撃、ウラン濃縮に至る中で、「北の挑発と攻撃がアジアの平和と安定を危険にさらしている」(クリントン長官)とする日米韓の重大な共通認識と決意を示すものだ。
にもかかわらず、事態がここに至っても中国の姿勢は曖昧としかいいようがない。会談後、韓国の金外相が「より鮮明に、北に警告してほしい。朝鮮半島の安全に貢献していない」と語ったように、哨戒艦事件や今回の砲撃でも中国が北を直接非難しようとすらしないことに問題がある。
中国は国連安保理常任理事国で6カ国協議議長国でもある。北がその両方の場で合意違反を重ねている以上、さらなる制裁や非難を主導するのが当然の責務であることを強く認識してもらいたい。
外相会談に先立ち、オバマ米大統領は中国の胡錦濤国家主席と電話首脳会談を行って中国の影響力行使を求めたが、実質的にはすれ違いで終わったという。
オバマ氏は北の砲撃に「激怒している」と伝えられた。来年1月の胡主席訪米を控えて対中説得に遠慮があったとすれば、残念だと言わざるを得ない。
日米韓の結束を維持していく上でも、米国の決意と指導力がとりわけ重要だ。オバマ政権にはそのことも注文しておきたい。
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