国際学力テスト 向上の流れを確かに

朝日新聞 2010年12月08日

国際学力調査 根づいたか「未来型学力」

各国の15歳(高校1年生)が参加する学習到達度調査(PISA)の昨年の結果が、公表された。日本の子が苦手とされてきた「読解力」の分野で、国別順位が改善したのが目を引く。

10年前に始まったPISAでは、日本の順位低下が続いていた。政府の新成長戦略でも「世界トップレベルの順位をめざす」と書き込まれた。文部科学省は、一連の政策が功を奏したと、胸をなでおろしたことだろう。

だが、21世紀を生き抜くための力が日本の子どもたちに備わってきたと、本当に喜んでよいだろうか。

このテストは、情報化・グローバル化が進んだ時代に必要な学力の国際指標といってよい。学んだ知識や技能を使い、実生活で出くわす場面をどう切り開くか、を問う。日本が得意としてきた知識の積み上げだけでは、なかなか身につかない力だ。

日本の子の読解力の点数は、確かに上がった。だが、文章の中のいくつかの情報を関連づけたり、自分の知識や経験と結びつけたりするのは、やや難ありと指摘されている。別の質問調査では、ネット上で討論に参加したり、生活情報を検索したりする生徒は、各国平均より少ないと分かった。

与えられたものは的確に読み取れるが、言葉という道具を駆使して他人と交わり、考えを深め、社会に役立ててゆくような力強さはまだまだ。そんな日本の子の姿が浮かぶ。

この10年、様々な学力向上策がとられてきた。まずやり玉に挙がったのが「ゆとり教育」だ。基礎・基本の知識を固め直そうと、学びの量を増やす方向に急激にカジが切られた。3年前には全国学力調査が復活。点数を競い合う空気も強まった。

一方、PISA型学力や読解力を意識した取り組みも進められた。新しい学習指導要領は「生きる力」を掲げ、応用力や表現力を伸ばせ、と説く。全国学力調査では、PISAとよく似た「活用」問題が出題されている。

「必要な学力とは何か」をめぐり、教育現場は振り回されてきた。この間のどんな努力が結果に結びつき、まだ何が足りないか。今こそ詳しい検証と整理とが必要だろう。

読解力対策として「朝読書」の活動が広がっている。今回の調査でも読書が身近になったのはうかがえた。冊数を競うだけでなく、感想を話し合い、違う意見もとりいれて発表する。そんな学びを大いに進めたい。

来春から小学校で使われる教科書はぐんと厚くなる。増えた分量を教え込むのに時間をとられては、考える力をつけさせる余裕はなくなる。教科書の使い方や教科を横断するような形式の授業にも、工夫が必要だ。

未来に向けて腰を落ち着け、学びの質を変えてゆくときだろう。

毎日新聞 2010年12月12日

論調観測 国際学力テスト 何のための学力なのか

かつて日本人は勤勉で教育熱心だと思われていたが、そんな常識に冷水を浴びせたのが00年から始まった国際学力テスト「PISA」だった。経済協力開発機構(OECD)が義務教育終了段階の生徒を対象に3年ごとに実施している。丸暗記ではなく実際の生活の中で直面する問題に対応する力を見るテストだ。日本は00年に「読解力」が8位だったのが、03年に14位、06年に15位と落ち込んだ。これが「ゆとり教育」の見直しにつながった。

今回は「読解力」が8位となり、「数学的リテラシー」や「科学的リテラシー」も少し向上した。だが上位には上海、韓国、香港、シンガポールなどアジア勢がずらりと並んだ。

「ゆとり教育路線の見直しや、読書活動の普及などに取り組んできた成果だろう」「学校現場は気を緩めず、学力の向上を図ってもらいたい」というのは読売だ。アジア各国の台頭を指摘した上で「PISAと同じ応用力を問う問題が出される全国学力テストは有効だろう。民主党政権はコスト削減を理由に抽出方式に変えたが、全員参加方式に戻すべきだ」「見劣りしない能力をつけさせることは国の責務だろう」と政府に注文を付けている。

これに対し日経は「PISAで学力というものの全体像をつかめるわけではない。得点に一喜一憂するのも本末転倒だ」と指摘する。東京も「順位に一喜一憂する必要はない」という。

ゆとり教育とその見直しをめぐって日本の教育行政はこの10年揺れ続けてきた。朝日は「この間のどんな努力が結果に結びつき、まだ何が足りないか。今こそ詳しい検証と整理とが必要だろう」「未来に向けて腰を落ち着け、学びの質を変えてゆくときだろう」と呼びかける。

「テストを受けた生徒は小学校3年時から現行の『ゆとり』学習指導要領で学んでいるが、そうした中で総合学習などがどう生かされたかも検証は有用だろう」というのは毎日だ。

順位ばかりが注目されるが、上位の国と比べて日本は成績の良い子と悪い子の二極化が目立った。読書を趣味とする生徒も少ない。PISAから浮かび上がる課題を現実の教育にどう生かしていくのかが問われている。「状況を大きく前進させるには入試改革が不可欠だ。思考や表現を重視する授業を普及させるには高校、大学が手間をかけた試験を避けてはならない」と毎日は論じたが、さらに議論を深めていく必要があるだろう。 【論説委員・野沢和弘】

読売新聞 2010年12月09日

国際学力調査 応用力を鍛えて向上めざせ

日本の子どもたちの学力低下傾向に歯止めがかかったようだ。

経済協力開発機構(OECD)が昨年実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果が公表された。

義務教育を終えた15歳を対象に、2000年から3年ごとに行われ、昨年は65の国と地域が参加した。知識を実生活でどれだけ生かせるかを測る調査である。

日本は第1回調査で「数学的応用力」1位、「科学的応用力」2位、「読解力」8位の成績だった。ところが、その後低下の一途をたどり、前回の06年は「読解力」が15位に低迷するなど、教育関係者に衝撃を与えていた。

今回、読解力は8位に、数学、科学もそれぞれ9位、5位へと順位を上げた。

ゆとり教育路線の見直しや、読書活動の普及などに取り組んできた成果だろう。文部科学省は胸をなでおろしている。

来年度以降、教える内容を増やす新学習指導要領が全面実施される。学校現場は気を緩めず、学力の向上を図ってもらいたい。

ただ課題も浮かびあがった。

「社会生活を営む上で支障があるレベル」とされる低学力層の割合が、日本は三つの分野とも1割を超えていた。上位10か国・地域の中では目立って高い。

授業内容を理解できないままの子どもはいないか。先生が細かく目を配り、つまずきを克服するまで指導することが大切である。

記述式の問題で日本は無解答が多かった。日頃から本や新聞を読んで自分の考えをまとめる習慣をつけさせるなど、学校や家庭で表現力を育てる工夫を重ねたい。

学力向上には指導方法の検証と改善が欠かせない。その意味でPISAと同じ応用力を問う問題が出される全国学力テストは有効だろう。民主党政権はコスト削減を理由に抽出方式に変えたが、全員参加方式に戻すべきだ。

目を引くのはアジア勢の台頭だ。地域として初参加した中国の上海が全分野で1位となった。他の国と単純に比べられまいが、得点の高さは際立っている。応用力重視のカリキュラムを組み、大学入試とも連動しているという。

シンガポールや香港、韓国も総じて日本を上回っている。

アジアの優秀な学生を日本の本社で採用する企業も現れ始めた。日本の若者が各国のライバルと就業を競う時代に入っている。

自己表現力や対話能力も問われる。見劣りしない能力をつけさせることは国の責務だろう。

産経新聞 2010年12月09日

国際学力調査 「8位」で手綱を緩めるな

65カ国・地域の15歳(高校1年生)を対象にした経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査(PISA(ピザ))で日本は読解力8位、数学的応用力9位、科学的応用力5位という結果が出た。前回より成績が上がったとはいえ、決して楽観できない。上海や韓国などアジアのライバルの学力向上熱は高い。世界に目を向け、一層学ぶ努力が必要だ。

調査は3年ごとに行われ、文章や資料から情報を読み取り、理由を記述するなど思考力を問う問題が特徴だ。学力は経済力や国力に反映することから調査への関心が高まり参加国が増えている。

日本の成績は、2000年調査と比べて前回の06年調査で読解力(8位→15位)、数学(1位→10位)、科学(2位→6位)と落ち込み、ゆとり教育の弊害が顕著に出た。今回は全員参加の全国学力テストを受けた生徒が対象で、ゆとり教育見直しの効果が表れ始めたといえる。だが「学力が改善した」と手綱を緩めるのは早い。

読解力は、国語以外の教科にもつながる力だが、もともと日本の成績は悪い。読書習慣がある生徒の割合も参加国の中でまだ低い。日本は学力下位層が多く、格差も解消されていない。

脱ゆとり教育は緒に就いたばかりだが、民主党政権は学力テスト方式を全員参加から一部参加に変えた。「競争」から目をそらしている。教育の成果を適切に評価する取り組み姿勢に欠ける。

今回、初参加した上海は中国内で富裕層が多く、教育水準が高い地域だ。国別の学力として単純比較はできず、順位で一喜一憂する必要はない。だが、高校生らの国際科学五輪で中国は金メダルを独占するなどトップレベルを鍛える学力向上策を進めている。韓国も小中高校で学力テストを全員参加型にしている。

さらに、高等教育に目を転じると、近年、米国など海外の大学・研究機関に武者修行に出る日本の若手が少なくなり、目立つのは中国、韓国の若手研究者だ。

米国で研究生活を送ったノーベル化学賞の根岸英一氏は授賞式を前に、若者に「好きなことを見つけ突き進め」と言葉を贈ったが、ゆとり教育では難しいことを教えず、かえって勉学の面白さをそいだといわれる。将来の日本が世界と競い合うためにも、若い世代はひたすら学ぶしかない。

毎日新聞 2010年12月08日

国際学力テスト 向上の流れを確かに

国際学力テスト「PISA」の読解力設問は、例えばこんな具合だ。

「長時間の通勤ラッシュを避け、好きなように仕事をするため、コンピューターなどの情報ハイウエーを使った在宅勤務を」と言う女性。

これに対し「ラッシュや通勤の不便は、公共交通機関を便利にしたり、職場と住居を近づけて解決すべきだ。在宅勤務では、ますます自分のことしか考えず、社会の一員である自覚が失われる」と言う男性。

その論点の対立や共通点を考えさせ、「在宅勤務が難しい仕事」を挙げてその理由を書かせる……。

経済協力開発機構(OECD)が義務教育終了段階の生徒を対象に3年ごとに実施するPISAは、暗記知識の量を測るのではない。社会生活で直面する諸課題に対応する力がどのくらい身についているかを見ることに主眼がある。読解力のほか、数学的リテラシー(活用力)、科学的リテラシーの分野で行われる。

09年結果で、日本は読解力で前回15位から8位と向上を示し、下降していた数学も科学も「下げ止まり」になった。00年開始以来PISAショックともいうべき動揺を受けていた教育界には朗報だろう。

だが、この流れを今後確かなものにし、社会活動に生かす実践力に育てるためには、取り組みを強めていくべき課題がいくつかある。

一つは読書のさらなる推進だ。

向上の背景には、学校の始業時などを活用した読書活動や、PISA型の読解力を高めるよう工夫した授業があると文部科学省はいう。小説や物語に親しむ生徒は、そうでない生徒より平均点が大きく上回る。だが「趣味で読書をすることはない」生徒は日本はなお44%で、OECD平均の37%と差がある。楽しい読書習慣をもっと定着させたい。

学力格差も看過できない。文科省が社会生活上支障もあるというレベルの結果となった生徒が、どの分野も1割を超え、上位が増える一方で下位がそれほど減らない状況だ。二極化が進むことも懸念される。

経済格差の問題もある。自室など物的環境に恵まれているほど好成績との結果があり、教育機会の平等という観点から総合的対策が必要だ。

テストを受けた生徒は小学校3年時から現行の「ゆとり」学習指導要領で学んでいるが、そうした中で総合学習などがどう生かされたかも検証は有用だろう。

状況を大きく前進させるには入試改革が不可欠だ。思考や表現を重視する授業を普及させるには高校、大学が手間をかけた試験を避けてはならない。暗記知識の多寡でコンピューター処理するような試験は、PISA型学力からは最も遠い。

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