東北新幹線の八戸―新青森間が4日開業した。大宮―盛岡間の開業から28年、ようやく本州北端までの延伸である。
東京とは、従来より39分短い3時間20分で結ばれる。来年3月に高速の新型車両「はやぶさ」が投入されれば、所要時間はさらに短縮される。
ねぶた祭りや津軽三味線など豊富な観光資源を抱える青森では、延伸が地域振興の起爆剤になるとの期待が高まっている。
豊かな自然や伝統文化を持つ地方の魅力が再発見される契機となり、観光需要の掘り起こしにつながれば、政府が掲げる成長戦略にも合致するのではないか。
来年3月12日には、九州新幹線の博多―新八代間の開業で鹿児島ルートも全線開通する。新大阪―鹿児島中央間は、77分短縮されて3時間45分となる。
鉄道の乗車時間が4時間を超えると航空機利用が増える「4時間の壁」があるとされる。東北、九州が大都市圏から3時間台で結ばれることで、列島を縦貫する新幹線が、長距離移動の足の選択に影響を与えるのは確実だろう。
1964年の東海道新幹線以来、新幹線は高度成長の夢を乗せて走り続けてきた。73年には、北海道、東北、北陸、九州の整備新幹線5路線が決定され、2014年度末に長野―金沢、15年度末に新青森―新函館が完成予定だ。
しかし、開業区間では、地方都市の多くが経済不振に苦しみ、「新幹線が来れば、観光客や企業が増えて地元が潤う」という思惑通りには進んでいない。
新幹線開通で、逆に人や企業が大都市に吸い込まれるストロー効果が各地で指摘されている。
建設費の3分の1を受け持つ地方の重い財政負担や、開業後にJRから自治体に運営が移管される並行在来線の経営難という課題も共通している。
問われるのは、ブームが一巡した後にも「新幹線効果」を持続させる青写真を地方が持っているかどうかだ。新幹線駅を街づくりの中核とした長野県佐久市のような成功例は、少数にとどまる。
民主党政権は、北海道、北陸、九州の整備新幹線の未着工部分について、費用対効果を見極めるとして、自公政権が掲げた09年中に一部を着工するとの方針を撤回した。国や地方の厳しい財政を考えれば、やむを得まい。
着工を待つ関係自治体や自民党などには、早期着工を求める声が根強いが、財源を手当てするのが先決である。
この記事へのコメントはありません。