W杯招致惨敗 国を挙げて努力したのか

毎日新聞 2010年12月04日

W杯招致惨敗 国際人の養成が近道だ

2018年と22年のサッカー・ワールドカップ(W杯)の開催地が決まった。18年はロシア、22年はカタールで、いずれも初開催となる。22年大会に立候補していた日本は国際サッカー連盟(FIFA)理事による投票で早々と脱落、韓国と共催した02年大会に続く2度目のW杯招致の夢はあっさりとついえた。

現地時間2日の投票に先立つ最終プレゼンテーション(招致演説)で日本は、最新技術を駆使した立体映像によるパブリックビューイングをFIFA加盟の208カ国・地域で実施することや、世界から6000人の子どもたちを招待する教育プログラムを披露。豊かな技術大国にふさわしい提案だったが、理事の支持を得ることはできなかった。

最初の投票で日本はわずか3票、2回目で2票に減り、この時点で招致レースから脱落した。日本サッカー協会の小倉純二会長も理事として1票を投じたことを思えば、「残念だった」ではすまされない惨敗と言わなければなるまい。

惨敗に至った経緯をしっかりと精査し、招致活動のどこに欠陥があったのか、日本の提案に何が不足していたのかを検証する必要がある。

まず、今回の招致運動は国民的な盛り上がりに支えられていただろうか。8年前に韓国とともに開催したばかりのW杯を、なぜ12年後にまた日本で開催するのか。投票権を持つFIFA理事以前に、国内で疑問に思った人も少なくないだろう。

日本招致を主導した協会の犬飼基昭前会長がこの夏、わずか1期で退陣。メーン会場に予定した大阪の競技場新設をめぐっても大阪府知事が投票直前になって反対を表明するなど足並みの乱れが露呈し、他国と争う以前に自滅した側面がある。

巨額なテレビ放映権料とスポンサー資金が注がれるW杯は五輪同様、すでに巨大な利権と化している。今回の投票を前に、英紙の「おとり取材」が、投票をめぐる買収に応じるFIFA理事の存在を暴き出し、2人の理事が投票から除外された。

日本の惨敗が「クリーンな招致活動」を証明するものであるなら、それはそれで納得しよう。だが、日本の潔白さはFIFAに強い影響を及ぼすものでなければ意味はない。

昨年、16年夏季五輪の開催地投票で東京は今回同様、2度目の投票で脱落した。世界のスポーツ界で日本が地盤沈下を続けている。この閉塞(へいそく)感を打ち破るには、人材の育成以外にない。世界のスポーツ界の発展に貢献する人材を育て、世界の仲間からの信頼を得て、影響力を行使する。手当たり次第の招致合戦に大金を使うよりも、遠回りのようだが、その方が近道と思えてならない。

産経新聞 2010年12月04日

W杯招致惨敗 国を挙げて努力したのか

日本も立候補していたサッカーのワールドカップ(W杯)2022年大会の開催地がカタールに決まった。国際サッカー連盟(FIFA)理事による選挙は過半数の獲得国が出るまで最下位の候補地を振り落とす方式で、5候補のうち日本は2回目の投票で落選した。惨敗といえる。

世界の400カ所に実物大の立体映像を配信してパブリックビューイングを行うなど「次世代W杯」を訴えた日本のコンセプトには夢があった。日本がテクノロジー先進国として世界をリードする絶好の機会ともなり得ただけに、残念だ。

敗因は、日本の発信力不足だろう。例えばFIFAによる事前の報告書で日本は政府保証の弱さが懸念されていた。いわば国としての「やる気」である。これを払拭する最後のチャンスが投票直前のプレゼンテーションだった。

招致委員会は菅直人首相に出席を要請した。首相に代理を打診された鳩山由紀夫前首相は「あまり期待しないで」と言葉を濁し、結局、登壇したのは鈴木寛文部科学副大臣だった。世界にアピールする人選だったとはいえない。

王族が招致を主導したカタールは天然資源による豊富な資金力を背景に旺盛なロビー活動を行い、初の中東開催を通じて「宗教間の対話機運を築く歴史的機会に」と理念を訴えた。

北朝鮮と緊張関係にある韓国からは現・元首相、米国からはクリントン元大統領、18年大会に立候補のイングランドからはキャメロン首相やウィリアム王子が最後の訴えを行った。18年の開催地に決まったロシアからは、プーチン首相が急ぎ、FIFA本部のあるチューリヒに向かった。

各候補地とも、国を挙げての招致に必死だった。日本はサッカー協会だけが懸命な努力を続けた印象が強い。

投票日を間近に控え、開幕戦と決勝会場に予定した大阪・梅田の新スタジアムについて、橋下徹知事は建設反対を表明した。政権にそっぽを向かれ、後ろから弾まで飛んできては、W杯招致など成功するはずがない。

国民の関心も低かった。国内一丸での招致活動に輪を広げられなかったサッカー界にも責任の一端はある。失敗を教訓に、日本の存在感を世界に示すため、ぜひ次のチャンスに挑んでほしい。

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