小手先の是正だけでは「1票の格差」は解消できない――。最高裁の国会に対する強いメッセージといえよう。
参院議員1人当たりの有権者数に大きな格差がある。最高裁大法廷はその1票の格差について、「各選挙区の定数を振り替えるだけでは、大幅な縮小は困難」との見解を示した。
その上で、格差是正を図るには、「現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要になる」と、制度の抜本改革を求めた。
参院の1票の格差を巡り、最高裁はこれまでも国会に是正を求めてきた。だが、遅々として進まぬ現状にしびれを切らし、厳しく注文したということだろう。
国会はこれを真摯に受け止め、抜本改革に向けた議論を進めていかなければならない。
今回の訴訟では、2007年の参院選の定数配分が憲法に違反するかどうかが争われた。この時、1票の格差が最大だったのは、神奈川県と鳥取県選挙区の間の4・86倍だった。
最高裁は判決の中で、06年に参院で「4増4減」の是正措置がとられたことなどを考慮し、憲法に違反するほどではないとしたものの、「大きな不平等が存する」と判断した。
現行の参院の選挙制度は、都道府県単位の選挙区選と全国単位の比例選からなっており、3年ごとに半数が改選される仕組みだ。選挙区選は、都道府県代表の色合いが強く、各選挙区の定数は、最低でも2が配分されている。
これが格差是正の障害になっている。だが、この枠組みを崩すと、新たな問題が生じる。
例えば、民主党は「4増4減」が議論された当時、格差を4倍以内にするため、有権者数が最も少ない鳥取県と、隣の島根県の「合区」案を主張した。
仮に実施していれば、両県民から「県の代表がいなくなるのは不公平」との反発が出ただろう。
判決が示したように、現行制度の枠組みを維持する限り、1票の格差是正には、おのずと限界があるのは明らかだ。
民主党は、13年をめどに参院の選挙制度の「抜本的改革」を行うと公約している。
衆参両院の選挙制度は、選挙区選と比例選の2本立てで、ともに似通ったものになっている。これには根強い批判があり、参院は比例選に一本化すべきといった意見もある。
二院制のあり方を含めて、選挙制度の抜本改革論議が必要だ。
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