今年初め経営破綻(はたん)した日本航空の再建への道筋が見えてきた。ゴールに向けて順調に飛んでほしい。
東京地裁が更生計画を認め、来年3月に会社更生手続きを終える。株式の再上場は2012年をめざすという。当初の想定より速いペースだ。
米国でも、政府支援下で再生を進めてきたゼネラル・モーターズが株式再上場を果たした。日米で再生を後押ししたのは、世界同時不況からの景気回復である。とはいえ、どちらも政府の支援が不可欠だった。
日航は企業再生支援機構から3500億円の出資を受けた。そのうえ機構のとりまとめで取引銀行に5200億円の借金棒引きをのんでもらい、約2800億円の新たな融資も受ける。ふつうの倒産企業にはありえないほどの恵まれた条件である。
日航が肝に銘ずべきは、こうした出資や融資を全額返済し、国民負担を生じないようにすることだ。世界経済はなお不安定で、経営の手腕が問われようとしている。
日航自身が長年の「親方日の丸」体質を捨て、生まれ変わらねばならないのはもちろんである。
日航は稲盛和夫会長の出身母体である京セラと、管財人となっている企業再生支援機構から計6人を役員として招き入れた。いわば再生請負人たちだ。これを機に、甘い経営風土を一気に塗り替えてもらいたい。
会社更生法の適用という荒療治は、日航が高コスト構造から転換することを可能にした。非効率なジャンボ機をすべて退役させて新型機を導入し、多くの不採算路線からも撤退する。過剰だった人員を1万6千人減らし、3万3千人体制に絞る。
当面の課題は、労使対立の克服だ。パイロットや客室乗務員で最大250人の整理解雇に踏み切る方針が対立を生んでいる。ルールを踏まえて慎重に交渉を進めなければならないが、日航は破綻企業であり公的支援も受けている。希望退職者の募集だけで削減計画数に達しなければ、一定の整理解雇に踏み切らざるをえない状況だ。
政府による異例の日航支援は航空システムを守るためである。だからこそ再生日航は国民の「空の足」を安全に支え続けなければならない。だが、期待される役割はそれだけではないだろう。国民生活や経済成長に進んで貢献する姿勢が望まれる。
たとえば政府の新成長戦略の柱のひとつ、観光戦略で日航は重要なプレーヤーだ。年間2千万人以上の海外観光客を誘致する政府目標を達成するにも、急増するアジアの中間所得層を取り込みたい。それには格安航空便がもっと必要だ。競争の激しいこの分野への参入は容易ではないが、積極的に取り組むべきではあるまいか。
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