台湾の選挙 中台急接近に懸念も

毎日新聞 2010年11月30日

台湾の選挙 中台急接近に懸念も

台湾の5大市長選が行われ、焦点の台北、新北両市は馬英九政権の与党・国民党の候補が制した。

この選挙は台湾の地方選挙だが、馬総統が2012年の次期総統選で再選できるかどうかを占う選挙として内外から注目されていた。ここで独立派の野党・民進党が勢いを回復すれば、今後、中国の台湾に対する姿勢が強硬に転じるかもしれない。そうなれば、日台関係、米中関係にも大きな影響が出てくる。

次の総統選がある12年は、中国では共産党指導部が交代する。米国でも、ロシアでも、韓国でも大統領選挙の年だ。北朝鮮は「強盛大国」の入り口の年だと宣言しており、政権構造に大きな変化があると見られている。台湾市長選は12年に向けた指標のひとつである。

選挙結果は、国民党の勝利である。個々の選挙結果をみれば、国民党の3勝(台北、新北、台中)に対して、民進党は2勝(台南、高雄)だった。民進党は地盤の南部は守ったが、北部では接戦に持ち込んだとはいえ力及ばなかった。

しかし総統選の予備選挙としてみるなら、国民党は必ずしも楽観できない。5市長選を合わせた得票率で比べると、民進党が49・87%、国民党44・54%となり、与野党逆転が起きたのである。国民党は、馬総統に世代交代した直後の破竹の勢いが衰えてきた。低迷していた民進党にやっと勝機がでてきた。

裏返せば、馬総統は今後、民進党へ流れた支持層を取り戻すためには野党寄りに政策の軌道修正が必要になるだろう。

馬政権は中国との関係を大幅に進展させた。中台直行航空便など「大三通」の実現に続いて、中台間の自由貿易協定である経済協力枠組み協定(ECFA)を締結した。中国経済の成長にうまく連動した結果、台湾経済の今年の成長率は、9%台の高い数字が予測されている。

これに対して民進党は、中国からの農産物の流入や台湾企業の中国移転に伴う産業空洞化への警鐘を鳴らし、中国への急接近に反対してきた。

全体の得票率で民進党が上回ったことは、馬総統の対中接近政策への批判票が根強いということである。馬総統がそれを意識して対中政策を修正するかどうか、これが中国には最大の関心事だろう。

一方、民進党は次期総統選の候補者がまだ決まらない。最有力候補の蔡英文・民進党主席は新北市で敗北し、ライバルの蘇貞昌元行政院長も台北市で落選した。国民党は次の世代の指導者と目される朱立倫氏が新北市長に当選した。民進党が再度の政権交代を果たすには、まず党内を固めなくてはならない。

読売新聞 2010年12月02日

台湾市長選挙 対中接近に募る住民の不安感

2年後の次期総統選挙の前哨戦として注目された台湾の5大市長選挙は与党・国民党の一応の勝利で終わった。

北部の主要都市・台北、新北に台中を加えた3市は国民党候補が、南部の台南、高雄の2市は野党・民進党候補が勝ち、当選者は一部で入れ替わったものの勢力分布は現状維持だった。

国民党の勝因として、基本的には景気が2年ぶりに回復した点がある。輸出をテコに今年の経済成長率は9%台になる見通しだ。

加えて、投票前日に北部で国民党幹部に対する銃撃事件が起き、危機感を強めた同党支持者が多数投票した要素もあったようだ。

しかし、政党別の得票率では、市長の当選数とは逆に民進党が国民党を5ポイント強、票数で40万票余り上回った。昨年の県・市長選挙では国民党が11万票多く、今回、与野党の得票数が逆転した。

2008年の総統選では、初当選した国民党の馬英九氏が民進党候補に220万票以上の差をつけたが、執政2年半で国民党は支持者を大きく減らした形だ。

馬政権は今年6月、自由貿易協定(FTA)に当たる「経済協力枠組み協定(ECFA)」を中国と調印した。来年から約800品目で関税が段階的に引き下げられ、13年にはゼロとなる。

中国から台湾を訪れる観光客らは年内に初めて100万人を突破し、週370便ある中台直行便は需要に追いつかない状態だ。

台湾住民の多くは、中国の経済発展の恩恵を受けるECFAに賛成している。しかし、急速な対中接近には不安も高まっている。

とりわけ台湾の主権を主張しないまま、中国と交渉するやり方に警戒感が強い。これが国民党離れの最大の要因となった。

再選を狙う馬氏は今後、対中政策を慎重に進めざるを得まい。中国は馬政権の政策調整の行方を慎重に見極めることになろう。

一方、ECFA反対の民進党も、柔軟な対中政策を模索し始めた。中国は民進党に接近を図り、南部との交流拡大に力を入れよう。

次期総統選が行われる12年は、中国の胡錦濤指導部が引退し、新指導部に交代する。中台が経済から政治へと新たな分野で交渉に入る可能性が生じる節目となる。

馬政権は日本との関係改善に積極的だ。尖閣事件では中国との“共闘”を拒否し、抑制的な姿勢を示した。台湾漁民の操業権確保を目指す日台漁業交渉の再開を望んでいる。日本も日台関係の改善に前向きに取り組む必要がある。

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