朝鮮半島 米中、そして日本の役割

朝日新聞 2010年11月28日

朝鮮半島 米中、そして日本の役割

北朝鮮が砲撃した韓国領の島から遠くない黄海で、きょうから、米国と韓国の合同軍事演習が始まる。

北朝鮮は「挑発を敢行するなら、2次、3次の強力な物理的報復を加えることになろう」と反発している。

先日の砲撃では民間人も犠牲になった。朝鮮半島の緊張は高まっている。北朝鮮への一定の圧力は必要だが、再び軍事衝突を招かないよう冷静な運用と対応が求められる。

緊張の緩和と危機の管理へ、米国と中国が果たす役割が大きい。

中国は演習に反対しているが、今年3月の韓国哨戒艦撃沈を受けた米韓演習のときほどの強烈さはない。中国外相が北朝鮮の駐中大使に対し、砲撃戦への「深い憂慮」を伝えもした。

だが、これだけでは、中国に集まる国際社会の厳しいまなざしを満足させるものではあるまい。

今年は朝鮮戦争が開戦してから60年だ。北朝鮮は砲撃の後、朝鮮戦争で戦死した中国の故毛沢東主席の長男の生涯を描いた中国のテレビドラマを放映したり、墓前に閣僚らが献花したりして、中国の歓心を買うような行動を見せた。

とはいえ、北朝鮮の今度の暴挙に中国は強くいら立っているに違いない。演習名目とはいえ、ひざ元の黄海に米軍の原子力空母まで来させることになり、心穏やかではなかろう。

中国は今年、金正日総書記の訪問を2回も受け入れ、友好を演出した。経済やエネルギー、そして食糧の面で北朝鮮の生命線を握ってもいる。

そんな中国も、北朝鮮の核実験やウラン濃縮の開始を防げなかった。その影響力に限界はあるが、世界で急速に存在感を高める中国は、それに伴う責任も果たすべき大国である。より強い説得に当たってもらわねばならない。

米国も今回の事件による危機を抑え込むために、中国との高官協議の実現を探り、これまで以上に中国の影響力行使を求めている。近く、日米韓の外相会談も開きたい考えだ。

米国は中国とともに朝鮮戦争の当事者でもある。それだけに、東アジア地域の平和と安定の確保にとりわけ重い役割がある。米中の首脳同士をはじめ、あらゆるチャンネルを使って緊張緩和に努めてほしい。

そして、日本は「中国頼み」「米国任せ」にとどまってはならない。

日本は、国連安全保障理事会の非常任理事国だ。北朝鮮情勢は、東アジアで最大の安全保障問題であり続けている。安保理などの場で、北朝鮮に国際社会の一致したメッセージを出すよう積極的に動くべきだ。

韓国では、北朝鮮への強硬論と戦争の不安が交じりあい、社会が揺れている。日本は隣国に思いを致し、安定回復に向けて連携を強めたい。

毎日新聞 2010年11月30日

朝鮮半島緊迫 「北」の態度変化が必須だ

韓国の李明博(イミョンバク)大統領が、悲壮な表情で国民向け談話を発表した。領土の島に北朝鮮から砲撃を受け、軍人ばかりか民間人にも犠牲者が出た。その惨劇への痛恨の思いと北の政権への憤怒を語り、今後の軍事挑発に対しては「必ず応分の代価を支払わせる」と決意表明したのである。

これは今回の被害に関する直接的な報復攻撃を意味しない。あくまでも「今後」の方針だ。しかし北朝鮮の度重なるテロや軍事挑発にも報復を自制してきた韓国が、厳しい対決姿勢を打ち出した。この決意の重みを周辺国は理解すべきだろう。

韓国西方の黄海では米原子力空母ジョージ・ワシントンも参加した米韓合同軍事演習が行われている。空母の艦載機による攻撃訓練や、米韓のイージス艦が連携した対空防御、潜水艦探知など多様な訓練が来月1日まで続く予定だという。

北朝鮮はこれに反発し、国営メディアを通じて米韓を激しく非難している。地対地ミサイルを前方展開し、地対艦ミサイルを発射台に据えたといった情報も流れている。

しかし米空母の黄海派遣に強く反対してきた中国が韓国寄りの海域での演習を事実上容認したことで、一触即発の緊張感はやや薄らいだ。延坪島(ヨンピョンド)砲撃という暴挙が、北朝鮮擁護とも見える「米空母阻止」の大義名分を失わせたと言えよう。

この米韓演習が始まった28日、中国は6カ国協議の各国首席代表による緊急協議を提案した。北朝鮮の核問題を扱う本協議に向けて、条件作りの対話の場にしたいようだ。

しかし、この提案に日米韓は乗り気でない。無理もないことである。中国が北京の外務省に北朝鮮大使を呼んだ翌日、北朝鮮の報道には「砲撃で民間人死傷者が発生したのが事実であれば極めて遺憾なこと」という表現が登場した。態度が軟化したように見えるが、その後には韓国軍が民間人を「人間の盾」にしたという言語道断の主張が続いている。

これは一例に過ぎない。現状では北朝鮮との意味ある対話が実現するとは思えない。韓国がそう判断しても当然だ。米国と日本も、濃淡はあれ韓国と類似した認識を共有している。今のままなら文字通り「話にならない」ということだ。北朝鮮は態度を改めねばならない。

李大統領は北京からの特使に対し「より公正かつ責任ある姿勢」での中国の寄与を求めたという。これも日米韓共通の注文と言えよう。

砲撃事件の直前にウラン濃縮活動が公然化したことにより、北朝鮮の核の脅威は急拡大した。長期的には無視や放置という選択肢はない。いずれ直面するであろう困難な交渉に備えて、知恵を絞らねばなるまい。

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