鳩山内閣による来年度予算の編成作業が本格的に始動した。
29日の閣議で、予算編成の新たな基本方針と、税制改正の仕組みを抜本的に作り直す新政府税制調査会の設置が決定された。政府の歳出と歳入をコントロールする手順と組織がほぼ整ったといえる。
自公政権が決めた概算要求基準(シーリング)は廃止され、各府省は、民主党の政権公約と連立3党の政策合意を反映した予算要求を10月15日までに、再提出することになった。
この要求を、新設する行政刷新会議が点検し、効率的な予算を作っていく仕組みだ。
政権交代の実現で、鳩山内閣が独自色を出そうとする気持ちは理解できる。だが、単に無駄を排除して新しい政策に回せば済むという問題ではない。
物足りないのは、予算や税制を使っていかなる国を作り上げるかという考え方と、どんな政策に予算を重点配分していくかという基本構想が見えないことだ。今後、国家戦略室を中心に、早急に打ち出していく必要があろう。
これまでの自公政権による前年踏襲方式では、確かに斬新な予算を編成するのは難しかった。
鳩山内閣がしがらみを断ち切り、新手法でメリハリの利いた予算を作るというなら、それ自体は大いに期待したいところだ。
だが、最大の問題は財源の手当てである。今年度、46兆円と見込んだ税収は、景気の低迷で3兆~4兆円ほど減収になる可能性が高い。来年度も同じような傾向が続くという見方が支配的だ。
国債を増発しない限り、まともな予算が組めない状況だ。財源となる税収をどう確保していくか。この点、新政府税調の役割は極めて重要になる。
新税調は、藤井財務相が会長になり、各府省の副大臣らで構成する。自民党のように党税調は置かず、政府主導で税制を決める。
来年度改正の検討項目は、ガソリンの暫定税率の廃止や中小企業に対する法人税の軽減など、減税策ばかりが目立つ。
これでは財源確保どころではない。景気情勢を考えれば、今すぐ増税を打ち出す状況ではないが、新たな財源を確保する道筋だけはつけておかなければならない。
暫定税率の廃止は再考し、配偶者控除の廃止についても中身を詰める必要がある。民主党は消費税率を4年間引き上げないとしているが、中長期的な安定財源として今から議論を始めるべきだ。
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