予算と税制 財源の手当てが最大の課題だ

朝日新聞 2009年09月30日

予算編成 さあ、大胆な組み替えを

自公政権下で編成作業が始まっていた来年度予算を白紙から見直すことを、鳩山政権が正式に決めた。新たな借金を増やさず、無駄な予算を大胆に削って「くらしを守る方向」に使うための財源を生み出すという。

その基本方針を徹底するよう期待したいが、具体的なやり方については国民に不安もあるだけに、政策の決定過程を含めて説明に努めてほしい。

鳩山政権はきのうの閣議で、予算編成の基本方針として概算要求基準(シーリング)の廃止を決めた。予算改革の大きな第一歩となる。シーリングこそが、前年度予算の踏襲と微修正を繰り返すことしかできない官僚主導の利害調整型予算を形作ってきたからだ。社会が大きく変化したり政策目的が変わったりしても機動的に対応できなかったのはそのせいだ。

小泉政権は公共投資や裁量的経費を削減する手法を導入した。だが予算の内容を思い切って組み替えるところまではいかなかった。予算づくりそのものを転換できるのは、やはり政権交代の威力である。

鳩山政権は「既存の予算はゼロベースで厳しく優先順位を見直す」という。これを実際にやってみせるのは画期的だ。しかし、前例を踏襲せずに白地から予算を組む作業は相当な困難が予想される。

民主党は「生活第一」という政策の基軸を掲げてきた。それが政権交代への期待を生んだ。これを予算編成で貫けるかどうか、が鍵になる。

政権公約でうたった政策を予算に盛り込むに当たり、制度づくりにきめ細かい工夫をこらすことが求められる。子ども手当や高校無償化など、若い世代を育てる政策は国民の声に耳を傾け、しっかりと進めてほしい。

同時に大切なのは、財源の制約のもとで、厳しい選択だが合理的だと納税者に納得される内容にすることだ。

公約した事業すべてに十分な予算をつけるのは至難の業だ。何を優先し、何を切るか、減らすか。

その点で高速道路無料化(財源は毎年度1.3兆円)とガソリン税などの暫定税率廃止(同2.5兆円)は再考を求めたい。温暖化対策とも矛盾するこれらの政策に毎年度数兆円を投じることが妥当だろうか。もっと優先すべき使い道が考えられないか。

自公政権が経済危機への対策として編成し執行中の補正予算の組み替えも含め、新政権の決断力と説明責任を果たす能力が問われる。

年度内に予算を使い切ろうとして生じる無駄をなくすため、複数年度の予算管理も検討するという。

「10月15日までに概算要求、年内編成」という日程はかなりきつい。それでも経済危機のもとで予算編成の遅れは許されない。スピードも不可欠だ。

読売新聞 2009年09月30日

予算と税制 財源の手当てが最大の課題だ

鳩山内閣による来年度予算の編成作業が本格的に始動した。

29日の閣議で、予算編成の新たな基本方針と、税制改正の仕組みを抜本的に作り直す新政府税制調査会の設置が決定された。政府の歳出と歳入をコントロールする手順と組織がほぼ整ったといえる。

自公政権が決めた概算要求基準(シーリング)は廃止され、各府省は、民主党の政権公約と連立3党の政策合意を反映した予算要求を10月15日までに、再提出することになった。

この要求を、新設する行政刷新会議が点検し、効率的な予算を作っていく仕組みだ。

政権交代の実現で、鳩山内閣が独自色を出そうとする気持ちは理解できる。だが、単に無駄を排除して新しい政策に回せば済むという問題ではない。

物足りないのは、予算や税制を使っていかなる国を作り上げるかという考え方と、どんな政策に予算を重点配分していくかという基本構想が見えないことだ。今後、国家戦略室を中心に、早急に打ち出していく必要があろう。

これまでの自公政権による前年踏襲方式では、確かに斬新な予算を編成するのは難しかった。

鳩山内閣がしがらみを断ち切り、新手法でメリハリの利いた予算を作るというなら、それ自体は大いに期待したいところだ。

だが、最大の問題は財源の手当てである。今年度、46兆円と見込んだ税収は、景気の低迷で3兆~4兆円ほど減収になる可能性が高い。来年度も同じような傾向が続くという見方が支配的だ。

国債を増発しない限り、まともな予算が組めない状況だ。財源となる税収をどう確保していくか。この点、新政府税調の役割は極めて重要になる。

新税調は、藤井財務相が会長になり、各府省の副大臣らで構成する。自民党のように党税調は置かず、政府主導で税制を決める。

来年度改正の検討項目は、ガソリンの暫定税率の廃止や中小企業に対する法人税の軽減など、減税策ばかりが目立つ。

これでは財源確保どころではない。景気情勢を考えれば、今すぐ増税を打ち出す状況ではないが、新たな財源を確保する道筋だけはつけておかなければならない。

暫定税率の廃止は再考し、配偶者控除の廃止についても中身を詰める必要がある。民主党は消費税率を4年間引き上げないとしているが、中長期的な安定財源として今から議論を始めるべきだ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/57/