就職内定率最低 自ら鍛え活躍の場ひらけ

朝日新聞 2010年11月25日

職なき若者 構造的ミスマッチなくせ

「超氷河期」という言葉さえ聞く。

来春卒業予定の大学生の就職内定率が、過去最低に落ち込んでいる。1年上の先輩たちは、6人に1人が進路が決まらぬまま大学を出て新卒未就業者となった。このままゆけば、もっと多くの無業の若者が生まれかねない。

大学で様々なことを学んだ後、やりがいのある仕事を見つけ、稼ぎを得て社会に足場を築く。そんな人生の予想図はもろくも崩れつつある。

浮かび上がるのは勝ち組、負け組といわれるような就職格差の広がりだ。

企業は厳選採用を進め、予定数に満たなくても採用活動を打ち切る。大企業のメガネにかなう人は奪い合いになる一方、受けては落ちることを繰り返し、追いつめられる学生がいる。

労働政策研究・研修機構が各大学を調べたところ、今春の新卒未就業者が3割以上を占めたのは、新設の私大や小規模校が目立った。大学の就職センター担当者は、「何をしたらいいかわからない」「企業に出すエントリーシートが書けない」といった点を学生の課題に挙げる。途中で就職活動から降りてしまう学生も増えているという。

今の就職難を不況だけのせいにするのは間違いだ。それを超えた構造的な不運が学生たちを苦しめている。

20年前に25%だった大学の進学率は5割を超え、多様な若者が学ぶようになった。だが、就職市場はそれに見合うものになっていない。何をすべきかつかめず、社会に出る準備が整わない若者を大学は無責任に送り出す。

経済界の方も、大卒者の質と量の変化に応じた多様で柔軟な採用のあり方を、示せていない。

若者が希望を持てぬ社会に未来はない。打てるだけの手を打とう。

採用意欲のある中小企業を集めた合同説明会が盛んになってきた。大企業志向の学生の視野を広げさせ、マッチングする試みは成果を上げているか。学生が敬遠しがちなハローワークと大学の連携は、まだ十分といえない。政府が矢継ぎ早に繰り出す雇用対策を卒業生につなぐよう、大学はどれだけフォローに努めているか。現場の工夫はなお必要だろう。

そのうえで、学校教育と産業社会の間で広がる構造的なミスマッチの是正に、社会を挙げて取り組むべきだ。

職業人となる意識を身につけさせるキャリア教育を、学校体系にきちんと位置づける。大学から職業へのコースは複線であるべきだ。企業は大学の人材育成力を損なう就活の早期化・長期化を正し、学業の成果を問う採用に変える。何度かチャレンジできるよう新卒一括採用からも転換しよう。

政府と大学、経済界の話し合いが始まった。守られぬ協定や倫理憲章でお茶を濁すことなく、実効性のある改革を打ち出さねばならない。

産経新聞 2010年11月22日

就職内定率最低 自ら鍛え活躍の場ひらけ

来春卒業予定の大学生の10月1日現在の就職内定率が過去最低の57・6%に落ち込んだ。

景気低迷を背景に企業が採用を絞り込んでいることが最大の要因だが、未来を担う若者が職に就けない事態は社会全体にとっても大きな損失だ。政府と産業界、大学が一体となって若年層の就職支援に取り組まねばならない。

日本経済は一昨年秋の世界金融危機から脱したが、円高やデフレなどで景気の先行き不透明感は払拭(ふっしょく)できていない。企業は新卒採用を大幅に抑制し厳選する姿勢を強め、学生たちを直撃している。

「就職氷河期」と呼ばれた平成15年でも、10月1日時点の内定率は平均60%程度だった。今回はこの水準も下回った。とくに女子はこの2年で15ポイント近く下落し、約55%に落ちている。就職氷河期を上回る深刻な事態といえる。

「雇用が第一」とする菅直人政権は、こうした新卒の就職支援に実効性ある対策が不可欠だ。都道府県庁所在地のハローワークに新卒採用の専門コーナーを設置し、新卒者を試験雇用した企業に奨励金を払う制度などが動き出しているが、地元企業の要望にも丁寧に耳を傾けて、求人開拓につなげる地道な努力が求められている。

産業界も採用の柔軟化、多様化を進めることが必要だ。企業の将来を切り開く有能な人材を発掘するには、新卒一括採用などの慣行を見直すべきではないか。既に厚生労働省は「卒業後3年以内は新卒者とみなす」として雇用指針の改定に踏み切った。企業も意識改革が問われている。

学生諸君にも視点を広げる工夫を勧めたい。インターネットを利用した就職活動が広がる中で、ともすればホームページなどが充実した大手企業に学生が殺到する傾向が強まっている。一方で中堅・中小企業では、独自技術や将来性もあるのに、知名度が低いために人手不足に悩むところも多い。

就職戦線は近年、国際競争にもさらされている。海外の競争に備えて国際感覚の豊かな人材が求められ、日本人よりも外国出身学生を優先採用する企業も目立つ。大学も外国語指導などを充実させているが、まずは学生自身が外国人に負けないよう自らを鍛え、広く世界に目を向けねばなるまい。

思う存分、活躍の場を開拓できる企業をめざし、積極的に挑戦する若さと意欲に期待したい。

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