南北砲撃戦 北朝鮮の暴挙を強く非難する

毎日新聞 2010年11月24日

南北砲撃戦 北朝鮮の暴走許されぬ

常軌を逸した暴挙である。北朝鮮が南部の海岸に配備した火砲を用いて韓国領の延坪島(ヨンピョンド)を砲撃した。相当数の死傷者が出ている。

この島は対岸が北朝鮮であり韓国軍が駐屯するが、1600人以上の民間人も暮らしている。北朝鮮からの砲撃は、明らかな休戦協定違反、軍事的挑発であり、人道に反する行為だ。韓国軍が砲撃で応戦したのは不可避なことだった。

韓国の李明博(イミョンバク)大統領は衝突拡大を防ぐよう指示した。韓国と連合軍を構成する在韓米軍も即応態勢にあると見られ、極度の状況悪化は考えにくいが、何より北朝鮮が挑発を繰り返さないことが重要だ。中国も北朝鮮に自制を求めるべきだろう。

それにしても、起きたことは戦争そのものだ。島のあちこちに着弾があり、民家や森林が炎と黒い煙に包まれた。住民は防空壕(ごう)に避難した。法的には朝鮮戦争が終わっておらず、休戦協定はあるが南北の軍事衝突が繰り返されている。

北朝鮮は自らの安全保障のために米国と平和協定を結びたい。米国をその交渉に応じさせる狙いで、意図的に危険を演出する側面がある。

砲撃戦が起きた海域は近年、その現場になってきた。南北双方に多数の死傷者を出した99年と02年の海上交戦も、まだ記憶に新しい韓国哨戒艦「天安」の沈没事件も、この付近で起きている。

この海域には米韓が海上の軍事境界線と見なす北方限界線(NLL)があり、北朝鮮も長年にわたり事実上これを尊重してきた。だが90年代後半から自らに有利な境界線を主張し、韓国軍艦艇に攻撃を繰り返しているという経緯だ。それでも韓国領の島を砲撃したことはなかった。

今回、韓国軍は陸海空の合同演習の一環として、黄海の南側に向けて射撃訓練をしていたという。

しかし北朝鮮は「朝鮮人民軍最高司令部」名義の発表で、韓国軍が「わが方の領海」に砲撃を加えたため「断固たる軍事的措置をとった」とし、今後も同じ方針で臨むと宣言した。北朝鮮の主張する「領海」はNLLの南側に広がっており、いつ衝突が起きても不思議でないという話になる。

最近の北朝鮮の動向には従来のレベルを超えた危険な兆候が見える。韓国の島への砲撃もそうだが、核爆弾の製造に使えるウラン濃縮用の施設を米国人科学者に見せつけたことも、単に米国の気を引き、交渉に引きずり込む狙いにしては過剰な側面がありはしないか。

金正日(キムジョンイル)総書記の焦りを示すのか、後継者の「手柄」作りなのか、真相は不明だが、危険への備えは万全にしたい。まずは日米韓の連携にぬかりがないか、点検を急ぐことだ。

読売新聞 2010年11月24日

南北砲撃戦 北朝鮮の暴挙を強く非難する

民間人の住む島を突然砲撃するとは、重大な武力挑発である。断じて許せない。

戦争再発につながりかねない言語道断の暴挙であり、朝鮮戦争休戦協定への明白な違反だ。強く非難する。

23日の白昼、朝鮮半島の西側、黄海に浮かぶ韓国の延坪(ヨンピョン)()を、北朝鮮軍が砲撃した。韓国側の発表によると、少なくとも韓国軍兵士2人が死亡したほか、数か所から黒煙が立ち上り、住民は防空(ごう)や本土への避難を強いられた。

延坪島付近は、海上の軍事境界線をめぐっての合意がないため、これまで南北の艦船が幾度も衝突し、交戦してきた緊張の海域だ。しかし、朝鮮戦争の休戦以来、約2000人の住民がいる島が砲撃されたことはなかった。

北朝鮮は最高司令部の声明で、韓国軍が北朝鮮領海内に砲撃してきたために「断固たる軍事的措置を取った」と、砲撃を正当化した。韓国軍はこの日、付近海域で軍事演習を行っていた。

だが、北朝鮮がどんな言い訳をしようとも、民間人を狙った行為は、許されるものではない。責任の所在を明らかにし、責任者を処罰してしかるべきだ。

韓国軍が反撃し、戦火はひとまずやんだが、北朝鮮の出方は不透明だ。一触即発の危機は続いていると見なければなるまい。

付近の海域では、3月に韓国の海軍哨戒艦が魚雷攻撃で撃沈されている。ましてや今回は、北朝鮮軍による歴然たる砲撃だ。報復を求める声があがるにせよ、韓国は、ここは強く自制し、冷静に対処してもらいたい。

北朝鮮で、3代世襲が本格化している中で、今回の砲撃事件は起きた。金正日総書記の後継者の金正恩氏が、党軍事委員会副委員長に就任したばかりである。

この権力移行期に好戦的な行動を繰り返すのは、軍部の支持を得て権力基盤を固める狙いがあるのだろう。核兵器を持ち、好戦的な姿勢を強める北朝鮮に、国際社会は警戒を怠るべきではない。

北朝鮮はこのところ、軽水炉の建設、ウラン濃縮活動の公開、3回目の核実験の準備と見られる動きなどによって、国際社会の注意をひくのに腐心している。

米朝協議の実現が狙いだろうが、米国の特別代表が韓国、日本、中国を訪れ、今後の対応を協議している最中に起きた砲撃事件は、逆の結果をもたらすだろう。

日米韓は、北朝鮮の軍事的な挑発を断固阻止するために、連携を一層強化する必要がある。

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