北朝鮮ウラン濃縮 実効性ある対策を探れ

朝日新聞 2010年11月23日

北朝鮮の核 ウラン濃縮は許されない

外からの抑えがきかぬまま、北朝鮮の核問題が新たな局面を迎えた。

ウラン濃縮用の施設を北朝鮮が米国の核専門家に見せた。濃縮に手を染めていること自体は昨年来、公言してきたが、その施設の存在が確認されたのは初めてだ。

そればかりではない。核実験に使えそうなトンネルを新たに掘削したり、「自前のエネルギー確保」を名目に実験用の軽水炉建設の計画を明らかにしたりと、北朝鮮はこのところ矢継ぎ早に核開発の動きを見せている。勝手のし放題である。

とうてい容認できない。この地域で核をめぐる脅威が深まることを、食い止めなければならない。

濃縮施設の稼働状況はわからない。だが、軽水炉で燃やす低濃縮ウランにとどまらず、濃縮を繰り返して兵器級の高濃縮まで進むと、兵器化しやすいウラン型核兵器の開発に結びつく。昨年まで2回の核実験を強行したプルトニウム型に加えての脅威になる。そうなれば、北東アジアは深刻な緊張にさらされる。

注目されるのは、施設公開にしろ、軽水炉計画の言明にしろ、北朝鮮はいずれも米国から専門家を招いて説明する形を取ったことだ。

北朝鮮は、自らの生存の鍵を握るとする米国に「事態の深刻さ」を認識させ、米朝協議へと動かそうと狙っているように見える。その先には、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に替え、米朝国交正常化によって現体制を維持したいとの思惑がある。金正日(キム・ジョンイル)総書記から三男の正恩(ジョンウン)氏への後継の基盤固めに利用したい狙いもあるだろう。

思惑は別にして、北朝鮮が本来しなければならぬのは、6者協議の合意にある非核化の道に戻ることだ。

この合意は、非核化と米朝・日朝の国交正常化、経済支援をパッケージとして描いている。北朝鮮の核問題は、この方針をもとに包括的な解決をめざしていく以外にない。

日本をはじめとする関係国は、こういう対話と交渉の場に北朝鮮を引き出す局面をどう作るかが大切だ。

新たな展開を受けて、米政府代表が日韓中を歴訪している。

日米韓は、北朝鮮の仕業とされる今春の韓国軍艦の沈没事件後、6者協議を含む北朝鮮問題に取り組めずにきたが、韓国は核問題に沈没事件を絡ませないという苦渋の決断をした。その選択を生かし、日米韓は互いの立場をすり合わせて、結束をさらに強めて北朝鮮に当たらねばならない。

経済やエネルギー面で北朝鮮が頼りとする中国の責務もまた大きい。6者協議の議長国である。北朝鮮が混乱するのを嫌ってかばうのではなく、北朝鮮が戻るべき道に戻るよう、調整に乗り出してもらいたい。

毎日新聞 2010年11月23日

北朝鮮ウラン濃縮 実効性ある対策を探れ

北朝鮮の「核の脅威」が従来とは次元の異なる局面に突入した。そう見るべき状況であろう。約20年にわたり一進一退、いや結果的には悪化の一途をたどってきたこの問題の解決に向けて、実効性ある新たな対策の立案が必要なのではないか。

起きたことの概要はこうだ。米国の核専門家であるロスアラモス研究所のヘッカー元所長が北朝鮮の寧辺(ニョンビョン)を訪れ、秘密施設でウラン濃縮用の遠心分離機が多数並んでいるのを見せられた。「2000台の遠心分離機が既に稼働中」という北朝鮮側の説明の真偽は確認できなかったが、施設は極めて近代的だという。

北朝鮮は昨年からウラン濃縮作業への着手や実験成功を公言してきたが、疑う向きも少なくなかった。大方の予想をはるかに超える急進展にヘッカー氏は驚いた。これは北朝鮮に外部からの支援があった可能性を疑わせる状況とも言えよう。

そしてウラン濃縮の目的について北朝鮮は、建設中の軽水炉原発の燃料用だと説明した。だが濃縮のレベルを上げて高濃縮ウランにすれば、広島に投下されたのと同じタイプの原爆を製造できる。これは北朝鮮が2回の核実験に用いたとされるプルトニウム型の核兵器より起爆装置の構造が単純なため、事前に爆発実験をしなくても使用できるという。

ヘッカー氏は最大の懸念材料として、見せられた施設と同じか、もっと大きな能力を持つ施設が別の場所に存在する可能性を挙げた。

米国はクリントン政権時代、寧辺の核施設群に対する限定爆撃を検討したことがある。それを知る北朝鮮が、寧辺だけにウラン濃縮施設を造るのはむしろ不自然だ。遠心分離機は坑道や目立たぬビルに隠して稼働させることもでき、偵察衛星などによる捕捉は極めて難しい。

これらを勘案すると、北朝鮮は既にウラン型原爆を製造したかもしれない。その技術や兵器が国外に流出する危険性も、従来より高まったと言えよう。北朝鮮は情報を意図的に流し「瀬戸際外交」に活用した例が少なくないが、同時に、核保有への歩みも着実に進めた。事態の深刻さを過小評価してはなるまい。

北朝鮮の核問題は6カ国協議を通じて解決が模索されてきた。だがブッシュ政権時代の米国は政策に一貫性を欠き、オバマ政権も戦略が固まっていない。議長国の中国は最近、北朝鮮をかばうかのような姿勢が目立つ。

日米韓連携が重要なのは当然だ。6カ国協議もいずれは開かれよう。しかし今まで通りの手法では北朝鮮の核放棄につながるまい。米中両国が力を尽くしてようやく打開の道が開けるような難題だと認識し、日韓も支援して対策を練るべきである。

読売新聞 2010年11月23日

北朝鮮核開発 ウラン濃縮の意図を見極めよ

またしても北朝鮮による危険な挑発行為だ。

北朝鮮が、ウラン濃縮施設を、米国の核専門家たちに公開した。高濃縮ウランを使う核兵器の獲得につながり得る、新たな核開発計画の一端をのぞかせた形だ。

すでに、プルトニウム利用の核実験を2回強行した北朝鮮が、今回、なぜウラン濃縮活動を米専門家にわざわざ見せたのか。

日本はじめ関係国は、その意図を慎重に見極めるとともに、核開発を阻止するために実効性ある措置を早急に講じる必要がある。

北朝鮮の寧辺で、問題のウラン濃縮施設を視認したのは、米国立ロスアラモス研究所の元所長、ヘッカー博士一行だ。

博士が驚いたのは、事前の推測を超える規模と技術水準だ。施設は最新式で、北朝鮮側は「2000基の遠心分離器が稼働中」と説明したという。

2度にわたる核実験強行で、国連安全保障理事会は北朝鮮に対し経済制裁を科している。新たな核施設建設は明白な決議違反だ。制裁は効かなかったことになる。

制裁態勢を見直し、厳格に実施しなければならない。技術移転や部品調達では、パキスタン、イラン、中国との関連が指摘されてきた。実態究明も進めるべきだ。

濃縮施設の目的は、付近で建設中の原子力発電用の軽水炉で燃料として使う、低濃縮ウランを作るため、とされる。問題は、これが核兵器用の高濃縮ウランの生産へ容易に転換できる点にある。

北朝鮮が電力生産のための「平和利用」を標榜(ひょうぼう)するのであれば、自らそれを立証する責任がある。だが、「平和利用」を隠れみのに核兵器を作った前歴があり、国際的な査察を拒絶している以上、疑念は深まるばかりだ。

すでに、高濃縮ウラン生産を目的とする秘密の施設を稼働させた可能性も排除できない。もともと原子炉と違って、濃縮施設は地下に建設可能なだけに、すべてを探知することはきわめて困難だ。

北朝鮮が今後、核兵器の増強や核拡散の構えを見せてくるのであれば、日米韓は、連携を一層強化し、これを断固阻止する姿勢で抑止すべきである。

一方で、北朝鮮には、核廃棄への行動を取らせる必要がある。

北朝鮮はその見返りに、エネルギー提供を求めてくるのか――。日米中韓露は、食い逃げされた過去の教訓を生かしつつ、2年近く中断したままの6か国協議の再開も視野に、北朝鮮と交渉する道を真剣に探らなければならない。

産経新聞 2010年11月23日

北のウラン濃縮 日米韓で脅しはねつけよ

北朝鮮が、新設の大規模ウラン濃縮施設を核専門家のヘッカー元米ロスアラモス国立研究所長に見せ、「2千基の遠心分離機が稼働中」と主張した。ヘッカー氏は「事実とすれば、年間で最大2発分の核爆弾製造が可能」と報告している。

これは、北朝鮮が核廃棄に同意した2005年の6カ国協議共同声明だけでなく、北の核実験実施を受けて国連安保理が06年と09年に採択した制裁決議に明白に違反する。

緊張感を高めて制裁を骨抜きにする、いつもの瀬戸際戦術である。露骨な威嚇に乗じられてはなるまい。

日米韓の3カ国の結束を固めることが重要だ。米国務省のボズワース北朝鮮担当特別代表は韓国の金星煥外交通商相や前原誠司外相と対応策を協議した。脅しをはねつける断固とした姿勢を示す一方、北の狙いを冷静に分析し、最も効果的な対抗措置を構築しなければならない。

北朝鮮は昨年9月にも「ウラン濃縮実験成功」と表明しており、今回の事態は予想できた。問題は、北が安保理の制裁決議や日米などの独自制裁によって核関連物資を入手しにくくなった包囲網をかいくぐり、ウラン濃縮を加速させた可能性が高いことだ。

北朝鮮が過去2回実験したプルトニウム型核爆弾に比べ、ウラン型は起爆が容易で兵器化に向けた実験は必ずしも必要ではない。その代わり、90%以上にまでウランを濃縮する遠心分離機など高度な技術が要求される。しばしば浮上する北朝鮮とイランとの核開発技術協力の疑惑も含め、対北包囲網に欠陥がなかったか、国際社会は検証する必要がある。

北朝鮮は最近、3度目の核実験の準備ともみられる動きも見せた。金正日総書記から三男、正恩氏への後継体制を固めるには外部からの援助引き出しが不可欠だ。そのためには日米韓を揺さぶるのが効果的と考えたのだろう。

最近、6カ国協議の議長役である中国の対北融和策が目立つ。23日に北京に向かうボズワース氏は、経済援助が北朝鮮の無法を許す結果を生むと直言すべきだ。

今年3月に起きた北朝鮮による韓国海軍哨戒艦撃沈事件を受けた米韓合同軍事演習には海上自衛隊もオブザーバー参加した。こうした連携は効果的だ。日米韓は北の脅しにあわててはならない。

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