GM再上場 本格再建へのはるかな道のり

毎日新聞 2010年11月22日

GMと日航 企業再生は時間がカギ

リーマン・ショックをきっかけにした世界的な経済危機の中で多くの企業が破綻(はたん)に追い込まれた。米国での企業破綻の象徴は、ゼネラル・モーターズ(GM)で、日本では日本航空だった。そのGMが1年5カ月の短期間で再上場を果たした。

車種を大幅に絞り、人員整理も進め、さらに破綻処理によって債務も大きく減った。米国経済の立ち直りにより販売台数も回復してきた。GMの今年1~9月の最終利益は、トヨタに迫る勢いだ。

事前に再生計画を立てたうえで破綻を申請する方式をとったことが、スムーズな資産売却につながり、顧客離れを防ぎ、スピード再生を可能にした。その一方で、日航の再建は、まだまだ道半ばという状況だ。

日航再建をめぐっては、法的整理とするか、私的整理とするかが定まらず、政府の対応が二転三転した。会社更生法の申請は今年1月になってからだった。

企業再生支援機構を管財人として更生計画案の策定に入ったものの、路線や人員の削減について、規模と進め方が不十分だとして、取引銀行が納得せず、当初計画の見直しを余儀なくされた。その結果、更生計画案の裁判所への提出は、約2カ月遅れの8月末にずれ込んだ。

その後、日航と取引銀行との間で行われた交渉の結果、銀行側が融資に応じる方針を示し、更生計画案も債権者による可決を経て、今月末には認可という段取りになった。

ところが、希望退職への応募が予定に満たず、日航が整理解雇を発表したことに一部労組が反発してスト権投票を実施。これに対し支援機構は、スト権が確立されたら出資は行わないとの立場を示している。更生計画案の認可がさらに遅れる可能性も指摘されている。

環境への対応と自由化の進展で自動車産業と航空業界は大変革期を迎えている。大型車に依存して環境技術の開発で後れをとるGMはまだまだ多くの課題を抱えている。しかし、これからの主力となる中国やブラジルなどの新興国市場でGMは高い販売シェアを獲得するなど変化に合わせた対応も進めている。

一方、日航も自由に路線や便数を設定できるオープンスカイと、格安航空会社(LCC)の参入への対応が喫緊の課題となっている。早期に再生を完了し、打って出る態勢を整える必要がある。しかし、再び揺れている。

政府の対応もはっきりしない。自由化の進展に備え国土交通省が示した航空機燃料税の軽減といった支援策も宙に浮いた状態だ。

企業再生にとってカギとなるのはスピードだ。それを肝に銘じ、対応してもらいたい。

読売新聞 2010年11月20日

GM再上場 本格再建へのはるかな道のり

経営再建中の米自動車大手、ゼネラル・モーターズ(GM)が株式をニューヨーク証券取引所に再上場し、国有化を脱する一歩を踏み出した。

2009年6月に経営破綻(はたん)して上場廃止になってから、1年5か月というスピード再上場だ。しかし、前途は多難だ。政府傘下から独り立ちし復活できるかどうか、これからが正念場と言えよう。

GMは破綻後に、米国政府が株式の6割、カナダ政府が1割を保有する事実上の“国営GM”として再スタートした。

今回、再上場されたのは、その新生GMの株だ。売り出し価格は1株33ドルに設定され、取引開始時の初値は35ドルだった。値上がりしての取引は、投資家の期待の高さをうかがわせる。

短期間での再上場は、巨額な負債をほぼ一掃し、人員削減などの大リストラを徹底して業績をV字回復させたからだ。

今年7~9月期まで、3四半期連続で最終黒字を計上した。中国などの新興国販売が急増し、米国での売れ行きも回復基調だ。

米政府は今回、保有株の一部を売却し、約118億ドルの売却益を得た。この結果、GMへの米政府の持ち株比率は約37%に下がるが、筆頭株主にとどまる。

GM救済に米政府は公的資金約500億ドルを投じたが、GMはこれまで100億ドルを返済した。

政府は、今回の売却益を未回収分の約400億ドルの一部に充てる。残りの約300億ドルについても、保有株を売却して早期に全額回収したい考えだが、GMの本格再建が不可欠だ。

しかし、先行きは楽観できまい。スポーツ用多目的車(SUV)など大型車頼みが改善されず、環境対応のエコカーや小型車開発の出遅れも解消できていない。

競争相手の日産自動車は来月から日米で、電気自動車(EV)のリーフを発売する。トヨタ自動車はハイブリッド車の充実だけでなく、提携先の米ベンチャー、テスラ・モーターズと共同開発したEVを12年に発売する予定だ。

エコカー競争が過熱する中、GMはプラグインハイブリッド車「シボレー・ボルト」を近く発売する。再生の象徴としており、この売れ行きが焦点となる。

GMが好調な中国市場なども各メーカーの主戦場となっており、GMの牙城が揺らぎかねない。

技術革新を進め、売れる車をどう市場に提供していくか。本格再建を目指すGMの試練はまだ始まったばかりである。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/562/