民主党が看板に掲げる「政治主導」の矛盾がまたも露呈した。
行政刷新会議が、4日間の事業仕分け第3弾の後半日程を終えた。過去に仕分けの対象となった約110事業を「再仕分け」したもので、45事業を廃止または予算計上見送りなどと判定した。
目立ったのは、仕分け人と各府省の副大臣らとの対立だ。
各府省は、過去に廃止とされた事業の看板を掛け替え、新たに予算要求するなど、様々な抵抗を試みた。官僚だけでなく、政務三役も予算確保の側に回った。
仕分けの結果、例えば、特定地域で規制緩和を進める内閣府の総合特区制度の推進調整費820億円は、政府の新成長戦略の目玉事業という位置づけなのに、予算計上見送りと判定された。
各府省側は、仕分け作業について「法的根拠がなく、閣議決定や政務三役の判断が優先されるべきだ」と主張する。これに対し、仕分け人は、あくまで費用対効果や無駄の削減を追求する。
これでは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなものではないか。各府省と仕分け人の間に共通認識や明確なルールがなく、司令塔もないまま、こうした作業を行えば、混乱するのは当然だ。
仕分けの判定結果をどう扱うのか。閣議決定した案件との整合性をどう取るのか。そうしたルールを事前に、菅首相らが中心となって定めておくべきだった。
もはや事業仕分けにも、“仕分け”が必要だ。過去の効果と問題点を冷静に検証し、今後の作業のあり方を決めねばなるまい。
各府省に公開の場で納得できる説明を求める。なれ合いを排し、第三者の視点で無駄を徹底して省く。その狙いは理解できる。
しかし、本来、多角的な検討が必要な政策の存廃を、わずか1時間程度で判断する現在の手法に無理があるのも明白だ。
この際、大衆迎合的な政治パフォーマンスを排し、より大所高所から政治家が事業の是非を判断する仕組みに見直すことを真剣に検討すべきだろう。
一方、仕分け作業による無駄の削減と財源の捻出に限界があることも改めて浮き彫りになった。
過去1年間の仕分けによる予算削減は最大1・5兆円で、見つかった国庫返納可能な埋蔵金は3兆円だ。民主党が政権公約で示した16・8兆円とは乖離がある。
民主党は、政権公約の誤りを率直に認め、大胆な見直しに取り組まなければならない。
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