ミャンマー総選挙 筋書き通りのむなしさ

毎日新聞 2010年11月12日

ミャンマー総選挙 筋書き通りのむなしさ

20年ぶりに行われたミャンマーの総選挙は、軍事政権と密着した「連邦団結発展党」(USDP)の幹部が上院、下院、地方議会の8割程度の議席確保を見込んで勝利宣言し、段階的な開票結果発表もこれを裏付けている。圧勝と言えよう。

とはいえ、この勝利は国民にも国際社会にも誇れない。20年前の選挙では民主化運動指導者アウンサンスーチーさん率いる「国民民主連盟」(NLD)が大勝した。この結果を受け入れずに居座った軍事政権は、長期にわたる「民主化プロセス」を経て、全く民主的でない選挙システムを構築した。

例えば国会議員の4分の1を軍人枠とするなど、軍部の影響力を恒久化するような憲法を制定した。選挙関連法にはスーチーさんの選挙関与を不可能にし、NLDを窮地に追い込む規定を盛り込んだ。

それらの結果としてNLDは解党処分となり、スーチーさんは自宅軟禁のまま投票日を迎えた。仲間割れの形で選挙に参加した「国民民主勢力」(NDF)は多数派を構成できる数の候補者を立てられなかった。軍事政権の翼賛政党が勝つことに何の不思議もない。筋書き通りだ。

この必勝戦略があってなお、軍事政権は国際選挙監視団や外国人記者の入国を認めなかった。これを公正で自由な選挙とは認め難い。買収や投票強要など不正行為があったとも伝えられている。

米国や欧州はこの選挙を厳しく批判し、日本政府も「誠に残念」という見解を発表した。しかし、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のベトナムは「民主化に向けた重要な一歩」と評価する声明を出し、中国も歓迎と支持を表明した。

ミャンマーは豊富な地下資源などを取引材料に中国やインドの支援を得ている。その他の周辺諸国や欧米は強い影響力を持たず、残念ながら日本もまた例外ではない。

この悩ましい状況で必要なのは、まず当面のミャンマーの動向と真意を十分に把握することだろう。取りざたされているスーチーさんの軟禁解除は実現するのか。そうなったとして、政治活動は可能なのか。

選挙後90日以内には国会が招集されて副大統領3人を選び、その中から大統領が決まる。現在の軍事政権首脳部が大統領に横滑りするのかどうか。翼賛政党には軍出身者以外の実業家なども所属しており、こうした人々も政権入りするのか。

これらを見極めた上で、より適切な方向へミャンマーを導くために関与政策を選ぶことは、不公正な選挙の容認を意味しない。いずれ真の民政移管を見るためには、粘り強い努力を続けるしかあるまい。

読売新聞 2010年11月13日

ミャンマー選挙 民政移行へ国際監視が必要だ

自由で公正とは言い難い選挙だった。

ミャンマーで20年ぶりに行われた総選挙で、軍事政権の翼賛政党が8割余りの議席を獲得したとして勝利宣言した。

軍政は、自宅軟禁中のアウン・サン・スー・チーさんを含め、多くの民主活動家の出馬と選挙活動を禁止した。人口の3割を占める少数民族が住む一部の地域では、治安上の問題を理由にして投票が実施されなかった。

投開票を見守る国際監視団の受け入れや、外国メディアの直接取材も、軍政は拒否した。投開票における不正の発覚を恐れてのことではないか。

これでは、選挙の正当性を疑わざるを得ない。

軍政は、今後90日以内に国会を招集し、大統領など国家指導者を新たに選出することで、「民政移管」実現をアピールして国際社会への復帰を狙っている。内政も外交も行き詰まっている現状を打開したいのだろう。

しかし、当選した与党議員の多くは、軍政下での政府高官や軍幹部だ。制服を脱ぎ捨てただけで、軍政支配の実態は変わらない。

どのような「民政」に移行していくのか、国際社会は監視を強めることが肝要だ。

豊富な資金と組織力を誇る軍政は、ほぼ全選挙区に候補者を立てた。議席の4分の1は自動的に軍人に与えられており、圧倒的に軍政が有利な仕組みだった。

「国民民主勢力」など民主派政党は、都市での集票を期待し、様々な制約下で選挙に参加したが、予想以上にふるわなかった。

国民的人気のスー・チーさんが選挙ボイコットを呼びかけ、民主派が分裂したため、十分な支持が集まらなかった側面もある。

選挙終了を受け、軍政は今日にもスー・チーさんを解放する。だが、自由な活動を認めないのなら、単なるポーズに過ぎない。

政治犯を釈放し、少数民族への弾圧を中止して、国民融和を実現することが、ミャンマーにとって民生向上につながる道だろう。国際社会は一致して、そう促す必要がある。

一方で、中国とインドは、天然ガスなどの資源を求めて、軍政との関係を強化している。

制裁を継続する欧米に対し、日本は、医療など人道支援や人的交流に限った独自の関与政策の実施を通じて民主化を促してきたが、効果があったとは言えない。

政策を再検討し、実効あるものにしていかなければならない。

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