危機的な財政状況の中で、活用されないまま眠る「埋蔵金」の存在が改めて浮かび上がった。
会計検査院は、昨年度の決算検査報告書の中で986件、計1兆7904億円の無駄遣いを指摘した。
このうち1兆2000億円は、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が抱える剰余金だった。塩漬けになっている資金を国庫へ返すよう、所管する国土交通省に求めたのは当然だ。
こうした埋蔵金について、検査院はこれまでも指摘はしてきたが、国庫への返納までは求めなかった。政府が事業仕分けで埋蔵金に切り込んだこともあって、踏み込んだ対応をしたのだろう。一過性に終わらせてはならない。
また、厚生労働省や農林水産省などの七つの特別会計では、一般会計からの不必要な繰入金が総額1623億円にのぼっている。
各省は検査院の指摘を重く受けとめ、貴重な税金の“乱用”を食い止めなければならない。
検査院には、無駄の掘り起こしだけでなく、有効な活用法まで示してもらいたい。
その意味で、今回、休眠施設をよみがえらせる具体策を示したのは一歩前進だ。
廃校や休校になっている公立小中学校の校舎を、老人福祉施設や保育施設としてもっと利用するよう提案した。不要な校舎を抱える文部科学省と、福祉行政を担う厚労省に連携を求めている。
縦割り行政の弊害がこんなところにも及んではいなかったか。
役所の側も実行に移してみてはどうか。うまくいくようなら、同様の取り組みを広げればよい。
相変わらず検査院に抵抗する動きもあった。
今回、災害時に使われる政府専用の無線通信設備について調べようとしたところ、内閣府は、耐震性を確認する計算を怠ったまま工事が行われていたことを把握していながら、「適切に設置した」などと虚偽の説明をしていた。
自らの責任が追及されることを恐れたためだろう。
さらに検査の直前には、それを取り繕うため、業者に命じて慌てて補強工事をさせる隠蔽工作までしていた。明らかな検査妨害であり、許されない行為だ。
会計検査院法では、悪質な妨害行為があった場合、省庁に対し、担当者の懲戒処分を要求できると定めている。
検査院は「役所同士、身内に甘い」などと言われないよう、厳正な姿勢で対処すべきである。
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