野党・自民党の新総裁に、谷垣禎一・元財務相が就任した。
新総裁の最終的な目標は、政権奪還にある。
そのためには、まず、党の解党的な出直しが避けられない。同時に、野党として政権を批判するだけでなく、国益に絡む重要政策については、民主党と協議した上で実現するという柔軟な姿勢が求められよう。
自民党総裁選が投開票され、ベテランの谷垣氏が、河野太郎・元法務副大臣と西村康稔・前外務政務官の中堅若手候補を下した。
谷垣氏は、先の衆院選惨敗後の自民党の再生に向けて、重い責任を負ったといえる。
谷垣氏の勝利は、内閣や党の要職を歴任した経験と安定感、温厚な人柄が、議員、党員の双方から評価された結果とみられる。
河野氏は、谷垣氏が主張した挙党一致の「全員野球」を否定し、派閥政治を手厳しく批判した。だが、派閥領袖の退場を求めるなど性急な「排除」の論理は、多くの理解を得られなかった。
野党の主戦場は国会にある。
谷垣氏は、「錬磨した政策で与党を厳しく追及する。気迫を失ってはいけない」と強調してきた。同時に「あら探しで終わるようではだめだ」とも言っている。
その通りだろう。消費税率引き上げなど税財政や安全保障で正面から論戦を挑む。民主党の政策の矛盾点をあぶり出す一方、責任ある対案をあわせて提示する。
そんな観点から「老壮青」の自民党議員が質問に立つことは、党の活力を引き出すことにつながるのではないか。谷垣総裁も、鳩山首相との党首討論をはじめ国会論戦で、範を示すべきだ。
党の再建は容易ではない。党人事や来夏の参院選をはじめとした国政選挙が最初の関門になる。
総裁選で、世代交代を訴えた河野、西村両氏が一定の支持を得たことは、党役員の大幅刷新を求める党内世論の表れともいえよう。若手・中堅の積極的登用など清新な布陣が必要だ。
参院選では、党執行部に権限を集中させ、候補者も含め戦略を練り直すことが迫られそうだ。
選挙対策も、地方を重視するだけでは、展望は開けない。大事なのは、都市部の働き盛りの世代などから共感を得られる政策を打ち出すことだろう。成長戦略や新たな国家像の提示など、民主党との明確な対抗軸も欠かせない。
自民党は変わった、と有権者に受け止めてもらう。それが政権復帰に向けての第一歩になる。
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