谷垣自民党総裁 解党的出直しの先頭に立て

朝日新聞 2009年09月29日

谷垣自民党 変革への本気を見せよ

全員野球か思い切った世代交代か。党運営のあり方が根本から問われたきのうの自民党総裁選で、谷垣禎一・元財務相が新しい総裁に選ばれた。

重要閣僚や派閥会長も経験した谷垣氏は、議員票、地方票ともに6割を得る戦いぶりだったが、注目に値するのは、河野太郎氏の得票だ。

議員票では西村康稔氏を下回る18%の得票率だったのに、地方票ではその倍、36%の票を得た。河野氏は、森喜朗元首相ら党の重鎮を名指しで批判し、徹底した世代交代を訴えた。

議員の中には、過激な批判に眉をひそめる向きもあった。これに対して谷垣氏は、従来の党内秩序の激変はさせないというメッセージを発した。谷垣氏を選んでおけば、世代交代の歯車が極端に回ることはなさそうだし、党内の混乱も避けられる。そんな安心感が支持を呼んだのだろう。

だが、党内秩序を根底から揺さぶるほどの大手術なくして、果たして今の自民党を立て直すことが可能なのだろうか。河野氏に対して草の根党員たちが3割超の票を寄せたところに、そうした危機感が表れている。

党の変革より当面の安定を優先したツケは、新総裁が払うことになる。来夏の参院選挙に向けて、有権者に「自民党は変わる」と納得させることができるかどうか。

まずは、党執行部の人事で鮮明な姿勢を見せる必要があるだろう。中堅・若手を抜擢(ばってき)し、派閥への配慮を抜きにした大胆な登用を考えねばなるまい。

政策の軸も再構築を迫られている。

これまで自民党にとって「政権維持」が何にも勝る価値基準であり、霞が関の巨大な官僚機構がそのための具体策を練ってきた。

その政権を失った今、自民党は自らの存在目的、アイデンティティーを再定義しないと、民主党政権への対抗軸を定めるのは難しい。

谷垣氏は、行きすぎた市場主義を戒め、家族や地域社会の結びつきを大切にする「絆(きずな)」の理念を訴えている。鳩山首相の「友愛」とどこがどう違うのか。その差異を際だたせることができなければ、もともとの保守層の支持も失いかねない。

野党としての主戦場は国会だ。政権の誤りを突き、説得力のある対案をぶつけなければならない。これまでのように官僚機構を頼るわけにはいかない。政策立案能力が問われる。

谷垣氏は政策に明るいベテラン議員を国会質問にたてる方針を打ち出している。建設的な政策論争は歓迎だが、「変わる自民党」を印象づけるには清新な人材を育てる努力も欠かせない。

全員野球の結束だけで再生への展望は開けまい。「変革」への本気をどう見せるか。それが谷垣新総裁の最初の課題である。

読売新聞 2009年09月29日

谷垣自民党総裁 解党的出直しの先頭に立て

野党・自民党の新総裁に、谷垣禎一・元財務相が就任した。

新総裁の最終的な目標は、政権奪還にある。

そのためには、まず、党の解党的な出直しが避けられない。同時に、野党として政権を批判するだけでなく、国益に絡む重要政策については、民主党と協議した上で実現するという柔軟な姿勢が求められよう。

自民党総裁選が投開票され、ベテランの谷垣氏が、河野太郎・元法務副大臣と西村康稔・前外務政務官の中堅若手候補を下した。

谷垣氏は、先の衆院選惨敗後の自民党の再生に向けて、重い責任を負ったといえる。

谷垣氏の勝利は、内閣や党の要職を歴任した経験と安定感、温厚な人柄が、議員、党員の双方から評価された結果とみられる。

河野氏は、谷垣氏が主張した挙党一致の「全員野球」を否定し、派閥政治を手厳しく批判した。だが、派閥領袖の退場を求めるなど性急な「排除」の論理は、多くの理解を得られなかった。

野党の主戦場は国会にある。

谷垣氏は、「錬磨した政策で与党を厳しく追及する。気迫を失ってはいけない」と強調してきた。同時に「あら探しで終わるようではだめだ」とも言っている。

その通りだろう。消費税率引き上げなど税財政や安全保障で正面から論戦を挑む。民主党の政策の矛盾点をあぶり出す一方、責任ある対案をあわせて提示する。

そんな観点から「老壮青」の自民党議員が質問に立つことは、党の活力を引き出すことにつながるのではないか。谷垣総裁も、鳩山首相との党首討論をはじめ国会論戦で、範を示すべきだ。

党の再建は容易ではない。党人事や来夏の参院選をはじめとした国政選挙が最初の関門になる。

総裁選で、世代交代を訴えた河野、西村両氏が一定の支持を得たことは、党役員の大幅刷新を求める党内世論の表れともいえよう。若手・中堅の積極的登用など清新な布陣が必要だ。

参院選では、党執行部に権限を集中させ、候補者も含め戦略を練り直すことが迫られそうだ。

選挙対策も、地方を重視するだけでは、展望は開けない。大事なのは、都市部の働き盛りの世代などから共感を得られる政策を打ち出すことだろう。成長戦略や新たな国家像の提示など、民主党との明確な対抗軸も欠かせない。

自民党は変わった、と有権者に受け止めてもらう。それが政権復帰に向けての第一歩になる。

産経新聞 2009年09月30日

自民党新執行部 一丸で党改革に取り組め

自民党の再生に向けた陣容が決まった。谷垣禎一総裁は、党運営の要となる幹事長に、麻生政権などで国対委員長を務めた大島理森元農水相を任命した。政調会長は石破茂前農水相、総務会長は田野瀬良太郎元財務副大臣、国対委員長には川崎二郎元厚生労働相を起用した。

人選について谷垣氏は「大変難しい時なので、力量のある方というのが一番のポイント」と説明した。自民党のイメージを刷新する斬新な顔ぶれとは言い難いが、最大派閥の町村派からの起用を見送るなど、谷垣氏が強調してきた派閥の意向にとらわれない布陣になったといえよう。新執行部は一丸となって、党勢立て直しに臨んでもらいたい。

自民党が政権奪還を果たすには、谷垣氏自身が唱えた「みんなでやろうぜ」という挙党態勢をまず確立することだ。内輪もめをしている状況ではない。世代交代を訴えた河野太郎元法務副大臣や西村康稔前外務政務官をいかに起用するかも問われる。

新執行部が直面する最大の課題は参院選での勝利だ。10月8日には神奈川、静岡両補欠選挙が告示される。来年夏の参院選は、自民党が反転攻勢できるかどうかの大一番となる。選挙を実質的に取り仕切る幹事長の責任はきわめて大きい。

「勝てる候補」を擁立するためには、前例にとらわれない候補者選考が求められよう。場合によっては大胆な候補者差し替えも必要だ。国会運営で培われた大島氏の政治手腕に期待したい。同時に有識者による候補者選定委員会を設置し、コンテストで広く逸材を選ぶ仕組みを導入するなど党改革も進めてほしい。

政策作りも与党時代のように官僚を頼るわけにはいかない。自分たちで練り上げることになる。谷垣氏は「政権構想会議」や「影の内閣」を設置して取り組む意向だが、国民のもとに積極的に出向き、直接声を吸い上げる体制をつくることが大事だ。

戦う野党として国会追及にも期待がかかる。対決姿勢ばかりでは国民の支持は得られないだろうが、多くの国民が納得していない鳩山由紀夫首相の違法献金問題などをあやふやにしてはならない。外交や安全保障政策、財源問題など鳩山政権の基本政策には危うさも多い。代替政策を掲げ問題点をただしてもらいたい。

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