小沢氏招致問題 政権の足を引っ張るな

朝日新聞 2010年11月05日

小沢氏招致 民主党が決断する時だ

民主党の小沢一郎元代表が、土地取引事件について国会で説明するよう求めた岡田克也幹事長に対し、応じない考えを伝えた。インターネットの番組でも「司法で取り上げているものを立法府がいろいろと議論するのは妥当でないし、必要でもない」と語った。

小沢氏は政治資金規正法違反の罪で強制起訴されることが決まっている。裁判で事実関係が解明されるべきなのは言うまでもない。だからといって、国会で自ら説明することが「妥当でない」というのは、理解に苦しむ。

政治の場では、その立場によって、果たすべき責任の重さや内容、方法は異なる。小沢氏が首相をめざすような有力政治家でないなら、状況は違ったかもしれない。

しかし、小沢氏は2カ月前に事実上の首相選びである民主党代表選に立候補した。長年にわたって政界の中心にあり、何よりも「政治改革」実現の立役者であった。

「司法の場で」という理屈で批判をかわせる立場だろうか。求めがあれば国会で説明するのは当然ではないか。

小沢氏は、強制起訴が決まったあと、国会での証人喚問や政治倫理審査会への出席について「国会の決定にいつでも従う」と記者団に述べた。

今回のネット番組でも、「岡田君一人で決める話じゃない。国会として、その前に党としてどういう結論を出すか」と語った。

党としての決定、国会としての決定には従うということなのだろう。

政治倫理審査会は本人の申し出のほか、委員の過半数が賛成した場合に審査を行う。民主党は政倫審開催に向け、国会を動かすべきだ。

政倫審が議決しても出席の義務はない。鳩山由紀夫前首相は「故人献金」疑惑で政倫審に出席を求められても応じなかった。

だが、国会の決定には従うと明言した小沢氏は、言葉の重さを心得ているのであれば、そんな過ちは犯すまい。

鳩山氏は首相退陣表明にあたって、小林千代美衆院議員(当時)に、陣営への違法献金事件の「責めを負うていただきたい」と求め、小林氏は「監督責任」をとって議員辞職した。

一方、民主党は小沢氏に対しては、元秘書らが逮捕・起訴され、本人の強制起訴が決まっても何の処分もしていない。

先の代表選で200人の国会議員が小沢氏に投票しており、扱いに苦慮しているのだろう。しかし、処分どころか国会での説明さえ実現できないのであれば、党執行部はその力量も、公平性も疑われる。

首相は先に、「本人の意向に沿わないでも、やらざるを得ない時には党として判断したい」と答弁している。

そろそろ、その時が来ている。

毎日新聞 2010年11月05日

小沢氏招致問題 政権の足を引っ張るな

これが「大政治家」の理屈なのだろうか。情けなくなる。民主党の小沢一郎元代表が3日、久しぶりにメディアに登場、自らの国会招致について応じない意向を表明した。4日の岡田克也幹事長との会談でも、招致拒否の姿勢は変えていない。

小沢氏によると、その理由は、(1)三権分立の立場からすれば、司法で取り上げているものを立法府が議論するというのは妥当ではない(2)国会として、党としての基本的な考え方が未定だ、というものだ。

この言い分をどう受け止めるか。われわれの主張はシンプルだ。一国の路線に強い影響力を持つ政治家が、これだけ社会的な問題になった自らの政治とカネについて、活動拠点としての国会で、何の説明、釈明もなくていいのか。三権分立を持ち出すまでもない、選良に求められる基本的な倫理である。法的責任とは別の政治的責任と言ってもいい。

釈明の場はいろいろある。まずは、政治家が進んで自らの潔白、立場を明らかにする場として設けられた政治倫理審査会を活用すべきだろう。参考人として招致するか、さらには証人喚問が必要かどうかはその後の問題である。必要最低限の務めを果たしてから理屈をこねるべきではないか。党としての基本的考えを決定すべきはその段階であり、国会の対応もそれを受けて決まるだろう。

基本的義務を果たすことに抵抗があるのだろうか。前向きだった時期もあったと記憶する。やましいことはない、検察がそれを立証してくれた、と言うのであれば、その通り国会で証言すればいい。それもなくしてだだをこねるような姿勢は、みっともないし、疑念も呼びかねない。

もっとも、民主党執行部にも責任がある。臨時国会を開会して1カ月。4日ようやく岡田、小沢会談が実現、岡田氏が小沢氏に政治的責任として政倫審での説明を求めたが、それまでは「火中のクリ」を拾う者がなく、結果的にこの問題のハードルを高くしたきらいがある。岡田氏には首相候補のメンツにかけても早期決着を図るよう望みたい。

「普天間」「尖閣」「北方領土」「オバマ民主大敗」と、日本を取り巻く国際環境の変化はめまぐるしい。積み残しの懸案が同時に火を噴き、新しい対応を求められている。まさに、政治が本来の力を発揮すべき時だ。小沢問題にエネルギーを消耗しているわけにはいかない。

最後に小沢氏に聞きたい。代表選で負けが決まった時に何と言ったのか。「今後とも民主党政権を成功させるために頑張る」。どうすればこの政権交代を成功に導けるのか、範を示す立場ではないのか。でなければ菅政権ともども沈没するだけだ。

読売新聞 2010年11月05日

政倫審拒否 小沢氏の証人喚問が必要だ

有力政治家としての説明責任の放棄であり、自分勝手な保身の論理と言うほかない。

民主党の岡田幹事長が4日、小沢一郎元代表と会談し、小沢氏の「政治とカネ」の問題について、衆院政治倫理審査会に出席し、説明するよう要請した。だが、小沢氏は、「今の考えを変えるつもりはない」と国会招致に応じない意向を伝えた。

「今の考え」とは、小沢氏が3日のインターネット番組で、「三権分立から言えば、司法で取り上げられているものを立法府で議論するのは妥当でない」などと語ったことを指すのだろう。

この主張はおかしい。小沢氏が国会で事件の詳細を語ることは司法手続きの妨げにはならない。

過去にも、本人や秘書が刑事責任を問われた多くの政治家が国会招致に応じている。民主党も野党時代、刑事事件に関与した与党議員の証人喚問を再三要求した。

小沢氏自身も、検察審査会の議決で強制起訴となることが決まった後、国会招致について「国会の決定に従う」と言明していた。この発言とも矛盾する。

そもそも小沢氏には、司法の場で争われる刑事責任とは別に、有力与党議員としての政治的責任がある。国会で説明しないことが国民の政治不信の一因となっていることを自覚せねばならない。

小沢氏は「政倫審も証人喚問も基本的に秘密会。公開の場でやりなさいというのが検察審査会の意見なので、僕はそれに従って公判で説明したい」とも語った。

明白な事実誤認だ。証人喚問は公開で行われ、許可制なのはテレビ中継などにすぎない。政倫審も公開が可能で、前例もある。

小沢氏が公開にこだわるなら、国会の公開の場で堂々と自らの主張を述べればいいはずだ。

小沢氏が検察審査会を「秘密のベールに閉ざされている」と批判しつつ、「公開の場」という部分だけを取り上げ、自らの行為を正当化するのはご都合主義だ。

今後の焦点は、民主党執行部の対応だ。岡田氏は、小沢氏招致の「国会中の実現に努力する」と野党側に約束した以上、実現に全力を挙げる責任がある。小沢氏の身勝手な対応を看過すれば、補正予算案や法案の審議、ひいては「熟議の国会」の障害となる。

菅首相も岡田氏任せにせず、そろそろ自ら小沢氏を説得する必要がある。小沢氏があくまで招致に応じなければ、小沢氏に出席を強制できる証人喚問の実現に積極的に動くべきだ。

産経新聞 2010年11月07日

小沢氏の招致拒否 喚問で確認書偽造ただせ

「国会の決定に従う」と言っていたのが、「政治倫理審査会が区切りになるのか」に変わり、国会招致を拒む。「一兵卒として協力する」と言いながら、政権の足を引っ張る。これが先の代表選で首相を目指した、大物といわれる政治家の言動だろうか。

資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件をめぐり、小沢一郎元代表が4日、岡田克也幹事長に政倫審への出席を拒否すると伝えたが、独善と開き直りとしか言いようがない。

与党の責任者である岡田氏がなかなか小沢氏に会えず、ようやく会えても要請をあっさり断られるのも異様である。

菅直人首相は「岡田氏の努力を見守る」とまるで人ごとのような姿勢だが、この問題を先延ばしにすればするほど、菅政権に対する国民の不信は高まり、国政は停滞するだけだ。

偽証罪を伴う証人喚問が必要だったのに、首相は動こうとしなかった。民主党は、政治とカネの問題で自浄努力を示さなかったことが国民の信をいかに失っているかを再認識すべきである。首相は小沢氏に「喚問」受け入れを説き伏せなくてはならない。

検察審査会の起訴議決により強制起訴されることが決まっている小沢氏は、3日のインターネット番組への出演で「司法で取り上げているものを立法府がいろいろと議論するのは、妥当でないし、必要でもない」と語った。岡田氏に対しても「今の考えを変えるつもりはない」と伝えた。

元秘書ら3人が起訴された小沢氏の政治的・道義的責任は極めて重い。司法手続きを進めるので国会で説明する必要はない、という主張は筋違いだ。

とりわけ看過できないのは、平成19年に公表した土地購入の「確認書」について、「記者会見直前に作成されたものではないか」との疑惑が以前から持たれていた問題だ。この確認書について、小沢氏は同じインターネット番組の中で「忘れていたから気がついた時に作っただけだ」と、新たな釈明を行っている。

小沢氏個人が土地の権利を有さないことを示す重要書類でありながら、その作成に関して虚偽の説明をしていたことになる。この一つをとっても、重大な疑惑といえる。いずれも証人喚問が必要不可欠であることを示している。

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