状況が見えていないのではないか。
民主党が企業・団体献金の受け入れ再開を決めた。国や自治体と、公共事業や物品調達の契約をしていないか、していても1件1億円未満の企業などに限って献金を受け入れ、パーティー券を買ってもらうという。
マニフェスト(政権公約)違反ではないと、民主党はいう。確かにそうかもしれない。
昨年の総選挙公約は「政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する」とした。その一方で、当面は1億円以上の契約がある企業などについて禁じる、と記していた。
ただ、1億円未満の企業についても、民主党はこの間、献金の受け入れを差し控えていた。
政治資金についての「検討の結論が出るまで」という限定つきとはいえ、公約を超えて自制してきたわけだ。
それを、公約通りに戻すのが今回の措置だという説明である。
原理原則を重く見る岡田克也幹事長の判断なのだろう。国費である政党交付金への「過度の依存」を懸念する岡田氏の議論に、一理あることも間違いない。
しかし、今回の献金再開は後ろ向きであり、流れに逆行している。
小沢一郎元幹事長、鳩山由紀夫前首相の政治とカネの問題で、民主党は歴史的な政権交代に大きな傷をつけた。その苦境を脱する取り組みの象徴が、企業・団体献金の禁止だったはずだ。
なのに民主党は小沢氏の国会での説明にいまだ応じていない。それが壁となって政治資金をめぐる与野党協議にも入れない。あまりに対応が鈍い。
そんな状況での再開は、政治とカネへの有権者の批判の厳しさ、不信の深さを見誤っているというほかない。
公約破りではないと言い張っても、野党も納得しないだろう。
いまからでも再開を撤回すべきだ。あわせて、小沢氏の国会での説明を早く実現させてもらいたい。
与野党協議にこぎつけたとしても、禁止に向けた法改正は簡単ではない。
大きな論点は、個人献金をどう広げるかだ。それなしに企業・団体献金を禁じれば、政党助成を受けられない小さな政党は締めだされかねない。
禁止が実現しても、企業や労働組合などが禁止の対象とならない政治団体をつくったり、経営者が個人名で寄付したりする抜け道は残るだろう。
透明性を向上させる措置が不可欠である。資金管理団体や政党支部など、政治家が持つ数多くの「財布」をひとつにまとめるべきではないか。
難問だからこそ早く協議を始めなければならない。まず自らが襟を正し、決意を示すことだ。隗(かい)より始めよ、という言葉を思い出してほしい。
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