代表質問 主権守り抜く具体策示せ

読売新聞 2010年10月09日

各党代表質問 「イラ菅」の棒読みでは困る

肝心の答弁の中身は棒読みで、野党の挑発質問にはムキになる。菅首相の答弁がこれでは、首相の唱える「熟議の国会」は遠のくばかりだ。

3日間にわたった衆参両院での各党代表質問は、首相の答弁がおざなりで、論戦はまったく深まらなかった。

政治とカネの問題では、民主党の小沢一郎元代表に対する証人喚問について、「国会で議論、決定すべきこと」と繰り返した。党の対応も「岡田幹事長が検討している」の一点張りだった。

野党がただしたのは、小沢氏の説明責任や政治的けじめに対する首相自身の見解である。

首相は9月の民主党代表選で、「クリーンな政治」を掲げた。小沢氏の疑惑にも「しっかりした説明が必要」と述べていた。ならば党首として、岡田幹事長や小沢氏に直接働きかけ、国会招致の実現に動くのが筋だ。

首相は尖閣諸島沖の漁船衝突事件でも、中国人船長の釈放は「検察の判断」と言うのみだった。外交判断と政治責任を検察に“丸投げ”している、との野党側の批判に、首相の答弁は何も答えていないに等しい。

答弁の中身の空疎さと対照的に際立ったのが、「イラ菅」ぶりだった。イラ菅とは、すぐにイライラして相手に当たり散らすとして首相についたあだ名である。

()(きょう)者内閣」「(うそ)八百」「有言不実行」などと批判した自民党の稲田朋美衆院議員に対し、首相は「私もこれほど汚い言葉は使わなかった」と強く反発した。

だが、首相が野党時代、自公政権の首相や閣僚に繰り出した挑発的な質問と比べて、五十歩百歩、と受け止めた議員は多かろう。

首相は「原稿を読まずに答弁しろ、というなら、原稿を読まないで質問するのが筋」とも発言し、党内からも「品位を欠く」と批判され、謝罪を余儀なくされた。

一方で首相は、公明党の質問には驚くほど丁寧、低姿勢な答弁ぶりだった。ねじれ国会打開のため公明党の協力を切望するのはわかるが、「熟議」を言うなら、他の野党にも誠実に答弁すべきだ。

論戦の舞台は、来週から予算委員会に移る。代表質問のような、事前に用意した応答要領を読むだけの答弁では済まない。

政策課題では、応答要領にある程度頼らざるを得ないにせよ、その中にも自らの政治信念や知見、経験を盛り込む工夫を凝らして、聞き応えのある論戦とするよう心掛けてほしい。

産経新聞 2010年10月07日

代表質問 主権守り抜く具体策示せ

菅直人首相の所信表明演説に対する代表質問が衆院で始まった。

首相は中国漁船の領海侵犯に関連する尖閣諸島について「万全の警備を行う」と語った。海上保安庁の警備体制の強化などは当然だが、首相に考えてほしいのは中国が尖閣の領有権を主張した上に、日本にこれを認めさせようと力ずくの行動をとったことである。

尖閣の守りは極めて危うい状況にある。これをいかに是正していくかに指導力を発揮しなくてはならないのにそうした姿勢がうかがえなかったのは極めて残念だ。

中国人船長の釈放について、首相は「検察当局の適切な判断」で決定したとの立場を崩さず、国内法に照らして的確に判断されたとの見解を繰り返した。

漁船衝突事件の状況を海上保安庁が撮影したビデオ映像の公開についても、「捜査当局の判断」待ちとした。船長釈放で事実上、不起訴処分としたのにビデオ公開で捜査に支障を来すとは考えにくい。中国を刺激したくないとの判断なのだろうが、主権を守る意識はうかがえない。

また判断を検察任せにする姿は再び政治の怠慢と映り、責任転嫁との批判は免れない。

自民党の谷垣禎一総裁は強制起訴が決まった小沢一郎元幹事長に対する証人喚問を要求した。だが首相は「本人が判断し対応するのが望ましい」と語り、喚問の実現を促す意思をみせなかった。

鳩山由紀夫前首相の母親からの巨額の提供資金の使途に関する資料の公開についても「裁判などがすべて終わり、首相を辞任した」と述べるにとどめた。自ら掲げた「クリーンでオープンな政治」に逆行している。

衆参のねじれの下で政策を実現する前提として、衆院選マニフェストをどう修正するかをもっと説明してほしい。財政再建への考え方では「自民党と共通する内容も多い」と語った。消費税増税の具体論を早急に示すべきだ。

一方、外国人参政権問題では、「安全保障上の問題を含め、さまざまな意見がある」と慎重な議論の必要を認め、民主党の党員・サポーターに国籍要件を加えるよう検討すると述べたのは当然だ。

民主党が「政府の考えは分かっている」と衆院代表質問を行わないのは疑問だ。与党として政策を質(ただ)すのは立法府の責任である。

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