ゼロ金利復活 政府も早期の景気対策で続け

朝日新聞 2010年10月06日

ゼロ金利復活 民間の奮起促す苦肉の策

景気の悪化に備え、大胆に先手を打ったという印象を内外に与えようとしたのだろう。日本銀行が新たに包括的な金融緩和に踏み切った。

ゼロ金利復活をはじめ、国債などを買い取るための基金設立も含むメニューは、市場関係者の予想を超える思い切ったものになった。

日銀の緩和策は、全体として2001~06年に行った広範な緩和政策に近い姿となる。政府が進めている経済対策との相乗効果が期待される。

金融緩和政策に手詰まり感があった中、あえて追加の緩和を決断した直後の会見で、白川方明総裁は「日銀は金融緩和のフロントランナー」と強調した。円高や米国などの経済停滞に伴う国内景気の後退、デフレ長期化への懸念をなんとしても封じ込めたいとの意欲がにじんだ。

新設する基金の規模は35兆円だが、うち30兆円分はこれまでの超低金利による資金供給が横滑りするので、本当の追加分は5兆円となる。臨時異例の措置として、期間2年以内の国債や社債、コマーシャルペーパーのほか、指数連動型上場投信(ETF)や不動産投資信託(J―REIT)といった金融資産も買い入れる。

国債の追加買い入れは、2年程度までの長めの金利を抑えて設備投資などを誘発するのが狙いだ。ただ、行き過ぎると、財政赤字の尻ぬぐいと見られかねない。基金を臨時で別勘定としたのは、そのような疑いを持たれないための苦肉の策だ。

だが、そうした理屈が通るには、財政健全化に向けた政府の決意が欠かせない。補正予算をめぐる論議では国債の増発論がくすぶるが、日銀による国債買い増しは財政への信認維持に向けた具体的な行動を政府に求める意味があると理解されるべきだ。

民間の金融機関にも、努力が問われている。企業の資金需要を掘り起こし、日本の経済と金融を正常化する努力を急がねばならない。

日銀が株式市場や不動産証券化市場に介入してETFやJ―REITを買うのは、中央銀行としては冒険だ。投資先の企業などが破綻(はたん)して日銀が大きな損失を被る恐れがある。しかし、投資家があまりにも慎重で、相場が異常に低迷した場合などには「活」を入れて反転の呼び水にするくらいは是認される、という発想である。

企業や投資家が積極的に動き出す機運を高めない限り、デフレも終わらないし、円高も克服できない。「ならば中央銀行としてできることをやろう」というギリギリの判断だが、その正しさをきちんと説明できてはいないという危うさをはらむ。

投資家の日銀頼みを助長するといった副作用も考えられる。慎重な運用に心がけねばなるまい。

読売新聞 2010年10月06日

ゼロ金利復活 政府も早期の景気対策で続け

日銀が、実質的なゼロ金利政策の復活と、量的金融緩和策の強化に踏み切った。

円高を阻止し、これ以上の景気悪化を防ぐための適切な政策と言えよう。

とはいえ、円高やデフレの圧力は依然強い。「二番底」の回避に向け、政府と日銀がしっかりスクラムを組む必要がある。

政府は日銀に続き、追加経済対策を充実した内容に仕上げ、実行に必要な補正予算の早期成立を図らねばならない。

日銀は、年0・1%の政策金利を0~0・1%へと引き下げた。ゼロ金利の実施は約4年ぶりで、物価上昇率が安定してプラス1%程度になるまで、この金利を続ける方針も示した。

デフレ解消に最大の力点を置いた対応は、市場の信頼確保に役立つのではないか。

量的緩和策については、日銀が設ける基金で国債などを買い、市場に資金供給する仕組みを初めて導入した。今後1年で、長期国債などを3・5兆円、社債など民間債券を含めて計5兆円を買い入れ、必要なら追加も検討する。

日銀は現在、長期国債を月1・8兆円ずつ買っているが、保有残高が増え、内部ルールで定めた上限まであと約20兆円しかない。そこで、基金での長期国債買い入れをルールの例外とし、上限に関係なく買えるようにした。

日銀の白川方明総裁が記者会見で「臨時・異例の措置だ」と強調したように、今回は新しい工夫を多く盛り込んだ点が目立つ。

追加緩和の発表後、東京市場の株価が急上昇し、為替相場も一時、円安に振れた。市場も意外性のある大胆な政策だったと、とりあえず評価したようだ。

ただし日銀は、「なすべき政策は出しつくした」などと安心してはならない。5兆円という追加買い入れの規模はさほど大きくはない。市場安定や景気下支えの効果が出ているか注視し、必要なら、すぐさま上積みを図るべきだ。

12月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業の景況感は7四半期ぶりの悪化が見込まれる。エコカー補助金の打ち切りや猛暑による消費拡大の反動減など、景気下振れの懸念材料は多い。

米国など海外経済の減速にも注意が必要だ。米連邦準備制度理事会(FRB)が来月に追加金融緩和に踏み切るという観測から、円高圧力が強まる可能性もある。

政府・日銀は連携し、円高と景気悪化の阻止に全力であたってもらいたい。

産経新聞 2010年10月06日

実質ゼロ金利 課題は政府の「本気度」だ

日銀が追加金融緩和を決めた。4年3カ月ぶりの実質的なゼロ金利政策への転換であり、市場では円安が進み、株価も反発した。

日米の金利差が縮まる方向に政策誘導することで、円高阻止に対する姿勢を示した。一定の効果はあるだろう。だが課題は政府の本気度だ。日銀の緩和策に併せ、消費や企業活動が腰折れしないよう、実効ある政策を打ち出す必要がある。

日銀が追加の金融緩和に踏み切ったのは、円高・株安に加え、エコカー補助金の打ち切りなど景気刺激効果の息切れで、景気の先行きに不透明感が強まっているためだ。白川方明(まさあき)総裁は会見で景気判断を下方修正した。

日銀は8月末に追加の資金供給策を実施したが、市場からは「政策が小出し」との批判が強かった。しかも先月の政府・日銀による為替介入の効果も薄れ、円相場は再び介入直前の水準まで上昇していた。

今回、日銀は長期国債などの買い入れを行う35兆円規模の基金創設も決め、白川総裁は「物価の安定が展望できる情勢になるまで実質ゼロ金利政策を継続する」との決意を示した。将来にわたっての潤沢な資金供給を約束したもので、円高抑止の効果的なメッセージとなることを期待したい。

しかし、日銀の決断があっても、政府が有効な経済対策を打ち出さなければ、日本経済の足腰を強くすることはできない。

菅直人政権は先に成長戦略を発表したものの、政策の優先順位が分からず、何をやろうとしているのかはっきりしない。農業や医療分野の規制緩和策など、産業構造の転換につながる政策から早急に肉付けし、実施に移すべきだ。国民の成長期待を高めるには、年金や医療制度の抜本的な改革も欠かせない。

菅政権は今後の補正予算、来年度予算の編成によって、切れ目なく経済対策を進めるとの方針を掲げているが、予算バラマキの色彩が濃い。このままでは、構造改革につながってはゆくまい。

政府・日銀は引き続き、市場動向をみながら、機動的に適時介入を実施する必要がある。今月8日、ワシントンで開かれる先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、為替介入への理解を得るため積極的な「通貨外交」を展開しなければならない。

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