消費者金融大手の武富士が、自力での経営再建を断念し、会社更生法の適用を申請した。
貸金業法の改正などで経営環境が激変し、破綻に追い込まれた。
武富士は、創業者のワンマン経営のもとで、派手な宣伝を展開して注目され、業界のトップに立っていた時期もある。
だが、過剰な貸し付けや無理な取り立てが問題になったほか、2003年には創業者が逮捕される不祥事も起こし、大手銀行などとの提携戦略にも乗り遅れた。
武富士の破綻は、消費者金融業界が新たなビジネスモデルを見つけなければ、今後、経営が立ちゆかないことを示したといえよう。業界は抜本改革に取り組むきっかけとすべきだ。
大きな利益を上げていた消費者金融業界が、転機を迎えるきっかけとなったのが、2006年1月の最高裁判決である。
消費者金融の多くは、利息制限法の上限(15~20%)と出資法の上限(29・2%)の間の「グレーゾーン(灰色)金利」で融資していたが、判決は、利息制限法を超える分は「過払い利息」として返還を請求できるとした。
このため利用者からの返還請求が相次ぎ、すでに大手4社だけで計1兆円超を返している。
武富士も4000億円超を返還したが、まだ1兆~2兆円は請求される可能性があるという。武富士は資金不足が深刻で、請求しても一部はカットされそうだ。
武富士の経営にさらに追い打ちをかけたのが、貸金業法の改正である。グレーゾーン金利での貸し出しを明確に禁止し、融資額を年収の3分の1までに制限する総量規制も盛り込まれた。
規制の強化や資金繰りの逼迫により、武富士は昨年11月から新規融資をほぼ停止し、展望が開けない状況に陥っていた。
法改正などに伴う収益の悪化で、貸金業者は廃業が相次ぎ、10年前の約3万社から、今では約10分の1に激減した。
かつてのような、大きな利益が期待できなくなった以上、淘汰が進んだのも当然だろう。
とはいえ、個人や零細企業にお金を用立てる小口金融へのニーズは根強い。顧客本位に手堅く経営することで、利用者と業者が共存共栄する方法もあるはずだ。
社会的に受け入れられる金融ビジネスを、今後どのように展開していくか。消費者金融業界は襟を正しながら、生き残りの道を探らねばなるまい。
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