補正予算 与野党連携で編成・執行急げ

朝日新聞 2010年09月28日

補正予算 与野党協議の良き前例に

衆院と参院で多数派が異なる「ねじれ国会」に与野党はどう臨むのか。今年度補正予算案を巡る調整作業が格好の試金石になりそうだ。

菅直人首相がきのう、追加経済対策のための今年度補正予算案の編成を政府・民主党首脳会議で指示した。今週末召集の臨時国会に提出する方向だ。

経済対策といえば、エコポイント制度の延長や若者向け雇用対策などに予備費約9200億円を活用することが先週、閣議決定されたばかりだ。追加対策が不可欠とは思えない。

にもかかわらず首相が補正に踏み切った理由の一つは、「思い切った規模の対策」を求める野党への配慮だろう。自民、公明の両党は4兆~5兆円を提言している。民主代表選で小沢一郎氏が2兆円対策を求めたように、党内世論も意識せざるをえない。

財源のめどが立つという幸運にも恵まれた。昨年度決算の剰余金が出たうえ、今年度の税収が予想より増えている。かたや超低金利のおかげで国債の利払いは減りそうだ。これらで3兆~5兆円の財源が見込まれる。

とはいえ、予備費で取り急ぎまとめた前回の景気対策と違って、補正予算を組んでまで打つ今回の追加対策である以上、いくつかの原則を踏まえておかねばならない。

第一に、財源を膨らませるために新たな借金である国債発行はしないことだ。来年度予算は3年連続で税収より国債による収入の方が多くなるのは必至だ。そんな異常事態のもとで菅政権が財政規律をゆるませる姿勢を少しでも見せれば、納税者にも市場にも不信と不安を広げてしまう。

第二に、来年度予算で本格的に取り組む新成長戦略や雇用創出につなげる内容にすることだ。

来年度予算では各省庁に政策経費の一律10%削減という厳しい枠を課し、「元気な日本復活特別枠」として1兆円超を生み出そうとしている。それに比べても3兆~5兆円という規模は格段に大きい。

円高の逆風で今後は法人税の増収が期待しにくいことを考えれば、今回の財源は虎の子だ。長い目で日本再生に役立つ使い方をせねばならない。

第三に、補正予算案の編成作業が今後の与野党協議のお手本になるようにしてほしい。

ねじれの下では、野党との協調なしには国会運営は立ちゆかない。だからこそ、自民党などから「ばらまき」と批判が強い民主党の衆院選マニフェストを大幅に見直すことを前提に、与野党協議を呼びかけたらどうか。

そのさい注意すべきは、さまざまな野党要求をのみ込もうとするあまり総花的な内容になったり、規模が膨れたりすることだ。成長と雇用重視の基本を貫いてこそ認められる補正である。

毎日新聞 2010年09月30日

景気と補正予算 議論の質を高めよう

「円高が大変」「景気が失速する」「補正予算は○兆円規模で」--。聞き慣れた言葉がまたこだましている。菅直人首相が補正予算案の編成を与党に指示し、論議が活発化してきたが、先行きが気がかりだ。

まず、景気の分析や重点的に取り組むべき施策の中身より、規模やどの野党と組んでいくかといった国会対策上の検討が先行している点だ。補正予算は、ねじれ国会という状況の中で、与野党がいかに物事を決めていくかが問われる最初の試金石になる。政府・与党案が国会審議を経て、よりよいものに修正されるのは結構だが、野党の協力を取り付けるための、ばらまき作戦は困る。

すでに、4兆円、5兆円など数字が飛び交っている。果たしてそれだけの予算が必要な経済状況かといった議論から出発すべきだ。

日銀が29日に発表した9月の短観では、大企業・製造業の景況感が6期連続で改善し、リーマン・ショック前の水準に戻った。大企業・非製造業や製造業の中堅企業でも、足元の景況感を示す指数がプラスに転じ、回復の広がりを裏付けている。

もちろん先行きについては、円高の影響や世界経済の動向が読みにくいことから、企業は軒並み慎重だ。しかし、財政が先進国一、悪化している中で、大規模な追加歳出が不可欠となるほど深刻な景気悪化が見込まれるというのか。納得のいく経済分析を行ってほしい。

次に財源問題だ。予想以上の金利低下で浮いた国債利払い費や法人税収の上振れ見込み、09年度決算剰余金などを合わせると、4・6兆円規模の財源が確保できるという。

だが、臨時収入のような財源を、たちまち補正予算で使い切ってしまうことは賢明だろうか。本来、来年度予算で扱う予定だった成長戦略関連事業を一部前倒しで補正予算に盛り込むなど、一体的な編成による歳出総額の抑制も求められよう。

国会での審議では、野党の役割がこれまで以上に重要になりそうだ。歳出のおねだり野党ではいけない。特に、参院選のマニフェストで「財政に責任を持つ観点から財政構造改革を断行」とうたった自民党には、文字通り「財政に責任を持つ観点から」の提言を望みたい。

日銀による追加金融緩和への期待も高まっている。ただ、銀行が日銀から超低金利で3~6カ月借りられる資金をさらに増やしたとしても、効果は極めて限定的と見られる。

その場しのぎの景気・円高対策に気を取られている場合ではない。社会保障制度や税制の抜本改革、経済の活性化など、本来、政治が党派を超えてじっくり取り組まねばならない難題が山積しているのだから。

読売新聞 2010年09月28日

補正予算 与野党連携で編成・執行急げ

菅首相が、景気テコ入れのための補正予算の編成を指示した。

円高・株安に加え、これまでの支援効果の息切れもあって、景気の先行きに不透明感が漂っている。

こうした局面で、政府が補正予算を伴う景気対策に踏みきるのは時宜を得た対応だ。できれば、野党とも協議して内容を詰め、早期に執行させるべきである。

今回の補正に先立ち、政府は今月10日に、円高・デフレへの緊急対策として、総額9200億円の追加経済対策を閣議決定した。

新卒者の採用促進など、雇用対策を中心に、住宅エコポイントの延長などが盛り込まれている。財源は、2010年度予算の予備費を充てる。

しかし、政府・日銀による為替介入にもかかわらず、円相場は高止まりしたままだ。米国や中国経済の減速もあり、この程度の対策では不十分だとの声が強まった。経済界にしてみれば、当然の要求といえよう。

さらに、自民党や公明党が4兆~5兆円規模の補正予算による景気対策を求めていることもあって菅首相も対抗上、補正予算編成を決断した。

規模については、政府は4兆円前後を考えているようだ。おおむね妥当な水準ではないか。

肝心の財源は、一定のメドがついている。まず、09年度決算で使い残した剰余金が1・6兆円ある。このうち半分は国の借金返済に充てなければならないが、残りは自由に使える。

税収の上振れ分もある。10年度予算では37兆円余りの税収を見込んでいたが、2兆円程度上回るとの見方が強い。

さらに、国債費のうち、利払い費が1兆円ほど余る可能性が高くなった。想定金利を2%としていたが、金利の低迷で1%前後で推移しているためだ。

こうした数字を足し合わせれば4兆円近い額になる。厳しい財政事情の中、国債の増発に頼ることなく補正が組めれば、それにこしたことはあるまい。

問題は野党の出方だ。政府が検討中の内容であれば、法改正などは不要で、衆院で補正予算案を可決すれば自然成立する。

自民、公明両党が提案する経済対策とは、内容や規模で、共通点も目立つ。ねじれ国会への思惑もあろうが、今は景気失速防止を優先し、与野党は真剣な協議を通じ、妥協点を探るべきだ。

それが税制など、次の協議に発展するきっかけになろう。

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