日米首脳会談 重要性が増す同盟の再構築

朝日新聞 2010年10月01日

北方領土 訪問は不毛な対立深める

尖閣諸島の領有をめぐって中国との緊張が高まる日本外交の足元を、見透かしたようなロシアの動きだ。

メドベージェフ大統領が「北方領土を近く必ず訪問する」と表明した。

尖閣と違って北方領土は、1993年の東京宣言をはじめとする公式文書で、両国政府が交渉で解決を目指すと確認している。だからこそロシアの歴代指導者も、訪問を避けてきた。

今回の動きには、「第2次世界大戦の結果、帰属が我々に移った」との主張を強めるロシアが実効支配の現状を強調し、四島を固有の領土とする日本の立場を揺るがす狙いがうかがえる。だが、強引なやりかたは交渉を不毛なものにするだけである。

「日ロ関係に重大な支障が生じる」と前原誠司外相が、ロシア側に懸念を伝えたのは当然だ。引き続き、強く訪問中止を働きかけるべきだ。

このところ、ロシア側には領土問題で強硬な動きが目立つ。まず夏には、北方領土の択捉島で兵士1500人が軍事演習をした。

さらに日本が連合国への降伏文書に署名した9月2日を「第2次大戦終結記念日」に制定した。続いて今週、中国を訪問していた大統領が胡錦濤国家主席と、領土保全の原則的立場を保持するとの共同声明を出した。尖閣や北方領土で主張の正当性を確認しあって日本に圧力をかけるような内容だ。

日本の政権が自民党から民主党に代わっても、領土問題で立場が変わらないのに業をにやしたのかもしれない。しかし、こうした動きがロシアの長期的な利益にかなうとは思えない。

石油や天然ガスなどの資源に大きく依存するロシアの経済は、2年前の金融危機で大きな打撃を受けた。このためロシア政権は、経済の「現代化」を目指し、技術や投資の受け入れ先としての欧米や日本と良好な関係を築く政策に乗り出していた。

またロシアは、開発の遅れたシベリアや極東地区の底上げのために、アジア・太平洋諸国との協力強化に努めている。今後は東アジアサミットに参加し、2012年に極東のウラジオストクでアジア太平洋経済協力会議の首脳会議を主催するのもそのためだ。

それなのに、地域で積極的に協力しあうべき日本と領土問題でもめ続ける損失の大きさを、ロシア側はよく考えるべきだ。

民主党政権にも課題がある。

鳩山由紀夫前首相は、東アジア共同体構想を唱えたが、その中で日ロ関係をどう位置づけるかを示す間もなく退陣した。菅直人首相も、メドベージェフ大統領との会談は顔合わせ程度の一度きりだ。中ロの首脳会談は今年だけで5度を数える。

ロシアを含む日本の東アジア政策の立て直しが必要である。

毎日新聞 2010年10月03日

北方領土問題 見過ごせぬ大統領発言

ロシアが北方領土問題で強硬姿勢を見せている。メドベージェフ大統領は中国の胡錦濤国家主席と第二次世界大戦終結65周年に関する共同声明に署名したのに続き、近く北方領土を訪問すると明言した。

旧ソ連時代を通じ北方領土を訪れたロシアの首脳はおらず、訪問の意向を明らかにした首脳も初めてだ。ロシア大統領府筋は、大統領が11月に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席するのに合わせて訪問する可能性を示唆している。

訪問を断行すれば日露関係の悪化は避けられず、領土交渉にも影響が及ばざるをえない。大統領発言を見過ごすわけにはいかない。

中露の共同声明は「日本の中国侵入」に言及し「歴史の歪曲(わいきょく)を断固非難する」と述べている。沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張する中国と、北方領土を実効支配するロシアが連携し領土問題で日本をけん制する狙いがあるようだ。

だが、この歴史認識には同意できない。ロシア(旧ソ連)は日ソ中立条約を一方的に破棄して北方領土に侵攻し不法占拠を続けている。歴史を歪曲しているのはどちらの方か、と問いたい。

ロシアはこの夏、日本が1945年に第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日を大戦終結の記念日とする法律改正を行った。これも北方領土の実効支配を正当化しようとする動きと関係しているのだろう。

メドベージェフ大統領は訪中後、極東を訪れ、北方領土を含むクリル(千島)列島について「今回は飛行できない天候だったが、近い将来、必ず訪れる」と語った。これに対し前原誠司外相が「大統領が訪問すれば日露関係に重大な支障が生じる」と警告したのは当然である。

メドベージェフ大統領は昨年2月、サハリンで麻生太郎首相(当時)と会談し「独創的で型にはまらないアプローチ」によって交渉を加速させることを確認した。今年6月の菅直人首相との会談では、首脳を含めた高いレベルの接触を通じ前進を図っていくことで合意している。一方的な北方領土訪問の表明は信義に反する。

北方領土四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するという日本に対し、ロシアは第二次大戦の結果として四島はロシアに移ったと主張している。双方の隔たりは大きい。

日露関係を発展させることは東アジアの安定に必要であり両国の利益にもなる、と大統領も認識しているだろう。ならば、北方領土訪問がどういう意味を持つかはわかるはずだ。日露関係の重要性を踏まえた冷静な判断を求めたい。

読売新聞 2010年10月01日

中露共同声明 「領土」を意識した対日圧力

日本との間で北方領土問題を抱えるロシアが、尖閣諸島の領有権を主張する中国と歩調を合わせて、日本をけん制したのだろう。

北京で9月27日に行われた中露首脳会談で、「第2次世界大戦終結65周年に関する共同声明」が調印された。

声明は第2次大戦でソ連と中国がともに「侵略者」と戦った歴史を自賛した上で、「大戦の歴史を改ざんし、ナチスと軍国主義分子を美化するたくらみを許さない」と日本やドイツを指弾した。

先の大戦への歴史認識を戦後65年も経て、共同声明として公表することは極めて異例である。

声明ではまた、「中国は、中国東北地方の解放戦役で果たしたソ連軍の役割を、高く評価する」としている。

終戦直前にソ連が日ソ中立条約を破って参戦し、満州(現中国東北部)などに侵攻した不法行為を中国はなぜ高く評価するのか。

声明は、第2次大戦で中ソがともに戦った歴史が、現在の中露の「戦略的協力パートナーシップの基礎を固めた」とも指摘した。

1960~80年代にかけて深刻な中ソ対立が続いた事実には、一切触れていない。

ロシアは、先に日本が第2次大戦の降伏文書に調印した9月2日を事実上の「対日戦勝記念日」に定めた。大国の誇りの()り所である戦勝国意識の反映だろう。

同時に、日本の北方領土返還要求を強くけん制したものであることは間違いない。

メドべージェフ露大統領は今回の訪中後に、極東ロシア・カムチャツカ地方を訪問した。

大統領は記者団に対し、北方領土について「わが国の重要な地域だ。近い将来、必ず訪問する」と述べ、旧ソ連時代を通じ、国家元首による初めての北方領土訪問に強い意欲を示した。

これも、日本の北方領土返還の動きを封じるとともに、「強い指導者」をアピールする狙いがあると見られている。

前原外相は直ちに駐日ロシア大使を呼び、中露共同声明について「ロシアの真意を疑わざるを得ない」と抗議した。

さらに、大統領が北方領土を訪問すれば、「日露関係に重大な支障が生じる」と警告した。当然の対応である。

民主党政権下で日米同盟が揺らぐ一方で、日中関係が悪化していることをにらみ、ロシアが日本側に圧力をかけている。菅政権の外交立て直しが急務だ。

産経新聞 2010年10月01日

露大統領発言 大使召還など対抗措置を

クリール諸島(日本の北方領土と千島列島)訪問計画のあったロシアのメドベージェフ大統領が、「今回は取りやめるが、近いうちに必ず行く」と言明してモスクワに戻った。

ソ連とそれを継承したロシアは戦後65年以上にわたって、日本固有の領土である北方四島を不法占拠し続けている。しかし、歴代の指導者が実際に北方四島の土を踏んだことはない。

露大統領の北方領土訪問が決行されれば、日本の主権に対する完全な侵犯であり、政府は断固として訪問を許してはならない。

かつてだれも口にすらしたことのない「訪問」をこれほどはっきり言明した背景には、2012年春に迫ったロシアの大統領選挙があるとみられている。

プーチン首相との双頭体制下でどちらが大統領となるのか、現段階では不明だが、メドベージェフ氏には外敵に屈しない「強い指導者」であることを誇示する必要に迫られている。

今夏、9月2日を事実上の「対日戦勝記念日」に制定したことや、先日、中国の胡錦濤国家主席との会談で歴史認識や領土問題で中露両国が共闘する姿勢を表明したことも延長線上にある。

ロシアは、対露外交での菅直人政権の弱腰ぶりを敏感に感じ取り、対日強硬路線にかじを切った。歴史を歪曲(わいきょく)しても、日本がロシアと断交するほどの対立を望まないと足元を見ている。尖閣諸島問題で、恫喝(どうかつ)によって日本から譲歩を引き出した中国の狡猾(こうかつ)さに学んだこともあるだろう。

この難局に立ち向かうには、国際的な枠組みを活用するしかない。4日からベルギーでのアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席する菅首相は、ロシアや中国の領土問題などでの無法ぶりを訴えるべきだ。

11月に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、日本が議長国を務めるだけにその利点を十分にいかすチャンスとしたい。

今回、前原誠司外相は駐日露大使に対し、「日露関係に重大な支障が生ずることになる」と強く警告した。

万が一にも、大統領の北方領土訪問が行われるような事態になれば、日本としては駐露日本大使を召還するなど、毅然(きぜん)とした姿勢で対抗措置を取るべきである。

毎日新聞 2010年09月25日

日米首脳会談 同盟深化の大切さ示す

ニューヨークで行われた菅直人首相とオバマ米大統領の会談は、対中関係が主要議題の一つとなり、日米両国が中国の動向を注視し、緊密に連携していくことで一致した。

会談は、沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件とその余波が、日中両国の緊張を高めた時期と重なった。そうした状況下で両首脳が日米同盟の重要性を確認したことは、日米両国の強いきずなをアピールし、中国をけん制するものとなった。一方で日本は、日米同盟の深化に向け、足元に横たわる米軍普天間飛行場の移設問題に、より真剣に取り組むことを求められることになった。

首脳会談に先立つ外相会談で、クリントン米国務長官は前原誠司外相に尖閣諸島が日米安保条約の適用対象になると表明した。首脳会談に同席した福山哲郎官房副長官によると尖閣諸島沖事件について両首脳は「一定の意見交換をし」、日米安保が適用されるとの米側の認識は「所与のもの」だったという。さらにゲーツ国防長官は記者会見で「我々は同盟国の責任を果たす」と述べた。

日本政府も尖閣諸島への安保適用は「当然の前提」(仙谷由人官房長官)との立場である。米側の一連の原則的な対応を歓迎したい。

中国は近年、軍事力、特に海軍力の増強に力を入れている。今年4月の海軍艦艇の沖ノ鳥島海域への進出をはじめとする日本近海での活動や、南シナ海での行動を活発化させている。空母保有の動きもある。政府は、今年の防衛白書で中国の軍拡を主要テーマに取り上げ、中国に対する「懸念事項」として、これまでの「国防政策の不透明性」と並んで「軍事力の動向」を新たに加えた。

首脳会談では、「西太平洋の海洋問題が話し合われ」(米ホワイトハウス)たほか、オバマ大統領はアジア太平洋地域、世界の平和と安定のために日米関係を強化していく考えを表明し、菅首相は「安保、経済、文化・人材の交流強化」を強調した。こうした重層的な同盟深化は、軍の行動を含めた中国の一連の姿勢に対するけん制となるのは間違いない。

一方、会談では普天間問題について、菅首相が5月末の日米合意の履行と沖縄の負担軽減への努力を表明したのに対し、オバマ大統領は深い言及を避けた。突っ込んだ議論にならなかったのは、11月末の沖縄知事選を見据えての配慮なのだろう。

しかし、知事選結果がどうであろうと、普天間問題の解決が容易でないのは明らかだ。日米両政府には、普天間問題に正面から取り組むと同時に、この課題が日米同盟全体を揺るがすような事態にしないための思慮深い対応を求める。

読売新聞 2010年09月25日

日米首脳会談 重要性が増す同盟の再構築

中国が領土や海洋権益の拡張に向け強硬一辺倒の姿勢に走り、アジアの平和と安定が損なわれる事態を避けるには、日米同盟をより揺るぎないものに再構築することが肝要だ。

菅首相とオバマ米大統領が会談し、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件に関連して、日米両国が中国の動向を注視し、緊密に連携することで合意した。日米同盟が日米とアジアに加え世界の平和と安定の礎との考えでも一致した。

尖閣問題における中国の強硬姿勢の背景には、ぎくしゃくした日米関係の間隙(かんげき)を中国が突いている、との見方が少なくない。

中国の温家宝首相がオバマ大統領との会談で、ゲーツ米国防長官の訪中を招請したのも、日米を分断する狙いと見られている。

それだけに、日米両首脳が、対中国関係での日米連携と同盟の重要性を確認した意義は大きい。

首脳会談に先立つ日米外相会談では、クリントン米国務長官が、「尖閣諸島には、日米安保条約5条が適用される」と明言した。

過去には、米国による尖閣諸島の防衛義務について、あいまいな立場を取る米高官もいた。国務長官が義務を再確認したのは、日本への側面支援にほかならない。

無論、漁船衝突事件は日中2国間の外交問題だが、同様の事態を繰り返さないためにも、日米同盟の重要性は増している。

ところが、昨年の民主党政権発足以来の日米関係は迷走続きのうえ、今後も楽観できない。

菅首相が会談で、米軍普天間飛行場移設について「沖縄の難しい課題」との表現で地元の反対に言及したように、沖縄県名護市への移設を定めた5月の日米合意を進めるメドは立っていない。

11月の大統領来日に向けた同盟深化の作業や、年内に決着させる必要がある在日米軍駐留経費の日米交渉も進展していない。

菅首相が日米関係強化の3本柱として、安保、経済、文化・人的交流を挙げたのも、安保だけでは成果が望めないため、「合わせ技」を目指す苦肉の策と言える。

クリントン長官は9月上旬の演説で、アジアの同盟国を「韓国、日本、豪州」と語った。従来の言い回しと比べて、日本と韓国の順序が入れ替わった。米国が最近、韓国を重視しているのは事実で、これを軽視すべきではない。

日本が米国の信頼に足る同盟国であり続けるためには、従来以上に国際的な役割を果たし、普天間のような困難な問題でもきちんと結果を出すことが欠かせない。

産経新聞 2010年09月28日

中露首脳会談 看過できない歴史の歪曲

訪中したメドべージェフ・ロシア大統領と胡錦濤国家主席が会談し、第二次大戦終結と対日戦勝65周年に関する共同声明に署名した。これに先立ち、同大統領は「歴史をねじ曲げようとする勢力がいるが、われわれは大戦の真実を主張していかねばならない」とし、中露がともに努力すべきだとの考えを強調した。

ロシアはこれまでも「日本が歴史を捏造(ねつぞう)した」と主張しているが、旧ソ連の北方領土侵攻の歴史を勝手に書き換えることはできない。北方四島が日本固有の領土である事実を全面否定することは断じて許されない。

中国がロシアに同調すれば、日本を標的に歴史を歪曲(わいきょく)し、領土という共通利益を正当化するための共同戦線を両国が構築したことになる。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で日本が毅然(きぜん)たる対応を示せないことも中露に乗じるすきを与えていよう。菅直人首相は直ちに両国に抗議し、反論すべきだ。

中露は漁船衝突事件前から今回の会談をにらんで布石を打ってきた。胡主席は5月のロシアの対独戦勝記念日に訪露、「対独、対日の歴史の真実を守り抜くために連携を強める」と言明した。ロシアは日本が第二次大戦降伏文書に調印した9月2日を事実上の「対日戦勝記念日」に制定した。

今回の首脳会談でも、胡主席は「国家の核心的利益にかかわる問題で相互支持を堅持すべきだ」と語り、北方領土問題でロシアを支持する見返りに、尖閣諸島の中国の領有権の主張をロシアが受け入れるよう求めた形となった。

択捉、国後、色丹、歯舞群島の北方四島は1945年8月9日、当時のソ連が日ソ中立条約を破棄し、終戦後に不法占拠した日本固有の領土だ。「戦争による領土不拡大の原則」を掲げた連合国大西洋憲章(41年)にも違反する。

一方、尖閣諸島は日清戦争後に明治政府が沖縄県に編入、戦前にはかつお節工場もあった。終戦後は米国施政下に置かれたが、沖縄返還協定で日本に返還された。

こうした明白な事実を国際社会に認知させる努力を歴代政権は十分に行ってきたのか。在外公館などを通じた説明が不可欠だ。

中国は今後も軍事的威嚇や領海侵犯を強める可能性がある。ロシアも加わって、日本の主権は危機に瀕(ひん)している。菅政権は漫然と構えている時ではない。

産経新聞 2010年09月23日

菅・オバマ会談 日米で尖閣防衛確認せよ

菅直人首相が国連総会出席とオバマ米大統領との首脳会談のために訪米した。米軍普天間飛行場移設問題で日米同盟の空洞化が深まる中、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件では中国首相が船長の「即時無条件釈放」を要求するなど強硬姿勢を一段と強めてきた。

日本の領土と安全はかつてない危機にさらされている。アジア太平洋の秩序を守る公共財たる日米同盟の実効性に東南アジア諸国の懸念も高まっている。

決定的に重要なのは、日米首脳会談と外相会談だ。中国の無法な行動に対抗するため、首相と前原誠司外相は米軍再編の着実な履行を柱に同盟の基盤を立て直し、尖閣防衛を貫く強力な意思を世界に発信すべきである。

日米関係は昨年秋の民主党政権移行以来、普天間問題で迷走を重ね、菅改造内閣発足後も解決のめどは立っていない。この間、同盟空洞化の足元を見透かすように中国海軍は黄海、東シナ海、南シナ海で大胆な行動に出始め、海上自衛隊護衛艦に対する艦載ヘリの異常接近(4月)も起きた。

その延長が今回の漁船衝突事件であり、日本の安全と領土・領海を守る同盟の意思と能力が試されているといわざるを得ない。周辺諸国が事態を注視するのもそのためだ。首相や外相はまずこの現実を強く認識する必要がある。

尖閣諸島は日本固有の領土であり、日本政府は少なくとも「中国側が領海侵犯と違法操業を謝罪し、衝突の損害賠償に応じない限り、交渉には一切応じない」となぜ主張できないのか。日中が「戦略的互恵関係」を進めるには、相手の領土・領海を尊重することが大前提であることを中国は肝に銘じなければならない。

米国務省は先月、尖閣諸島が日本の施政の下にあり、「日米安保条約の防衛対象」と言明した。首脳会談、外相会談では同盟の根幹につながる共同防衛の誓約を再確認し、国際社会にアピールすべきだ。一方で米国は「日中の対話が必要」(スタインバーグ米国務副長官)との立場も示しており、日米共通の対処を緊密にすり合わせる必要もある。

首脳会談の翌日には米・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会談も開かれる。ASEANの懸念に応えるためにも、日米が「強い同盟」の回復に全力を注ぎ、信頼を取り戻してもらいたい。

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