日本との間で北方領土問題を抱えるロシアが、尖閣諸島の領有権を主張する中国と歩調を合わせて、日本をけん制したのだろう。
北京で9月27日に行われた中露首脳会談で、「第2次世界大戦終結65周年に関する共同声明」が調印された。
声明は第2次大戦でソ連と中国がともに「侵略者」と戦った歴史を自賛した上で、「大戦の歴史を改ざんし、ナチスと軍国主義分子を美化するたくらみを許さない」と日本やドイツを指弾した。
先の大戦への歴史認識を戦後65年も経て、共同声明として公表することは極めて異例である。
声明ではまた、「中国は、中国東北地方の解放戦役で果たしたソ連軍の役割を、高く評価する」としている。
終戦直前にソ連が日ソ中立条約を破って参戦し、満州(現中国東北部)などに侵攻した不法行為を中国はなぜ高く評価するのか。
声明は、第2次大戦で中ソがともに戦った歴史が、現在の中露の「戦略的協力パートナーシップの基礎を固めた」とも指摘した。
1960~80年代にかけて深刻な中ソ対立が続いた事実には、一切触れていない。
ロシアは、先に日本が第2次大戦の降伏文書に調印した9月2日を事実上の「対日戦勝記念日」に定めた。大国の誇りの拠り所である戦勝国意識の反映だろう。
同時に、日本の北方領土返還要求を強くけん制したものであることは間違いない。
メドべージェフ露大統領は今回の訪中後に、極東ロシア・カムチャツカ地方を訪問した。
大統領は記者団に対し、北方領土について「わが国の重要な地域だ。近い将来、必ず訪問する」と述べ、旧ソ連時代を通じ、国家元首による初めての北方領土訪問に強い意欲を示した。
これも、日本の北方領土返還の動きを封じるとともに、「強い指導者」をアピールする狙いがあると見られている。
前原外相は直ちに駐日ロシア大使を呼び、中露共同声明について「ロシアの真意を疑わざるを得ない」と抗議した。
さらに、大統領が北方領土を訪問すれば、「日露関係に重大な支障が生じる」と警告した。当然の対応である。
民主党政権下で日米同盟が揺らぐ一方で、日中関係が悪化していることをにらみ、ロシアが日本側に圧力をかけている。菅政権の外交立て直しが急務だ。
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